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第六章 【二つの世界】
6-347 暗闇の世界3
しおりを挟む『――なっ!?』
ボーキンの耳に聞こえた驚きの声の主は、モイスのものだと判った。
暗闇の中では自分の肉体を感じていなかった、その状態から急に身体を取り戻した。
伝わる声も意識に直接伝わってくるのではく、周囲の音も含めて空気が振動し伝わってく感覚にホッとする……のも束の間。
二人の女性が対峙しているその状況と、サヤの傍にいるモイスの声から普通ではないことを感じ取った。
「こ……これは?」
「――モイス!」
『……は!』
驚いていたモイスに、サヤは再びマギーたちを取り込むように命令する。
その声に再び自分がこの場ですべきことを思い出したモイスは、マギーたちをもう一度自分が指定した空間へと連れ戻そうとした。
『……だ、ダメです!?移動できません!?ま、まさか……能力を封じられたようです!?』
「……たく、仕方ないね」
「「――!?」」
その言葉と同時に、ボーキンたちは再び暗闇の中に放り込まれてしまった。
そしてまた耳が塞がれてしまったかのように、ボーキンたちに静寂が纏ってしまう。
今度もみんな揃っているのか確認するために、またボーキンは意識だけとなった暗闇の中で声を掛けた。
「み、みんな……そろっているか?」
その問いかけに、先ほどの聴覚を伝ってくるものではなく意識に直接届くような感覚でそれぞれの返事が聞こえてきた。
「な、何なんだ!?あれは一体……」
「ハルナさんとモイス様とサヤ様の姿は確認できました。ですが、あの一瞬ではそれ以上のことは」
「そうだな。しかも何か二人が争っているようにも見えたが……」
ボーキンは、エルメトの言葉で自分たちが見て感じたものが間違いではないと判断した。
しかし、そこから得た情報でも初めの問題は何も解決をしていなかった。
”――ハルナとサヤのどちらが敵か”
「……っ!!!」
もしもという前提で考え始めたボーキンが自身の中で立てた複数の推測のうちの一つに、その先を考えたくもないものがあった。
「……どうしたの?」
ボーキンの異変を感じ取りそう話しかけたのは、ボーキンの妻であるスィレンだった。
ボーキンはその言葉に、この場にいる者たちに可能性の情報共有しなければと判断し、自分が思い至った考えを伝える。
「これは……一つの可能性だが。もしかすると、我々はこの空間の中に閉じ込められる可能性がある」
「「――!?」」
表情は見えなかったが、自分と同じように驚いてくれたことにホッとし、さらにその考えを伝えた。
「我々は、モイス様にどこともわからないこの世界に閉じ込められた。そして先ほど、一瞬ではあるが元の世界に戻ることができた……しかしそれは、モイス様にとっては予想外の出来事だったように見えた。そして、今この状態に戻ったのはハルナ殿の力ではなく、モイス様の傍におられたサヤ殿の力であろう」
一瞬の状況で起きたことを思い出しながら、ボーキンはそう考えていた。
その考えが間違っていないことは、いまエルメトやアーリスが何も言わないことがその答えであると考える。そしてボーキンは、自分の考える最悪の予想を口にした。
「もし、サヤ殿がハルナ殿に敗れてしまった場合……我々は、このままここに取り残されてしまうのではないか?」
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