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復讐実行の章 ※センシティブな内容となります
46:心強い味方
しおりを挟むマリーズと学生時代の友人達による、定期的なお茶会。
結婚生活も2年目に突入し、何回か現状報告を兼ねたお茶会も開かれ、そろそろ終わりが見えて来た。
後1回か2回で、3年になりそうである。
「今日もどこに行くのかとしつこく聞かれました」
マリーズが友人達に報告する。
嘘では無い。
ジスランは自分が一緒に行けない社交について、しつこいくらいにマリーズに質問するのだ。
それは愛故の、執着からであった。
しかしこの場では違う意味に取られてしまう。
「公爵家の実情を話されたら困りますものね」
「子供の事も、まだ世間には内緒にしてますのよ」
「愛妾の存在も、上手く隠してますわ」
マリーズの友人達は、夫に探りを入れ、ジスランの社交界での様子を調べてくれていた。
「完璧な愛妻家を装ってますわね」
「思わず私も信じてしまいそうになりましたわ」
彼女達は憤っているが、ジスランに裏は無いだろう。
しかし、ここでは「マリーズとは白い結婚である」事が前提で話されるので、ジスランの行動全てが嘘くさく、胡散くさく見えてしまうのだ。
「皆様、いつもありがとうございます」
マリーズが伏せ目がちにお礼を言う。
その気持ちに嘘は無い。
白い結婚での離縁をした後に、マリーズと親しい友人達が夫にジスランの事を聞いていた、という事実が欲しいかった。
ジスランと別れた後にも、マリーズの生活は続く。
ジスランは腐っても公爵家である。
絶対にマリーズの方が不利になるだろう。
それを少しでも緩和する為だった。
「離縁後はどうなさるの?」
ミレイユが質問する。
それはそうだろう。
今、ミレイユが居るのはクストー伯爵家、マリーズの実家である。
戻って来るなという意味での心配ではなく、戻って来たいのならば協力すると言いたいのだろう。
夫であるマリーズの兄にも黙っていてくれているミレイユ。
今では、なぜ前回仲良くしていなかったのかと疑問に思うほど信頼し、親友と呼んでも差支えの無い間柄だった。
「1年程、静かに暮らしたいと思っております」
マリーズが曖昧な笑顔で答える。
社交界から離れて、隠れて暮らす……という意味だった。
「協力してくださる方がいらっしゃるのね」
ミレイユが安心した顔をマリーズへと向ける。
それに対してマリーズは、やはり曖昧な笑顔を返すだけだった。
「今日も愚痴大会?」
夜。魔法使いマリーズと交代したマリーズは、魔女と弟子が住まう敷地内の家に来ていた。
コレットの妊娠を外部に隠す為に、医者と弟子を敷地内にある離れに住まわせたのはジスランだ。
勿論、そうなるように誘導したのはマリーズである。
ジスランは自分で考え、自分が決定し、自分の意思で行動したと思っているようだが……。
「最近は皆が社交界でのジスランの様子を教えてくれるわ」
マリーズが寝る前のハーブティーを飲みながら、魔女と会話をする。
今日も肉体労働はマリーズに任せて、マリーズは離れのベッドで熟睡予定である。
「ねぇ、離縁後はうちの弟子はどうするの?」
ハーブティーを飲み終わり、ベッドに入ったマリーズに魔女が問う。
「……その時に考えるわ」
マリーズは眠気に負けて、目を閉じた。
「後悔しない選択をね」
口端を持ち上げた魔女の言葉は、マリーズには届かなかった。
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