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21:こちら側
しおりを挟む商人の為の猶予期間3日の最終日、王宮から私と王太子の離縁が正式発表されました。
午後一に発表されたのですが、商人の反応は早かったです。
王都の各種有名店は閉店され、現地で採用された人には退職金を、他国から出向して来ている人には退去命令が出されたそうです。
あら、私のお気に入りのスイーツ店の馬車ですわ。
「撤退してしまいますのね」
思わず声に出してしまいました。
「大丈夫ですよ、正妃さ…お嬢様。ここの領地のお店は変わらずあるそうですわ」
王宮務めから正式に我が辺境伯家での雇用になった侍女が答えました。
私は手に持っていた鏡から目を離し、窓の外を眺めます。
遠目に見てもとても険しい岩山が見えます。
「こちら側から見るのは久しぶりね」
私の視線に気付いた侍女は、嬉しそうに微笑みます。
「私は初めて見ました。山というより、壁みたいですね」
そう。こちら側の岩山は、採掘跡が崩れないように溶かして固めて、壁のようになっているのです。
上の方は岩山のままなので険しさは変わらないのですがね。
「隣の領地に行くのに、川を越えないのですか!?」
久しぶりに帝都へ行くのに馬車を用意して貰っていると、侍女が驚きの声を上げます。
彼女も王宮から我が家へやって来た侍女です。
「あの様に岩山に囲まれ、国内が太い川に分断されている国の方が珍しいですよ」
先輩侍女がウフフと微笑みながら説明します。言外に『こちらに来て良かったでしょう?』と言っているようでした。
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