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第五章 【魔神】
5-94 ヴァスティーユ6
しおりを挟むサヤと話をしながら、ヴァスティーユは次第に落ち着いてく。
いまだに何故自分がという思いがあるが、説明された悪意の話を含めて自分には理解できなかった。
だが、サヤはそれを納得していた。
「結局さ……あんたはあの男の娘なんだよ」
人は構造によって親の遺伝子と呼ばれる情報を引き継いでいると、ヴァスティーユに説明する。
その事を聞き、ヴァスティーユはショックを受る。
自分はあの父親と違うと思い込んでいたが、その血が通っていることとサヤが感じた悪意がその血の影響を受けていたことによるものだったということに。
感情が崩壊したはずのヴァスティーユが、こんなにダメージを受けているのはよほど父親の事を嫌っていたのだとサヤは感じた。
この世界に来る前に、同じような感情を抱いていたことがあったためその気持ちは少しは理解できた。
サヤは、哀れに思ったヴァスティーユに慰めの言葉をかける。
「ほら、元気出しなよ……その……さ。あの……そう!アンタにもいいところはあるんだから」
「いい……ところ?」
「そうだよ……えっと……あ、あんたは、あたしの実験でこんなに自我を保ったまま復活できたんだ。これは素材が良かったと、威張れることだよ!他のやつなんてさ、自我がなくて動物以下のようなやつしかできなかったんだ。こうやって始めて会話もできたし、あんたはとにかく……凄いんだよ!」
今まで生きてきた中でここまで褒められたり、自分の存在を認められるような言葉は聞いたことがなかった。
あの男は集落の者たちが全て自分の所有物のような扱いをしていたため、このように一個人としての存在として認められるようなことはなかった。
それがきっかけとなり、壊れて砕けた感情が入っていた場所に温かい光をヴァスティーユは感じた。
「ありがとうございます……”お母様”。私は、お母様に与えていただいたこの生命を……お母様のために」
サヤはヴァスティーユの言葉に対し、一体何が起きたのかわからなかった。
無気力だったヴァスティーユの目と言葉に力が込められ、サヤに忠誠を誓ってくれ程の変化に戸惑った。
今までの人生の中でも、ここまで自分を慕ってくれた者がいなかったためどう答えていいかわからなかった。
「ん……あぁ。しっかり頼むよ」
その言葉を聞き、期待されていると感じたヴァスティーユは笑顔でサヤの言葉に応えた。
そこからヴァスティーユは、サヤの指導鵜を受けて魔力の使い方を覚えていった。
そして、この力をサヤに与えた魔神とも顔を合わせた。
また長い時間が経過をしていく。
力を蓄えたサヤは、また一つの集落を襲う。
そこにいた小さな子供に、ヴェスティーユの意思を植え付けた。
今回は無事に与えられた身体に馴染み、ヴェスティーユが再びこの世に存在した。
だが、ヴェスティーユの性格は変わってしまっていた。
いや、サヤが言うには元々ヴェスティーユにも凶暴な面があり、それが長い間放置していた中でその部分だけが突出してしまったようだった。
過去の記憶を聞いても、話からこの存在がヴェスティーユであることは間違いがなかった。
こうして、ヴァスティーユとヴェスティーユはサヤの元で仕えていくことになっていった。
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