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第六章 【二つの世界】

6-314 ハルナがいなくなった日7

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この世界に、”魔物”という新しい畏敬の存在が産みだされた。
そしてそれは、当時の世界の生物たちにとって、最大級の生命を脅かす敵がここに誕生した。


その話を聞いて衝撃を受けたエレーナは、サヤの姿をしているため人間よりも上位な存在に対しても遠慮のない言葉遣いで、いま話したことの内容に反応する。



「ちょっ!?ちょっと待って!!……この世界に存在する魔物って、盾の創造者が生み出したってこと!?」


「……そうだ。私には、そのような存在を生み出す能力は備わっていない」




その答えに続いて、次の反応を見せたのはステイビルだった。



「では、魔物は瘴気を浴びた生物や魔素からの自然発生とかではない……と?」


「うむ……私の知る限りでは、何らかの環境変化の要因や影響によって、生き物が新たに存在したということは聞いたことがない」


「それでは……全ての魔物は意図的……に?」


「そういうことになる。例えいま、その存在がいなかったとしても、すでに盾の創造者がその存在を定義しており、発生条件さえ整えば”そういう”魔物が生み出されたとしてもおかしくはない」


「ということは、盾の創造者が既に用意していた可能性があった?」


「私が知る限りのこの世界の理から考えれば、それしかないだろうな」


「し、しかし!?魔物は魔素や瘴気を扱っていたし……さっきの話だと、その仕組みは盾の創造者ではわからないって聞いたけど!?」


「……そこなのだ。あの者が知らないうちに、魔物たちは瘴気を扱えるようになっていた。ある意味盾の創造者が期待していた通りになったということだ」


その説明に、全く理解が追いついていないエレーナとステイビルは、言葉を口にせず表情だけでその思いを語った。何度も質問ばかりを繰り返していては、こちらが甘く見られてしまう可能性もある。


剣の創造者は、二人のその表情を察してその疑問について語り出した。



「確かなことは判らないが、私はこうであると考える……」


魔素や瘴気が集まる場所……実際に盾の創造者にはそのようなものを感知できる能力がないため、魔素や瘴気が扱える者たちが多く発生している場所に、魔物たちを置いて行った。
性格は凶暴で、自分以外の者たちは全て”敵”とみなす性質を持った魔物たちを。
そうするうちに、既に存在する種族たちと魔物はすぐに敵対する関係となった。

魔物たちは、子供では敵わないが大人でありある程度の体力があるものなら倒せる個体や、戦闘に特化した者たちが集団で襲い掛からなければならないような個体まで存在していた。

こうして魔物も、そのような種族……中には魔素を扱える者たちを食物とすることになった。
そうするうちに、魔物も魔素や瘴気を扱える個体が存在し、個別に能力を身に付けていくことになった。

それらを相手にしていく種族も、魔物の個体の強弱を把握していき、エルフのように新しい魔術を構築する者や、ドワーフたちのように新しい能力を授かって生まれる者たちが存在してきた。









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