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王立魔法学園~甘いは誰のため~(ざまぁはないよ!)

乙女ゲーム:甘くない白い羽

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 ヒラリヒラリと宙を舞い、ゆっくりと落ちる真っ白い羽。
 それを四人で見つめ、地面と到達した瞬間に溜息も落ちて来た。
「もう結構ですわ。行きましょう」
 くるりとショコラに背を向け、シフォンティーヌが歩きだす。
 それをあとの二人も追って行った。

「何なのよ。言いたい事があれば最後まで言えば良いのに」
 ショコラは三人の後ろ姿を見ながらポツリと呟く。
 何を言われても、平気だった。
 だって自分は間違っていないから。
 地面に落ちた数枚の羽根を拾う。
「すごい、フワッフワで高そう」
 真っ白い羽を光に透かしながら、ショコラは歩きだした。



 ショコラは、水に落ちた瞬間、死ぬかもしれないと思った。
 水のあまりの冷たさに、一瞬で身体が硬直する。
 水に頭の天辺まで浸かる。
 少し濁った水の中から、三人の人影が見えた。
 ハッキリと誰だかは判らない。
 だが、シルエットで女だと判った。

 あぁ、嫉妬に狂ったあの三人に、自分は池に突き落とされたのだと知った。


「ショコラが池に落ちた!」
 マカディーアの耳に、信じられない言葉が聞こえてきた。
 聞こえているのに、理解出来ない。
 頭も身体も固まる。動けない。
「何をしている!行くぞ!」
 アーモンディに肩を叩かれ、やっと呪縛から解き放たれる。
 呼びに来たカシュールと三人で、学園内にある唯一の池へと向かった。

 全身、それこそ髪まで濡れているショコラが池のほとりで毛布に包まれていた。
 横に付いているビタールは、胸まで濡れている。
 おそらく、ビタールが池から助け出したのだろう。
「大丈夫か?ショコラ!」
 ガタガタと震えるショコラを、マカディーアは優しく抱きしめる。
「はい。大丈夫です。心配かけてごめんなさい」
 震える声でショコラが呟く。寒さと恐怖で声が出ないのだろう。
「なぜ、池などに……」
 マカディーアの呟きに、それまで下を向いていたショコラの顔が上がる。
「わたしが!わたしが自分で落ちたの!足を滑らせて!」
 あまりにも必死なショコラの様子に、マカディーアとビタールの眉間に深い皺が寄った。

 ショコラの無事な姿を確認したカシュールは、皆と同じ疑問を持ったのだろう。
 視線をショコラが落ちた池へと向ける。
 その淵に、本来あるはずのない物を見付けた。
 自然の鳥にはない、真っ白い羽。
 ここまで白い物は、人間の手によって漂白加工されたものだ。
 とてもよく、見覚えがある。
 マカディーアの婚約者であるシフォンティーヌが好んで小物に使っていた。
 拾う為に近付くと、地面には何かが擦れたような跡。
 ショコラが足を滑らせた跡だろう。
 羽を拾う前に、カシュールはアーモンディを呼んだ。


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