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第二章 調停者。
一方その頃─⑤ 魔女子さんとしろうさぎさん。
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一方その頃。
この世界で最弱と呼ばれる森では今日もいつもと変わらぬ日常が流れています。今日は朝一番からしろうさぎさんの元を訪れていた魔女子さん。彼女はしろうさぎさんに連れられ森のある場所へと向かっているところでした。
「ふん、ふん、ふ~ん」
鼻歌交じりに腕を大きく振って歩く魔女子さん。そんな彼女の楽しそうな姿を見てしろうさぎさんの顔にも自然と笑顔が溢れます。
「楽しそうですね、魔女子さん」
「うん!! 今日はお散歩で~、探検だっから~」
「ピクシーさんも一緒じゃなくて良かったんですか?」
「うん!! ピクシーちゃんには~、私が教えてあげるから~、今日はおっ留守番~」
「ふふ。そうですね。そうすれば魔女子さんも、もう一度楽しめますもんね」
「うん!! たっのしめる~!!」
そんな魔女子さんの粋な計らいでお留守番を頼まれていたピクシーさんは一匹秋晴れの空を見上げています。
「──っくしゅん。って、あーー、絶対これ魔女子だわぁ……」
そうぼやくピクシーさんの元に木枯らしが吹くと、舞い散るいろは紅葉。目の前を包み込むその光景にピクシーさんはその目を細めます。
「……舞い散る紅い葉、か……アンタ、散り際に一番輝やいて見えるなんてね。なんとも言えない感覚だわ。でも、そうね。うん、嫌いじゃないわ。だから、また来年会いましょう。その時はあいつらと一緒に見てあげるからさ。それまで私がアンタを覚えててあげるから──」
その呟きに応えるようにもう一度木枯らしは通り過ぎると舞い上がるいろは紅葉。ピクシーさんはその行方を目で追いかけるとそのまま空を見つめて言いました。
「……あいつらも、そろそろあそこに到着した頃かしらね」
──そして、丁度その頃。
しろうさぎさんと魔女子さんは目的地へと到着すると、目の前に広がる神秘的な光景に少女はその目を輝かせていました。
「うわぁ……」
そこに広がる二つの彩。
魔女子さんを挟むように右側に四季桜が白い花びらを咲かせ。
左側ではいろは紅葉が紅くその色を染め上げ揺れています。
言葉に出来ない言葉。
それが彼女にとっての最高の賛辞の言葉です。
魔女子さんはただ立ち尽くすとその感動を全身で表現します。
「どうですか? 魔女子さん」
「……す、すごい……綺麗……な、なに、これ……主の、魔法?」
「魔法? そうですねぇ……ええ、はい。魔法です」
「ええ!? やっぱり!!」
「はい。でもそれは私じゃなくて、この森の……いえ、この世界のかけてくれた季節の循環、奇跡の魔法です」
「季節の循環、奇跡の魔法……そうなんだぁ……この世界も、魔法使いさん、だったんだぁ……」
「はい、そうですね。きっとこの世界は素敵な魔法使いさんだと私も思います」
すると先程ピクシーさんの元に吹いた風と同じような木枯らしがその場を吹き抜けます。
「う、うわっ……」
そして、そこに舞い乱れる二つの彩。
「うわぁ……」
目の前で舞い踊る白い桜の花びらと紅いいろは紅葉。
魔女子さんを包み込むようにしながら舞った二つの彩は。
彼女の前で混ざり合うと、その先で一つに溶け合ってみせたのでした。
紅白の混じり合った世界の景色に一人と一匹は静かに言葉を寄せます。
「主、二つは一つになれるんだね」
「そうですね。二つを運ぶ風がそれをそうさせてくれたのかもしれませんね」
「風かぁ……うん。それも素敵な魔法だね」
「はい」
調停者アナスタシアとくろうさぎさんのクロエがこの世界の『小さな種』に気づいた頃。
この森では世界のかけた季節の循環による奇跡の魔法に目を輝かせる魔女子さんの姿があって。
