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第六章 【二つの世界】
6-435 決戦7
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「お姉ちゃん……はる姉ちゃんってば!」
「……あ。おはよ、風ちゃん」
「おはようじゃないんだよ……もう。今何時だと思ってるの!?」
そう言われいつものベットの上で身体を起しもせずに、半開きの目で部屋の中にある時計を見る。
だが、その数字はぼんやりとしていてよく見えず、今の時間を調べることを諦めた。
「……風ちゃん、今日部活は?」
陽菜はゆっくりと上半身を起こし、同じベットの端に腰かけている妹の風香に話しかけた。
「今日は、休みなの。それよりも、今日は約束してくれてた映画、一緒に見に行くんでしょ?早くしないと間に合わないよ!?」
「映……画?……あぁ、映画ね。そういえば、約束してたね……あれ、今日だっけ?」
「もう……まだ寝ぼけてるの?お姉ちゃんも楽しみにしてるって言ってたじゃない!出てる人が
お店に来てくれてたんでしょ?私の友達にもファンの子がいるのよ?」
「あぁ……そうだったっけ?うん、もう大丈夫!ちょっと頭がぼーっとするけど、支度するよ!」
陽菜は風香とそんな約束をしたことを思い出し、風香に嫌われないようにと必死に約束を果たそうとした。だが、身体はうまく反応してくれずに、陽菜はベットの上から動かせないでいた。
そんな姉の様子を見て、風香はベットから立ち上がり腕を組みながら陽菜のことを見下ろした。
「どうせ、昨夜も遅くまでゲームやってたんでしょ?」
「昨日はイベント最終日だったから……まだクエをこなしてない人たちもいたからね」
「それにしたって”ゲーム”なんでしょ?何回も言ってるけど、なんではる姉ちゃんがそんなところまで面倒見るの?ゲームにそこまですることないじゃない!?」
「そうなんだけど……私も嫌いじゃないのよねー」
「……って、このやり取り何回したの?もういいから、さっさと着替えてよね!?」
呆れながら、この場を引いてくれるいつものやり取りにホッとしながら陽菜は本気で次の行動を取ろうとした。
「はいはい、ちょっと待ってて。すぐしたくするから……あれ」
陽菜は寝巻から着替えようとベットから足を下ろそうとするが、自分の身体ではないみたいに上手く動かすことができない。
その身体は自分のモノだが自分のモノではない感覚で、何かに遮られているように思い通りに身体を動かすことができなかった。
「私……心配してたの」
「え?何を!?」
「あの”事故”の後、はる姉ちゃんが寂しくしてないかって……でも、よかった。元気そうな姿が視れて安心した」
その言葉にハルナは思い出す、いま自分が何をしていたのかを。
「風ちゃん……私……」
「うん、わかってる。もう行くんでしょ?私も頑張るから、はる姉ちゃんもがんばってね!」
「うん、ありがとう。みんなによろしくね!」
「わかった、みんなに伝えておく。”■”の中でもお姉ちゃんにあえてよかった……」
泣きそうになっている風香の表情に、ハルナもつられて悲しみの感情が溢れてくる。
「風ちゃん……ごめんね!ごめんね!!」
「ううん……会いに来てくれてありがとう!私、お姉ちゃんのことずっと大好……!」
そこでハルナの意識は再び、現実へと戻されていった。
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