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7:フーリーとアメリア
しおりを挟む入学式まで後3ヶ月となり、公爵家に第一王子のフーリーが訪ねて来た。
婚約して9ヶ月、初めての事だった。
応接室に通されたフーリーは、不機嫌なのを隠そうともせず座っていた。
「お久しぶりでございます。フーリー殿下」
完璧なカーテシーをするアメリアへ、フーリーはフンッと鼻を鳴らしただけだった。
普通は王族への挨拶は、許可をされなければ顔を上げられない。
しかし婚約者であり王妃になる事が決まっているアメリアは、自分の判断で顔をあげる事が出来た。
「失礼いたします」
顔を上げたアメリアは、フーリーの前のソファへと腰をおろす。
今まで家族以外は全て自分が主導権を握っていたフーリーは、アメリアの行動が許せなかった。
「なぜお前は俺に断りもなく、勝手に座る!」
フーリーの怒りの意味が解らないアメリアは、優しく微笑みながら口を開く。
「立ったままでは殿下を見下ろす事になり、話し難いからですわ」
「お前は俺と話したいのか?」
少し機嫌の直ったフーリーは、アメリアへと問う。
「はい。婚約者ですから」
素直に頷いたアメリアに、フーリーの機嫌が更に良くなった。
「そうか、お前は俺と話したいんだな」
フーリーは気付いていなかった。
アメリアは「婚約者だから」話したいと言ったのであって、「フーリーだから」話したいとは言っていなかった事に。
この勘違いを発端に、フーリーのアメリアへの横柄な態度は助長していくのである。
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