死神のカウントダウン

32話 大切な人

32話　　大切な人


いったい誰だよっ！

俺と寿命なんて交換して、死んでいくヤツ…

死んでいく？

俺の近くで死ぬのは…

かずま？

そう言われてみれば…
数字が見える様になった日…
かずまの頭の上の数字が【9】やった。

あの日、俺はお前から？
この死神の瞳を受け継いだってこと？
お前が俺と、寿命の交換をしたってこと？

アイツと交換したから…俺はかずまともう寿命交換できないってこと？

『右京…聞いてもいい？』

『右京って…すっかり、お友達ですね。いいですよ。』

『…寿命…交換した相手とは、交換できないってこと？』

俺は、違う答えを望んでいた。
そんなはずないって…思いたかったのかもしれない。

でも…答えは…

『そうです!正解！！わかりました？しょうくんが、かずまくんと寿命交換もうできない意味が。』

俺は、愕然とした。

なんで？

なんで？

俺の為にお前が死ぬの？
全然意味がわからない！！

俺たち、親子でもなんでもないのに…

ただの幼馴染で…親友で…
大好きな…人…。

アホだ！

馬鹿だ！！


ほんとに、アイツ！
大馬鹿者だ！！

俺の為に死ぬとか…。

俺が、死神の瞳を受け継ぐのを悔やんでるって？
俺に死神の瞳の辛さを味あわせたく無いって？


自分は小さい頃からずっと…誰にも言わずに…死と向き合ってきたのに？

かずまの母親から譲り受けたって事だよな？

かずまは小さい頃から、この死神の瞳で…人の死に向き合って来たって事だよな…


何人もの死のカウントダウンを見ながら、でも止める事なんて出来なくて…

そんな事…全然感じさせなかったしっ！
誰よりもいつも優しかった…

『言うなって言われてたんですけどね。なんか…ふたり見てたら…そうなっちゃいますよね。言いたくなっちゃうというか…なんで、すれ違っちゃうんすかね？』

『すれ違ってないしっ！！』

『いや…なかんか拗らせてるじゃないですか？』

『誰が、こじらせてんだよ！！』

『しょうくん以外にいます？』

…いない…か。

『あそこまでヤっといて…なかったことにしようって…そりゃないですよ！！』


『俺じゃないしっ！なかったことにって言ったのは俺じゃないからっ！！……って！！なんで知ってんだよ！』

『俺！死神ですよ！』

…なんだか、妙に納得したけど…

『かずまくん…今、実家に帰ってますよ。死ぬのはやっぱり怖いですから。ひとりで死んでいくのは特に怖いと思いますよ。死ぬのがわかっているんですからなおさら…』

時計はもう0時を回っていた。

『あと【1】日ですよ。しょうくんが、かずまくんと一緒に居られる時間。…あと、1日ですよ。ちなみに…死亡予定時刻は5時です。朝5時ですよ！！』

そう言うと、右京はすーっと消えた。

残された、俺は…
どうしようもなく…かずまに逢いたいのに！！

電車もなくて…
明日の朝、始発でかずまの家に向かうことにした。

布団に入っても…
眠れるわけもなくて

いろんな事を考えた。

かずまが死んでしまうなんて、考えられなくて…

信じられなくて…

全てが夢ならと考えても
部屋に残る焼肉の匂いが、さっきまでいた死神を思い出させた。

アイツ…右京…死神の癖にいい奴だったな。
かずまがいる場所まで教えてくれた。

これは夢じゃない…

あと【1】日しかない…

かずまが居なくなるなんて、考えた事もなかった…

当たり前に傍にいて

当たり前に俺に微笑んでくれる

ずっとそばにいるんだと思ってたから…

いなくなるなんて…考えられなかった。

いなくなるってなって、初めて気が付いた。

俺の中で一番大きかった存在…

それは、かずま…お前だ。

いつだって一緒だったし、楽しいのもお前がいたから…
ツライ時だって、お前が傍に居たし…
お前が辛い時だって…

俺が傍に居ただろ？

ひとりで死なせはしないから…

そして…
俺、お前が好きって！

ちゃんとわかったからっ！！