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第六章 【二つの世界】
6-361 サヤとハルナと13
しおりを挟む「……あなたは、そういったでしょ?自分一人で研究がしたいって。そんなあなたに私が協力する必要ある?あるわけないわよね!?」
「……」
剣の創造者は、盾の創造者の言葉に何の反応を示すことができなかった。
思い返せば、確かに自分から相手の誘いを断って一人での研究に没頭した。
だが、その成果は失敗に終わっていた。
盾の創造者の能力が少しでも身に付けば、同じような思考能力が身に付くと考え、途中からは生物の創造に力を費やした。
長い時間をかけ、そこで唯一できあがったものは、意識だけを持つ存在ひとつだけだった。
その存在は、実態を持つことができなかったため世の放つことはできなかった。
結局、誰にも見つからないようにと生き物が到達できい場所へと、隠すようにその場所へと埋め込んで終わらせてしまっていた。
剣の創造者はそれが原因で、今の状況になってしまったと考えていた。
今の全ての状況が、自身の行動が原因であると……
そのタイミングで、心の底から声が湧き出てくる。
(――なに、落ち込んでんの?いまはそんな時じゃないでしょうが!?)
(――!?)
その叱咤の声に、剣の創造者の感情の数値は一瞬に平常値へと引き戻されていった。
(アンタの気持ちもわからないではないけどさ……それはアンタが決断したことなんだから、そのままどっしりと構えてればいいんだよ!相手の感情を気にするところもあるけど、アタシはアンタの下した判断は間違ってはないと思う……多分ね)
(……)
(もちろんアンタが全て正しいとは言えないけどさ、でも”あっち”の言うことも全部が正しいわけじゃないんだよ)
(では……私はどうすればいいと思う?どうすれば正しい結果になるというのだ?)
(……そんなの誰にもわかるはずがないっての!!!)
(――!?)
そう言い切ったサヤに、剣の創造者は稲妻が身体を貫くような衝撃を覚える。
この世界を創造してきた存在として、なんでも知っていなければならない気がしていた。
しかし、サヤの言う通りに、自分が起こした行動の結果は全てが想像通りになってわけではない。
偶然にもその結果が得られたことであるが、それは確率として考えた結果となっていた。
(アンタたちはすごい能力を持ってるのかもしれないけどさ、その未来までは予測できないんだろ!?アンタの記憶を覗かせてもらったけど、結局は時間の中で”出来事”を起こしてるだけに過ぎないんだよ。その起こした出来事によって、お互いが生み出し環境が重なってこの結果が生じているんだ。だから、アンタが判断したあの時の決断がこんなことになるなんて誰にもわかるはずがないだろ!?)
(し……しかし、判断や行動を起こしたことによって、この結果が生まれているのではないのか?)
(それはそうだろうね。だけど、さ。その判断が無くて、今の結果になったと思うか!?もちろん悪かったこともあるだろうけど、それは誰に対してのことだ?この世界に生きている者たちが全てそう感じているのかい?)
剣の創造者は、サヤの言葉に改めて自分の思考と今の状況を見直してみる。
疲れた思考と感情に、サヤから告げられた言葉が沁みた。
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