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I can't stand myself
⑬
しおりを挟むそう思っているのだと父上達にきちんとお話した。
父上達が優しい人だって分かってるけど、その優しさを僕にまで向ける必要なんてないんだと。
そうしたら軟禁されて、毎日「お前が消えたら悲しくて死んでしまう」だとか「リスィがいない世界は殺伐としてる」だとか「リスィが消えるなら私も一緒に」とか朝から夜まで言われ続けた。
「何の呪いですか?」と聞くと「リスィが消えなくなるお呪いだ」と言われた。
そんなよく分からない日々を過ごして今日。
僕は逃げることができず、此処まで来た。
来てしまった…
「や、やはり…」
「さぁリスィ、母上が待っている」
この場に来て、どうにか逃げようと企む僕の左右に兄上とレオレイルが居て、両腕を掴まれていることから脱走は出来い。
踏ん張る僕だけど、僕よりも大きくて逞しい兄上やレオレイルには到底適わず、ずるずると屋敷の中へと引き摺られて行く。
「ぁぁ…ぁあっ、リスィ!!」
「っ!」
無理矢理連れてこられた部屋には既に母上と父上が居て、僕を視界に捉えた母上は発狂するどころか、僕の元まで走り寄ってきた。
更に、何故か僕は母上に抱きしめられた。
はっと我に返り、慌てて母上の腕からすり抜ける。
僕は男にしては細くて小さいけれど、母上から逃げ出せるくらいの力はある。
咄嗟な行動のせいで母上がよろけてしまって焦ったが、近くにいた兄上がすぐに母上を支えてくださったから母上は怪我を負わずに済んだ。
ここで母上に怪我なんてさせようものなら、僕は四肢をもいで死ぬ。
「リスィ!ごめんなさい!ごめんね、ごめんねリスィ…」
グズグズと顔を掌で覆い泣きながら僕に謝る母上に、僕はどう返したらいいのかも、どう動けばいいのかも分からなかった。
母上が謝ることなんてない。
むしろ謝らないといけないのは僕の方だ。
「は…こ、侯爵夫人…あの、謝るのは」
「母上と呼んで。お願いよリスィ」
ずっと母上と呼んでいたけれど、母上の前で母上と呼ぶ訳にはいかないと呼び直したのに、母上は僕の手をがしっと掴み母上と呼ぶようにと願った。
手を掴まれた瞬間、ひぃっと引き攣った悲鳴を上げてしまったのが情けない。
「よ、呼べません」
「いいえリスィ。貴方は私を母上と呼んでいたはずよ」
母上に言われ、ぱっと父上を見ると頷かれた。
密告者は父上で間違いないらしい。
「…母、上」
「ええリスィ」
意を決して、母上と呼んでみた。
母上と呼んで返事があることが信じられない。
身を草花に隠しながら、散歩をする母上を遠くから眺め、小さく「母上」と呼んでいた時期があったが、その時はもちろん返事なんてなく、言葉が返ってくるだなんて、思ったこともなかった。
何故だか目が熱くなって、視界が悪くなる。
「ご、ごめ…ごめんなさい、ごめんな、さいっ…うま、生まれて、ごめんなさい!」
ずっと言いたかった。
ずっと謝りたかった。
許してもらえる何て思わないし、伝えることも出来ないって分かってても、どうしても謝りたかった。
母上の人生を滅茶苦茶にして、苦しめたことをどうしても謝りたかった。
「っリスィ、リスィ違うわ!」
情けなく「ごめんなさい」と泣き叫ぶ僕を母上は再び抱きしめる。
今度は僕は母上の腕を振り払わなかった。
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