短編集【5話執筆中】

薄明 喰

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I can't stand myself

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顔を血まみれにして歩く僕に皆顔を顰める。
中には、悲鳴を上げて逃げる生徒もいて申し訳ない。


でも僕が使っても大丈夫そうな水場までは遠いし、此処を通らないと辿り着けないから許して欲しい。




水場について顔の血を落としてから痛む右足を見たら赤黒く腫れていた。

まるで大きな生き物を丸呑みした黒蛇みたいで面白い。




「そこでなにをしている」


自分の右足を見てちょっと楽しくなっていたら不意に声を掛けられて心臓がぐりゅん!ってなって息が詰まった。

振り向いたら、そこには兄上が居て僕の顔や足を見て顔を顰めた。


あ!と慌てて足をズボンで隠して顔を見えないように地面に向ける。




「き、き…ないの、ごめ、なさ」


汚いものを見せてしまって心の底から申し訳なくて、今すぐ水に溶けて消えてしまいたくなる。

僕は学校で兄上や弟に会わないようにすごく気をつけていた。



学校に通わせてもらっているけれど、僕は将来そこまで学なんてあっても役立たないだろうし、授業の1つや2つ受けなくても問題ないから、兄上や弟に会ってしまいそうな授業は受けてない。

だからこれが学校で兄上に会ってしまった初めての瞬間だった。




「お前…医務室に行きなさい」

「ぁ…」


兄上の言葉に上手く返事ができないのは、言葉が拙いからというのが理由ではなく、僕は医務室に入ることを禁止されているから兄上の言葉に従えないのでプチパニックを起こしているのだ。



「何だ」


「ぁぅ…ぼ、僕…駄目です。医務し、つ…駄目です」



「…おい、どういう事だ」


一生懸命兄上に僕は医務室に行けないってことを伝えたのだけど、兄上には理解出来なかったらしい。

兄上が僕じゃない方へ声を掛けたと思ったら木の影から人が現れた。



「医務室への入室を禁止されているようです」

木の影から現れた人の言葉についそうそうと頷いてしまう僕を見て兄上は更に美しい顔を顰めてしまったので慌てて地面を見つめて真っ直ぐ立つ。


「…あの足は問題ないのか」

「ぁ…だ、だーじょーぶ、です!な、治ります!」


地面を向いたまま兄上に必死に答える。

兄上には申し訳ないけれど、初めて会話する兄上に心がふわふわしてる。
いつもベンチに横たわって聞いていた優しくて静かな声。

弟が転けて怪我をしてしまって、回復した後に駆け回っていた時も「あれは問題ないのですか?また怪我をするのでは?」と心配そうにしている声が聞こえてきたことがある。



僕に対しては心配ではなく、物珍しさからの好奇心だろう。

だってこんなに足が赤黒くて太い人なんて滅多にいない。
僕は僕以外見たことない。


兄上もこの丸呑み黒蛇みたいな右足面白いって思ってるのかな。
そうだといいな。



兄上はしばらくじっと僕の前に立っていたけど、何も言わずにどこかへ行ってしまわれた。

やっと顔を上に上げると、まだ人が居た。


あの木の影から現れた人だ。




「タオレット様からの命令です。これでその足や顔をどうにかしてください」


「ぁぅ…ぅぃ」


びっくりしすぎて変な返事しちゃったし、受け取っちゃった。

でもびっくりしてても彼に触れないように受け取った僕に僕は拍手する。




寮の部屋に帰ってから渡された物でどうにか顔と足を白い布で隠せた。

使い方よく分かんないけど、前に怪我してた弟が同じ白い布をぐるぐるって巻いてたのを見たことがある。


何か違う気がするけど…汚いものが隠せてるんだからいっか!

あ…ところでこの白いのって何時までつけてたらいいんだろう。



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