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第五章 【魔神】
5-95 発見
しおりを挟む「お……や?……これは……もしかして…………っ!?」
石を削ったテーブルの上で横にした件に手をかざし、何かを探っているとサヤの声が一段高く変わった。
何かを指先で読み取っているのか、剣を指先で撫でながら目をつぶっている。
「やっと……見つけた」
その言葉と同時に、サヤの口元は上に上がって喜びを表現していた。
「ん?……でも、これは?」
さらに何かに気付きかけた時、サヤは背後から声をかけられた。
「お母様……どうされたのですか?」
ヴァスティーユは声をかけてはみたが、その返事が返ってこないのは当たり前だった。
だから、今回もまたいつものように自分の声には反応しないものと思っていた。
でも、いつもその思いの片隅にこの言葉に反応してくれることをいつも期待していた。
その願いが、今日は叶った。
「ヴァスティーユかい?……ちょっと、これをごらんよ」
ヴァスティーユはそう声をかけられ、驚きと嬉しさが入り混じった感情を抑えながら冷静にその言葉に対応する。
「それは……フェルノールに探させていた、この前手に入れた西の国にあった剣ですね」
「そう、あの国の国宝と言われていた剣さ」
「その剣がどうかなさったのですか?」
「あぁ。やっとこの剣の使い方が分かったんだよ……くくく、これであいつを」
「お母様と同じ世界からきた、あのハルナというものを……」
ヴァスティーユはこの剣を手に入れたということは、母親はいつも探している同じ世界から来た女性をいつものように始末するものだと思っていた。
でなければ、あの母親があそこまでその女性に執着する理由がないと考えた。
しかし、返ってきた答えはヴァスティーユの予想に反したものだった。
「違うよヴァスティーユ……そうじゃない」
「……?」
サヤの言葉に対し、素直に疑問の表情を浮かべてその言葉の意味を考えた。
いくつかの候補を上げて、それぞれの確立を導き出すほんの数秒の開ではあったが、サヤはヴァスティーユの言葉を待たずに先に話しを進めていく。
「これはね、神々をも消すことができる剣なんだ。そして、この世界を壊すことのできるカギとなるんだよ」
「神々を……消すんですか?……であれば、あのモイスとかいう竜も」
「そう。だけどね……まだちょっと調べたいことがあるから、行動はもう少し先だけどね」
機嫌よく話した後、サヤは再び剣に手をかざして作業に戻っていく。
この状態のサヤは、邪魔をされることを嫌う。
ヴァスティーユは静かにその場を離れ、サヤの邪魔にならないようにする。
すると、サヤが作った空間の中に存在が一つ増えたことを感じる。
ヴァスティーユは、たった今戻ってきたその存在に対して声をかけた。
「お帰り、ヴェスティーユ……」
「ヴァスティーユ!ただいま!」
ヴァスティーユは、母親がいま集中しているため近寄らないようにとヴァスティーユに告げる。
そのことを理解したヴェスティーユは、急におとなしくなり母親の作業を邪魔しないようにした。
自分が聞いておくとヴァスティーユは告げて、妹と一緒にサヤの場所から離れていった。
ヴェスティーユは、監視していたハルナたちのことをヴァスティーユに告げる。
その口の悪さは”生きていた”時には考えられなかったが、自分のことを覚えていてくれたり姉を慕ってくれていることは変わらなかった。
ヴァスティーユは随分と長く母親と一緒にいるが、いまだに何をやろうとしているのかわからない。
それでも、いま母と妹の二人がいることは悪くないと感じている。
この関係が続けられるようにヴァスティーユはこれからもサヤの傍で仕えることを改めて誓った。
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