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第六章 【二つの世界】

6-310 ハルナがいなくなった日3

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「んー。まぁ、アタシの気まぐれ……って言ってもいいんだけど、アンタはそれじゃ納得しないんだろ?」


サヤの軽い言葉にも、ステイビルは頷くこともせずにただ黙ってサヤのことを見つめている。

その視線を受け止めたサヤは、後頭部を掻きながらステイビルの質問に答えていく。



「……まぁ、実験っちゃ実験なんだけどさ。冬美さんは、ハルナのこと気に入ってたからね」



「……なるほど。それであの二人にフユミという人物を探させていたのですか?」



ステイビルは、自分の推測が間違っていないということを確信した。
そこからサヤは、ゆっくりと話し始める。サヤは遅れてくるハルナのために、仲の良かったフユミという存在を復活させようと試みていたことを。


「……まぁ結局失敗したけど、会えたのは良かったんじゃない?ハルナもさ」


「あ、アンタは……人の命を何だと思ってんの!?」


「――エレーナ!」


サヤに食って掛かろうとしたエレーナを、アルベルトが後ろから肩を掴んで止める。
しかし、よほど不快だったのかエレーナの勢いは収まらず、アルベルトを引きずってまで前に出るくらいの力強さがあった。



「人の命?……それじゃあエレーナ。アンタに聞きたいんだけどさ……人の命ってのはなんだと思ってんだ?」




サヤからの言葉の反撃に、エレーナは迷うことなく負かせる勢いでさらに反撃をする。


「人……いえ。全ての生き物の命は尊いものよ!それは決して弄ぶものではないの!!あなたのやっていることは非常識で命に対する冒涜よ!!」


食って掛かるエレーナの勢いは、サヤにはまるで届いていない様子だった。
エレーナにとってはそのサヤの様子が、さらに感情を逆撫でして感情を苛立たせていく。


「へー。じゃあ、アンタは”死んだ人が生き返ればいい”って思ったことはないんだ」


「……」


サヤのその言葉に、エレーナは言葉を詰まらせ、そんなに遠い記憶ではない状況をすぐに思い出す。
いくぶんかあの当時よりは楽にはなり、問題は解消されているが、今でもそのことは心に深い傷を負ったままだった。
エレーナのスプレイズ家は、ずっとカルローナから責められていた時、カメリアが生きていればと思ったことは少なくはない。しかし、それを口にしてはサヤに敗北することになるため、頭の片隅へと追いやり言葉を続けた。


「そんなことできる筈もないし、そう思ったからってどうにでもなることじゃないじゃない!それに、そのことが命を弄ぶことと何の関係があるっていうのよ!!」



「……あんた達の信じる”神”はそれができるんだよ」



「え?」


「ま、まさか……ラファエル様が……」


「違う違う。あいつらはそんな権限はないよ。アンタたちが国宝にしてた盾があったじゃない。アイツはそういうことができるんだよ」



「あいつにしてみれば、命……いや、生き物なんてただの造り物なんだよ。それがどんな信念や感情を持っていたとしても、ただの属性やデータでしかないんだからね」


「……それって、どういうことですか?」



「どうもこうも今言った通りのことさ。アイツは生き物に対して、アンタみたいな感情をもっていないんだよ。この世界の”命”っていうのは、そういう扱いなんだよ」






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