死神のカウントダウン

白夜

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3話 数字の意味

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【翔side】


突如として現れた俺にしか見えない数字。


全く意味は分からないけど…これと言った害もない。


数字が見えるだけで、いつもの生活になんら変わりは無かった。


講義が終わって、学生が一斉に席を立つ。

『今日、サークルの打ち合わせの後に、みんなで飲みに行かない?』

大地が言った。


『…俺は、いいや。』


和真がパソコンをしまいながら言った。


『かずっ!お前最近付き合い悪いって!久しぶりに一緒に飲もうって~俺も、飲むからさ!!』


俺が言うと…


『しょうくん、そんなに飲めないだろ?』

『俺は、かずと違って少しのアルコールで満足できるカラダなんですっ!!』


はぁ~と大きくため息ついて、
『ただ弱いだけだろ?…わかった、俺も行くよ…』


渋々了承した和真。


『よっしゃーっ!久しぶりに飲もうぜっーっ!』
久しぶりにかずも一緒で、どこか浮かれていたのかもしれない。


小さい頃から一緒だったし、居心地がよくて!
全然性格違うのになんか馬が合うって感じだった。

ずっと当たり前に一緒にいるって思ってた…

高校だって同じ高校を受験するはずだったのに…

それなのに、突然高校の志望校を変えた和真。

最高の幼馴染で最高の親友!なんでもわかり合ってると思っていただけに、どこか裏切られたような…自分だけが最高の親友だって思っていたみたいで、悲しくなった。

俺はしばらくショックで、しつこいくらいに問い詰めた!

何度志望校を変えた理由を聞いても『なんとなく…?』『こっちがいいかなぁって思っただけ…』曖昧な返事を繰り返し、俺を避けるような事さえあった。

少しずつ距離が出来てしまった俺と和真、高校が違えば一緒にいる時間も少なくなって、高校時代は家の近くで見かける程度になっていた。

離れてしまっても、いつも和真の事は気にかけていたし、親が仲がいいお陰で和真がどうこうという話はいつも聞いていた。
そして、大学受験の日に和真を会場で見かけた。

すごく嬉しくて、声をかけようとして止めた。
入学するまで秘密にしておきたかった。また、変えられてしまうのも嫌だったし、俺はお前とキャンパスライフを楽しみたかった!!また、昔みたいにはしゃいだり、一緒に帰ったり遊んだりしたかったから。


合格発表の日、和真が合格したのか気になったけど、すぐに合格したとわかった。
こんな時親が仲がいいのは助かる!!

和真には内緒にしてもらって、入学式の日に和真を見つけ出した!!

そして、声をかけると和真はすごく驚いて、目をまん丸くしていたのを覚えている。
まるで、時が止まってしまったみたいに息をするのも忘れて俺を見ていた。


同じ講義をいくつか取っていて、和真はまた俺を避けようとしたけど、和真の友達の大地と仲良くなって、あっという間に昔みたいにつるむようになった。


大地を味方につけた俺の作戦勝ちというところだろう!!

一緒に遊んでいる時はすごく楽しそうにする癖に、時々困った顔したり急に俺を避けようとするんだから!

意味が分からんっ!!

昔みたいに遊べばいいのにっ!!

でも、俺がお願いすれば、たいていは言う事を聞いてくれる!
それが、和真だ!

昔から、俺に甘いからなっ!!



大地と和真とサークルの飲み会に参加した。

あまりお酒が強くない俺は、ウーロン茶で楽しく騒いでいた。
和真は少し離れた所に座って、静かにどんどんビールを流し込んでいた。

ちらっちらと和真を見ていると

『翔っ!お前全然飲んでないじゃんっ!!』

サークルの先輩に声をかけられた。
なにかと俺を可愛がってくれる先輩で

『翔っ!お前ほんと可愛いのなっ!飲んだらどうなんの?』

『俺、あんまりお酒強くないんで、酔っ払いますっ!!』

俺の肩に先輩の腕が回されて

『よしっ!飲めっ!酔っぱらった俺が面倒みてやる!!』

なんか楽しいし、久しぶりに和真もいて安心していたのか


『じゃあ飲みますっ!』
って、レモンサワー頼んだ。

直ぐにレモンサワーが来て、一口飲んだら…

なんだか今日は飲めそうな気がするっ!

訳のわからない自信が、どんどんお酒を進めていった。

気が付けば、2杯目もなくなって…
顔が熱くて…頭がぼーっとして…くらくらする。


『しょうくんっ!もう、やめとこ!!帰ろっ!俺、送ってくから』
心配そうに俺を支える和真がぼやけて見えた。


『まだ飲めるよな?酔っぱらった翔めっちゃ可愛いっ!もっと飲めよ!』
先輩が和真を無視して、俺にグラスを握らせた。


和真はそっと俺からグラスを取り上げて、
『翔くんお酒弱いんで、これ以上飲ませると吐きますよっ!!』

先輩を威圧的に見て強い口調で言った。

なんだか、いつも穏やかでふんわりとした和真らしくない。


『…あっ…うぅっ…』
確かに…少し気持ち悪いかも…?


和真はみんなに挨拶をして、ふらふらしている俺を抱きかかえる様にお店を出た。

『なんで…こんなになるまで飲むかな…弱いのわかってる?…』

ブツブツと呪文の様に呟く和真の声は、少し心地よくて…

 ーーーなんだか、安心する


俺は酔っぱらっていた。


0時を過ぎて、和真の数字が【8】になっていることも気が付かないくらいに…


ふわふわで…

心地よかった。








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