君の横を歩きたい

渡良瀬 カンナ

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定期テストpart2

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 うーんどうしよう、僕は真剣に悩みながら教室に入る。昨日から始まった千里の赤点防止勉強会は難航を極めていた。彼女は高校に入学してからまともに勉強したことがないという。昨日はどのくらいのレベルが見るため今回のテストの初歩中の初歩の問題をやらせてみたがほぼ壊滅、これを1週間でどうにかしろとは全国制覇よりも難しいかもしれない。
「どうしたんだよ、幼馴染カップル?お前は難問でも解いてるような顔してるし千里ちゃんはこの世の終わりみたいな顔してるぜ」
相変わらず能天気に拓人がおちょくってくる。
「確かにこの世の終わりかもな」
そう答えると「えっ?」と少し目を見開いて拓人は聞き返した。
「本当になんしたんだよ?」
僕は千里から昨日された話をそのまま拓人にすると「確かにそりゃヤバイな」と他人事だ。そういえば拓人も勉強しないのに赤点は毎回切り抜けている。何かヒントがあるかもと聞いてみると
「一夜漬けだけど前日は半分死にそうになりながら頭に詰め込んでる、今回もキツイなぁ」
笑いながら拓人は答える。つまりコイツは要領が良いのだ。千里はまずそこにすら至っていない。僕は昨日彼女といくつか約束事を作った。まず授業は絶対に寝ないこと。これはたぶん彼女にとって1番キツイことだろう。なぜなら千里は授業で起きていることの方が珍しい。そして授業でわからないところは全てメモをすること。その他色々とりあえずいつでも勉強に触れ続けさせた。
 テスト1週間前は部活もなく僕の部屋に直行して勉強漬けだ。とにかく数学が鬼門だとにかく基本の部分を徹底的に教える。千里はというと30分ごとに「疲れた休憩しよう」と言うが全国大会の話題を出すとすぐに机にかじりつく。
 日に日に僕と千里の目の下はクマでひどくなる。テスト前日の夜だいたい仕上がってきたが問題がある。日本史が間に合わない。範囲が広すぎる僕の教え方では絶対に間に合わない。
「日本史は勘でどうにかなるよ」
と苦笑いで千里は言う
「ここまで来てそれはできないだろ」
何かいい方法がないかもう疲れ切ってる頭をフル回転させる
「あっ!」
「何?」
僕は「ちょっと待ってて」と伝えスマホで電話をかけた。
「もしもし?どした?」
呑気な声が聞こえた。
「お前にすぐに渡したいものがあるから来てくれない?」
「なんだよそれ」
笑い声混じりで電話の相手は言う。
「お前の好きなアイドルの生写真サイン入り」
「嘘つくなよ」
「マジだよ、妹がハガキで当てたんだ」
「マジかよくれんの」
「おう、だから早く来て」
「すぐ行くわ」
電話の相手は了承してくれた。15分くらいしてそいつは来た。「おっす~」と玄関に立っている。
「拓人早いな上がって」
「すぐ帰るからいいよわざわざ」
「いいから」
僕はそう言って拓人を部屋にあげた。拓人は部屋に入ると千里に「勉強はかどってる~?」と聞いた。
「拓人君ごめんね、テスト勉強で忙しいのにわざわざ私に日本史教えてくれるなんて」
「えっ?」
刹那、僕は彼を椅子に縛り付けた。
「おい、翔どういうことだよ生写真は?」
「千里に日本史を教えてくれたらやるよ一夜漬けのプロだろ」
「親友騙したなお前」
「親友なら手伝ってくれよ」
と僕は生写真を見せると拓人は
「しょうがねぇな」
とすぐ引き受けてくれた。
「じゃあ俺は仮眠とるから」
「はっ⁉︎ずるいぞお前」
「もう1週間ほぼ寝てないんだよ、頼む追加のお礼もするから」 
渋々了承した拓人は千里に一夜漬けのコツから教え始めた。僕はすぐに眠気にさらわれた。
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