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第二章  【西の王国】

2-123 フェルノールとの記憶2

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「頼む、私と一緒にきてくれないか?フェルノール……」



「はぁ!?」





フェルノールは何故、今日初めて出会ったばかりの人間から、こんなに頼み込まれているのかがわからない。


今ま自分はずっと一人で生きてきたことに対して不自由は感じていなかったし、退屈もしていなかった。
今日もいつも通りに過ごして、自由の身を満喫していたところだった。



だがカステオと出会い、ここでフェルノールは偶然にも忘れていたことを思い出した。





――人間のことをもっと知りたい





それが、母様たちから離れて暮らした理由だった。



カステオを出会うまでに、様々な人間の生活を観察してきた。
時には、集落の中に住む人間とも接触した。そんな中、人間の生活や文化など知ることができる機会が多々あった。


今回のカステオからのお願いは、人間の社会の中を体験できる絶好の機会。
いつも遠くで観察したり、接触してもほんの一言くらいの挨拶を交わす程度のものだった。
それは異国へ旅行に行き、覚えた現地語を試しに使ってみる程度のものと変わらなかった。




しかし、この男がどういう男なのかもわからず信用できるかもわからない。




様々な思考が、高速で意識の中を駆け巡る。


そんな中、カステオは次の条件を切り出した。、





「わかった。まずは、城に来てみないか?そこで、協力してくれるかどうか決めるといい」



その必死さにフェルノールは折れて、一度行ってみることにした。





――城


聞いたことはあったが、村人たちから聞くだけでは実際にどのようなものかは想像がつかなかった。
いま、その城を目の前にしている。


「遠慮しなくていい、中に入って」




カステオは、自分の部屋にフェルノールを招いた。

部屋で待機している従者は、表情を崩しはしないがその心の中はフェルノールにはお見通しだった。


カステオは従者に、入浴の準備と従者用の着替えを用意させた。




「暖かい水浴び……案外悪くなかったわ」


フェルノールが入浴を終え、着替えを済ませてカステオの前に立つ。
カステオは、生まれ変わったようなフェルールの姿に見とれて言葉を失っている。


そして、その心の中を感じたフェルノールが叫んだ。




「ちょっと……あなた何考えてるの!?」




その言葉にカステオは、正気を取り戻しみだらなことを考えていた自分を恥じた。




「あ……すまん。その、フェルのlす@ちお☆〇cSが……」



動揺するカステオを、フェルノールが冷たい視線で見守る。





「……す、すまん」




「まぁ、いいわ。ずっと昔に下衆なことを考えていた人間がいたんだけど……今は、私の中で”消化”されてるわ。あなたも変な気を起こさない様に、気を付けることね……」


「あ……あぁ、気を付けるよ」



だが、フェルノールは気付いていた。
カステオから感じたものはフェルノールをを見下したような気持ちの悪い感情ではなく、もっと温かく心地の良いものだった。




「それで、私にどうして欲しいわけなの?」




高ぶりそうな気持を抑え、フェルノールはここに連れてこられた意味を確認する。



「そ、そうだな。その話しから始めよう……」





カステオも焦る気持ちを抑え、真面目な話を切り出すために咳ばらいを一つした。




「私の手伝いをして欲しいのだ。私はこの国の王子で、これから数年のうちに次の王を決める”王選”が開始される……」


カステオは現在の状況を説明した。
現在五つ歳が離れた妹がおり、もう二年もすると十五歳の誕生日を迎える。それが合図となり、王選が開始されることを告げる。
そして王選のシステムを説明し、王宮内に自分の味方を増やしていきたいことを告げた。




「それで、どうして私のことが必要なのかしら?」


「人の心が読める……いや、感じられるフェルノールならば誰が私の味方になってくれるか分かるのではないか?」


「そうやって、自分を裏切らない人を探していきたい訳なのね?」


「その通りだ……頼む、ぜひその力を私に貸して欲しい!フェルノールが望むことがあればできる限りのことは叶えると約束しよう」




フェルノールは依頼について検証した。
自分自身にどんなメリットがあるのか、そしてどんなデメリットが生じるのか。

それよりも、フェルノールは気になることがひとつある。
先程から感じる、カステオからの”好意”だった。

この依頼も本当のことで、フェルノールの能力を使って助けて欲しいのも本音だろう。



(このニンゲンは、どうして……私にそんな感情を?)


今まで母様のところを飛び出して、村や町を離れて観察した。
人間同士でこのような感情を抱いていることを確認したことはあったが、初めて自分に向けられた。



そこからフェルノールは、ある思いにとらわれ始めた。




”この感情の正体を確かめたい……”





そう思ったフェルノールは、カステオからの依頼に返答した。




「その依頼、受けましょう。ただし、私の質問には嘘はつかないこと。そんなことをしたら、すぐバレることはわかっているとは思うけど?」


「あ、あぁ!嘘は決してつかない!」


「それと……」


フェルノールからの肯定的な回答に興奮気味なカステオの会話を遮る。
そして、確認の意味も含め次の条件を告げた。



「決して、私の正体を誰にも話さないこと。もちろん、親、妹や信頼のおける部下にもね」



カステオはその意見にも承諾し、フェルノールを協力者として歓迎した。









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