君の横を歩きたい

渡良瀬 カンナ

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お祝い

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 レギュラー選考の翌日、昼まで寝ていたい気持ちを押し殺してベッドからなんとか起き上がる。今日は千里が「お祝い」をしてくれるという。準備を終え家を出ると隣から同時に千里も出て来た。久しぶりに私服姿を見た。いつもは制服かジャージ姿が基本だから。
「おっはよー、ちゃんと起きたね」
「まぁ約束だし。それで予定は?」
「まずは街へ行こう」
そう言って駅へと向かった。街へ着くとまず見たい映画があると千里に言われ映画館へ入った。休日ということもあり結構混んでいる。見たいという作品は最近話題のやつだ。2人分のチケットを購入し、次は映画のお供にを買いに列に並ぶ。僕はコーラLとポップコーンのキャラメルMを頼んだ、会計をしようとすると千里が一緒の方が楽だからと自分の分のコーラLとポップコーン塩とキャラメルのハーフLさらにはチュロスまで頼んだ、後で返すといいとりあえず僕が全部の代金を払わせられた。頼んだ物が出てくると千里は早速ポップコーンを一掴み口の中に放り込んだ。
「後でちゃんと返せよ」
と半信半疑で言うと、
「わかったって、小さいことを気にする男子はモテないよ」
「1500円弱は小さくはないと思うけど」 
話しているうちに会場の時間になった。さすが話題作と言ったところで席は満席であった。映画の予告が始まった中々気になる作品か何個かあり今度拓人と来てもいいかもしれないと、思っているとお馴染みのカメラ男が登場した。小学生の頃は何故かカメラ男が怖くてここの時だけ目をつぶっていたっけとふと横を見ると千里はもうチュロスを平らげポップコーンも半分以上食べていた。大丈夫かよと半分呆れていると映画が始まるブザーが鳴った。
 とてもいい話だ彼女の寿命がわずかであることをある日知ってしまった彼氏が彼女に気づかれないように残りの彼女の人生を素晴らしいものにしようと奮闘する物語だ。
 最後のシーンは感動し周りからは鼻をすする音が聞こえてきた。千里も静かに泣いていた。僕はというと泣いてはなかった、こういう話を見て感動はしているが涙を流すまでにはいかない。そこまでいきそうになるとき急に状況を客観視してる自分が出てきてしまいいつも自分は冷たい人間なのではないかと思ってしまう。
 エンディングが終わりシアターを出ると
「感動したね泣いちゃったよ、翔は泣かなかったの?」
「うん、僕って冷たい奴だからな」
と言うと千里は声を出して笑って
「なにそれ、翔が冷たい奴なんて冗談にしても面白くないよ」
「でもみんなが泣いてる中僕だけ普通に見てたからなぁ」
「翔は優しいよ、周りの人によく気配りしてるし面倒見もいい」
 千里にそう言われるとそうなのかもしれないという気になれた。
「お腹空いたね、なに食べる?」
「焼肉、千里のおごりな」
「なんで?」
「さっきポップコーンとか僕払ったし」
「ちっ、覚えていたか」
「やっぱり返す気ねぇじゃん」
「まあまあ気にせず行きましょ」
とやっぱり彼女の天真爛漫な姿に僕は振り回されそしてそんな自分が嫌いではなかった。
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