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2話 ふたりの出逢い
しおりを挟む……見つけたっ!!…
初めて君を見た瞬間に、そう思ったんだ。
あの日を忘れるはずがない。
俺、桐山氷雨22歳。
アイドルんを目指して苦節十数年、少しずつ仕事をもらえるようになって来た今日この頃。
そして、俺の隣で踊るコイツ。
天城陽向20歳。明るく元気で歌もダンスも上手いのに、なぜか俺と一緒になかなか売れずにくすぶり続けて十数年。なんだかんだでずっと一緒にやって来た。
売れない十数年、後輩が売れていく中で一緒に辛い思いもしたし、お仕事もらえたって一緒に喜んだ時もある。
俺たちは、シンメ(シンメトリー)と言って、左右対称の位置で踊るふたりで、いつもコンビの様に組まされていた。
そんな相性バッチリな俺たち!!
俺が氷雨を好きになってしまうのは必然だったのかもしれない。
陽向に初めて逢ったのは、陽向が10歳でうちの事務所のオーディションを受けに来た時だった。
俺は、事務所の先輩としてオーディションを受けに来た子たちに、見本の踊りを踊ってそれからオーディションを見守っていた。
その中のひとりに、陽向がいた。
何十人もいる中で俺の瞳を釘付けにしたのだ。
ひときわ、ダンスが上手くて少し掠れた声が印象的で、高音の声が俺の心を奪っていった。
初めて逢った人に、そんな感情を持ったのは初めてで、当時12歳だった俺はひどく戸惑った。
そして、なぜかわからないけど…
【見つけた!】って思った。
自分でもわからないけど、【見つけた】って思ったんだ。
激しく心を揺さぶられて、一瞬も目が離せない程に陽向に惹かれて。
息をするのも忘れてしまう程…時が止まってしまったのかと思うくらいに心をぎゅっと掴まれた。
オーディションを受ける大勢の中のひとりだった、陽向。
そのたった一人が気になって仕方がなかった。
彼はきっとこのオーディションに合格する!イヤ!して欲しいと願った。
心が騒いで、もう一度君に逢いたいと思ったあの日から、もう十数年一緒に踊り続けてる。
ダンスのレッスンが終わって、休憩時間になると陽向が俺に飲み物を渡した。
『はいっ!』
『ありがとう』
いつものやり取りだ。
飲み物を取りに行くのが面倒な俺に、必ず飲み物を持ってくる陽向。
飲み物を飲みながら、陽向が
『ねぇ~ひーくん?覚えてる?』と問いかける。
ハタチを過ぎても【ひーくん】と呼ばれてしまうのは、幼い頃からずっと一緒にいるから仕方のないことだろうなんて思いながら…
『なにを?』
俺は、汗を拭きながら答えた。
『初めて会った日の事!!』
突然そんな事を言い始める陽向。
『おうっ!お前、真っ赤な変なバック持ってたもんな』
クスっと笑うと
『違うっ!そういう事じゃなくてっ!!』
『じゃあ~どういう事?』
『ひーくん、あの時俺を見てたでしょ?それで、すごく咳き込んでたでしょ?』
まだ10歳だった陽向が良く覚えていたなと感心した。
『ダンス上手い子いるなって思ってさ!こいつときっとまた逢うって思ったわ!』
陽向は太陽みたいな眩しい笑顔で、
『俺も!!きっとまた逢うって思ってた!!』
陽向も同じことを思っていたなんて、なんだか運命みたいで嬉しいと思ってしまい、顔がにやける。
それでも、にやけてしまった顔を直ぐにキリっと戻して、この想いに気づかれないようにした。
この気持ちは、陽向に気づかれないように…
心の奥底へしまっておくって決めているから。
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