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第六章 【二つの世界】

6-360 サヤとハルナと12

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「では、次に我々がどうやって人間の……」


「ちょっと待って……ねぇ」


「ん?どうかしたのか?」


話しを止められた存在は嫌な予感しかしなった。本当は、その嫌な予感を断ち切るために早々に話を進めていきたかったのだが、相手の重苦しい言葉にその流れを止められてしまった。
そしてその予感が正しかったと、この次の言葉で証明された。



「私たち……今まで通り、一緒にやっていきましょうよ?」


「……」


「さっきの話しだって、二人で一緒に考えていけばまだまだこの世界を面白く変えていくことができるわ!?離れて研究する必要なんてないじゃない、これまで通りに……」


その言葉を聞く相手の顔は、こちらの話を聞くような表情はしていない。それよりも、引き留められることが辛いという目をしている。
その目を見てしまった存在は、もうこれ以上の言葉が出てくることはなく、自分が行った引き留める行為が悪いことのようにさえ思えてしまっていた。




「そう……わかったわ。もう二度と言わない……から」


そこから諦めたように、これ以上はこの関係を維持するようには声を掛けなくなった。
そのことをを確認できた存在はホッとしたが、それとは異なった場所で締め付けられるような息苦しさも感じられた。
だがそれ以上の思考は放棄して、当初の目的のために説明を続けた。


「で……では、我々が人間の生活の中に入っていくという件だが、人間がよく使っている道具に擬態化するのが良いのではないかと思う」


「……」


その提案に対しての反応は、今までとは違い何の反応も見せなかったが同意するという仕草によって意図は伝わってきた。
寂しさを感じつつも、さらにその言葉の先を繋いでいく。


「人間たちは様々な道具を生み出し、生活を営んでいるんが見える。そしてある道具が神聖なものとして扱われているとみていた」


「ある……物?」


「そうだ、その道具とは人間の言葉で”剣”と”盾”と言っていた。その道具は自分たちの身を護るもので、その扱いに長けている者が重宝されている。おそらく自らの身を護るために攻撃や防御の技術を磨き、身体を鍛えることでその確率が高くなるのだろう。その技術に長けた者たちが集団の中心になることが多くみられ、その道具を精度が高いほど大切に扱われ、祈りの対象になっている者たちも見られた」

「では、私たちもその”道具”に……?」


「それが、人間の生活の中に入っていくには最適だと考えている」


その話を聞き、世界を創った存在が自分の知らないところを見ていたことに驚いた。
それは嫉妬にも似た感情だったが、それ以上にそんな存在と離れ離れになることに対することを変えることができない衝撃の方が強く感じられた。

「……そう。なら、それで問題ないわ」

「そうか……であれば、早速そのように行動を開始しよう」

「……もちろん、どの人間の集落に行くのか、既に決めているんでしょ?」

「あぁ……もちろんだ」

そういって、今後剣の創造者として存在していく者は、自分が選んだ人間の集落について説明をしていった。







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