その隣にはそんな魔女子さんを優しく見つめるしろうさぎさんの姿があったのでした──
この世界で最弱と呼ばれる森では今日もいつもと変わらぬ日常が流れています。今日は朝一番からしろうさぎさんの元を訪れていた魔女子さん。彼女はしろうさぎさんに連れられ森のある場所へと向かっているところでした。
「ふん、ふん、ふ~ん」
鼻歌交じりに腕を大きく振って歩く魔女子さん。そんな彼女の楽しそうな姿を見てしろうさぎさんの顔にも自然と笑顔が溢れます。
「楽しそうですね、魔女子さん」
「うん!! 今日はお散歩で~、探検だっから~」
「ピクシーさんも一緒じゃなくて良かったんですか?」
「うん!! ピクシーちゃんには~、私が教えてあげるから~、今日はおっ留守番~」
「ふふ。そうですね。そうすれば魔女子さんも、もう一度楽しめますもんね」
「うん!! たっのしめる~!!」
そんな魔女子さんの粋な計らいでお留守番を頼まれていたピクシーさんは一匹秋晴れの空を見上げています。
「──っくしゅん。って、あーー、絶対これ魔女子だわぁ……」
そうぼやくピクシーさんの元に木枯らしが吹くと、舞い散るいろは紅葉。目の前を包み込むその光景にピクシーさんはその目を細めます。
「……舞い散る紅い葉、か……アンタ、散り際に一番輝やいて見えるなんてね。なんとも言えない感覚だわ。でも、そうね。うん、嫌いじゃないわ。だから、また来年会いましょう。その時はあいつらと一緒に見てあげるからさ。それまで私がアンタを覚えててあげるから──」
その呟きに応えるようにもう一度木枯らしは通り過ぎると舞い上がるいろは紅葉。ピクシーさんはその行方を目で追いかけるとそのまま空を見つめて言いました。
「……あいつらも、そろそろあそこに到着した頃かしらね」
──そして、丁度その頃。
しろうさぎさんと魔女子さんは目的地へと到着すると、目の前に広がる神秘的な光景に少女はその目を輝かせていました。
「うわぁ……」
そこに広がる二つの彩。
魔女子さんを挟むように右側に四季桜が白い花びらを咲かせ。
左側ではいろは紅葉が紅くその色を染め上げ揺れています。
言葉に出来ない言葉。
それが彼女にとっての最高の賛辞の言葉です。
魔女子さんはただ立ち尽くすとその感動を全身で表現します。
「どうですか? 魔女子さん」
「……す、すごい……綺麗……な、なに、これ……主の、魔法?」
「魔法? そうですねぇ……ええ、はい。魔法です」
「ええ!? やっぱり!!」
「はい。でもそれは私じゃなくて、この森の……いえ、この世界のかけてくれた季節の循環、奇跡の魔法です」
「季節の循環、奇跡の魔法……そうなんだぁ……この世界も、魔法使いさん、だったんだぁ……」
「はい、そうですね。きっとこの世界は素敵な魔法使いさんだと私も思います」
すると先程ピクシーさんの元に吹いた風と同じような木枯らしがその場を吹き抜けます。
「う、うわっ……」
そして、そこに舞い乱れる二つの彩。
「うわぁ……」
目の前で舞い踊る白い桜の花びらと紅いいろは紅葉。
魔女子さんを包み込むようにしながら舞った二つの彩は。
彼女の前で混ざり合うと、その先で一つに溶け合ってみせたのでした。
紅白の混じり合った世界の景色に一人と一匹は静かに言葉を寄せます。
「主、二つは一つになれるんだね」
「そうですね。二つを運ぶ風がそれをそうさせてくれたのかもしれませんね」
「風かぁ……うん。それも素敵な魔法だね」
「はい」
調停者アナスタシアとくろうさぎさんのクロエがこの世界の『小さな種』に気づいた頃。
この森では世界のかけた季節の循環による奇跡の魔法に目を輝かせる魔女子さんの姿があって。
その隣にはそんな魔女子さんを優しく見つめるしろうさぎさんの姿があったのでした──
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