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第三章 【王国史】
3-162 謝罪
しおりを挟む――コンコン
二人は、触れた手を離してドアの方を見る。
「……どうぞ」
ブンデルは、ドアに向かって入室の許可をする。
――カチャ
ドアはゆっくりと開かれ、二人のエルフが入ってくる。
ゾンデルとナルメルだった。
ゾンデルはナルメルに介助されながら、部屋の中に入ってくる。
二人が部屋の中に入ると、ナルメルがドアを閉めた。
そして、少しの間この部屋の中に無言の時間が通り過ぎていく。
サナがゾンデルが立っている状況が辛そうであることを感じ、椅子を差し出し二人に座ることを勧めた。
そこで初めて、この空間に会話が生まれた。
そのドワーフの娘の気遣いに礼を言って、ゾンデルとナルメルは腰を掛けた。
ゾンデルは、まずブンデルと一緒に行動を共にしているサナに話しかけた。
「……ありがとう、ドワーフの娘さんよ。よく気が利くお方だあなたは、どちらからいらしたのですかな?」
「私は、この山にあるドワーフの町からやってまいりました。サナと申します……」
「そうでしたか……この山にお住まいになっていたとは。それで、どうして今回は、こちらの中に……」
「ちょっと、爺さん。サナのことを聞きにくるためにわざわざこんなところに来たのか?もし、ドワーフだからと言って、不審に思っているならそんな心配は無用だ。いますぐこの部屋を出ていってもらおうか」
その言葉にナルメルが反応しかけたが、ゾンデルは手を挙げてナルメルを制した。
「サナさんのことを聞いてしまって気を悪くしたのなら申し訳ない。この通り……お詫びしよう」
そういうとゾンデルは、椅子の上で深々と頭を下げてブンデルとサナに詫びた。
サナ自身はその質問に対して特に何も感じてはいなかったため、特段に謝られることはないと思っていた。
しかし、ブンデルのサナに対する気持ちを思うと何とも言えない気持ちになり、この場はお詫びに対しては必要ないことを告げ、ゾンデルの頭をあげてもらった。
「それで、今回どのようなご用件で?」
サナは、今度はナルメルに向かって話しかけた。
「はい。この子と……」
この言葉にブンデルは、顔をそむける。
家族という存在に対して悪いイメージを持っているのだろう、ナルメルが自分のことを家族を臭わせる言葉で表していることに嫌悪感を抱いた。
そのことに気付いたナルメルは、言葉を修正してもう一度話始める。
「このブンデルさんとお話がしたかったのです。”もしかしたら”この方は私たちの家族である可能性がありますので、そのことをお話ししたいと思いこちらにお伺いさせて頂きました」
ナルメルは、ブンデルに気を使いつつも言いたいことははっきりと告げた。
確かにブンデルは、普通の子供と違い辛い思いをしたのだ。
だが、様々な事情があったのも確かだった。
決して、ナイールとナルメルの子を見捨てていた訳ではない。
ナルメルはその話しをする前に、一言ブンデルとサナに断って話しを始めようとした。
「え……っと。それでは、私は席を外した方が良さそうですね」
そう言ってサナは、席を立ち上がろうとしたがゾンデルに止められた。
「いや、サナさん。是非、あなたにも聞いて頂きたい。あなたはブンデルさんと仲が良さそうだ……我々はこの方が、家族のナンブルとナイールの子であると信じている。もしよかったら、この方の苦しみを一緒に救ってあげてはくださらないか?」
「勿論、私たちの勝手なお願いとはわかっています……ですが、どうかよろしくお願いします」
二人とも、サナに向かって頭を下げた。
困惑するサナは、助けを求めてブンデルに目をやった。
「……あぁ、私は別に構わないさ。その話しは”人違い”の可能性だってあるんだ。そうだとしたら、その話しはこちらにとってはただの物語だからな」
「そうですか?……それでは、ブンデルさんがそういうのなら」
そう言ってサナは、もう一度椅子に腰を下ろした。
ゾンデルは理解を示してくれたサナにお礼を告げ、もう一度ナイールが失踪したあの日のことから話し始めた。
残された者たちにとっては、ナイールたちがいなくなった理由は全く分からなかった。
そのため、理由はそれぞれが思いの中で自分勝手に組み立てられていく。
その導き出されたものが、合っているか間違っているかは全く関係なく……
そのことは、サイロンだけでなくゾンデルにも当てはまる。
ゾンデルはサイロンに気付かれない様、隠れて何とか情報を集めようとした。
だが、ナイロンという子の名前は聞いたことがないという。
ただ、一度だけ教育所に誰が親が判らない子がいると聞いたことがあった。
しかし、その子の名前、容姿や性別はゾンデルが調べている範囲ではそのことを知る得る者に辿り着けなかった。
それ以上は関係者と接触しなければならず、サイロンにゾンデルが探っていることがバレてしまう可能性があったから。
それ程、サイロンはその子の存在を隠したい理由があったのだろう。
そこからまた長い年月が過ぎたある日、新しい情報を掴むことができた。
だが、その情報はゾンデルにとって最悪な情報だった。
『教育所にいた子供が脱走し、村を出ていった』
――と。
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