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07:茶番
しおりを挟むさて、お披露目も終わりましたし退室しましょう。
王太子の腕に触れるか触れないかのバランスで手を置き階段を降りようとすると、急に王太子が私の腕をほどき両手を広げます。
「愛しい人よ、ここに!」
は?何を言ってるのでしょうか、この人は。
「はい!!」
元気に返事をして黄色い物体が階段を駆け上がり、王太子の両腕の中へと飛び込みます。
王太子妃の私を横に立たせたまま、王太子と愛人が抱き合っています。
しかも、正妃との結婚の儀で、です。
「このまま、彼女との結婚の儀もとり行う!」
はぁ?
唖然としたのは私だけではないようです。
知らされていなかったのでしょう。祭壇上で教皇も呆然としてます。
とりあえず、私はくだらない茶番に参加する気はないので目線で従兄を呼びます。
従兄のエスコートで退室する私の後を、教皇も付いて来ました。
「あら、良いのですか?」
小声で問えば、
「儂が頼まれたのは正妃様との結婚の儀ですからな」
と、好好爺然と微笑まれました。
結婚の儀の後はパーティーなのですが、どうしましょう?
立食形式なので先に始めてしまいましょうか。
呆然と祭壇を眺めている陛下に近寄ります。
「陛下、私だけでパーティーを始めても宜しいでしょうか?
他国からの招待客をこの茶番の間放置するわけにもいきませんので」
そう。他国からの招待客や良識ある高位貴族などは、控え室へと引き上げ始めています。
愛人との結婚の儀に参列する気がないとの意思表示ですね。
それはそうでしょう。正式な招待状には私との結婚の儀の事しか書いていないのですから、参加する義理などないのです。
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