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幼馴染という言葉だけでは表せない僕達の関係
③
しおりを挟む今の僕はとっても不審者。
夕凪が通う大学の門前でウロウロそわそわ。
連絡を入れたけど、忙しいのか夕凪からの返信がなかなか無い。
直前に連絡するんじゃなくて、家を出る前に連絡したらよかった。
突き刺さる視線に居心地の悪い気持ちになりながら、壁にもたれて夕凪からの連絡を大人しく待つことにした。
5分、10分と時が過ぎ、ついに近くにいた生徒らしき人が「大丈夫ですか?」って声をかけてくれた。
人を待ってるだけなのでって答えて、また夕凪を待つ。
連絡はない。
「汰嗚!!」
もう帰っちゃうかと思い始めた時、聞き馴染みのある声が聞こえてきて壁から背中を離し門の影から顔を出すと、汗をかきながら走ってくる夕凪の姿が見えた。
「よかった、まだ居た…汰嗚電話鳴らしてくれ」
「邪魔になると思って」
「講義中はマナーにしてるし大丈夫。疲れたろ?中にカフェがあるからおいで」
夕凪に手を引かれて初めて夕凪が通う大学の敷地内に足を踏み入れた。
僕が通う大学よりもすごく大きくて綺麗な所で、あちこちに大きな建物がある。
カフェに着くまでに僕はキョロキョロと辺りを見回して、あれはなに?これはなに?と夕凪に聞いた。
夕凪は面倒臭がらずに僕の疑問に全部答えてくれて、途中でもはっと気がついて、ハンカチで夕凪の汗を拭ってあげたら、ぎゅーってハグされた。
夕凪は汗かいてても良い匂いだから不思議。
辿り着いたカフェはとてもおしゃれで、僕の好きなティラミスがあった。
「んまんま」
「ははっ、汰嗚なら喜ぶと思った」
とっても美味しいティラミス。
しかも800円で少し値はするけど、大きいから全然高い!ってならない。
また食べに来たい。
「ふっ、汰嗚。ついてる」
「んぁ…ちゅっ…あ、ありがとう」
「ん」
ばくばく食べる僕を夕凪はニコニコ笑って真正面から見てて、顎についちゃってたらしいクリームを指先でのって、僕の口の中に入れてくれた。
ちゅっと吸い取ると、夕凪は満足そうに頷いて、ナプキンペーパーで拭いてくれる。
僕が食べるが下手くそで、たまにこうして食べ物が口じゃないところについちゃうのだけど、その度に夕凪は見てるこっちまでへにゃって笑ってしまいそうになるくらい満足したって感じの笑みを浮かべる。
そういえば、前お家でケーキ食べてて同じような状況になった時
『あんた達、そういうのは人目のない時にしなさい。見てるこっちが赤面しちゃうわ』
ってお母さんが言ってた。
「夕凪、人目がある所じゃダメなんだっけ?」
「ん?別に大丈夫だよ。恋人の適切なスキンシップ」
よしよしと頭を撫でられて、気持ちよくて、人目がどうとかどうでもいっかって思った。
見たくないなら見てこなければあいい話だもんね。
「ふふ」
「ん?夕凪?」
「いや…汰嗚が可愛いなって」
夕凪の言葉にふーんと素っ気なく返すけど、心の中は嬉しくて心臓がドコドコ鳴ってる。
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