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幼馴染という言葉だけでは表せない僕達の関係
④
しおりを挟むお腹を満たした僕たちは、カフェを出て、今は夕凪が荷物を持って帰ってくるのを図書館で待ってる。
人の目がほどよくあって、僕の好きな本もあるから待ち合わせ場所にぴったしだと思ってたって夕凪が言ってた。
夕凪が思っていた通り、図書館は静かだし、チラチラと見てくる人は居るけれど、近づいてこようとする人はいない。
それに僕の好きな児童書が置いてある。
中学を卒業すると児童書って本当に図書館からなくなっちゃう。
だからこんな所に児童書が置いてある何て凄すぎる!
夕凪が通う大学、いいなぁ。
僕が通う大学は小さくて図書館は専門書しかない。
ワクワクで本を読んで、気がついたら真横に夕凪が座ってこっち見てた。
「こわ」
「酷いな。汰嗚が楽しく読んでる邪魔しちゃ駄目だなって待ってたのに」
「ありがと…でもニコニコ笑って黙ってこっち見てるのは怖いよ」
「ははは」
僕の言葉に夕凪は傷ついた様子もなければ、怒る様子もない。
笑って僕の目の下を優しく指で撫でて楽しそうだ。
お母さんやお父さんは夕凪に甘やかされて夕凪に依存する僕を危険視するけれど、そんな2人に夕凪はよく「汰嗚はどれだけ甘やかしても大丈夫」と言っている。
何が大丈夫なんだって両親だけじゃなくて僕も思ってるけど、両親は夕凪が僕を絶対に離さないって分かってるし、夕凪が僕だけは絶対に傷つけないって知ってるから苦い顔しながらも僕達を無理矢理引き離すことはしなかった。
「それ、そんなに好きなら全巻買えばいいのに」
「揃えたいけど…置く場所が」
「そんなのいくらでも用意するよ」
「…夕凪、バイト代僕に使いすぎじゃない?」
「いいの。推し活みたいなもんだよ」
夕凪の言葉に思わず笑っちゃう。
夕凪から推し活って言葉が出てきたのも面白いけど、推し活で生き生きとする夕凪を想像するとめちゃくちゃ似合わなくて笑っちゃった。
「汰嗚が楽しいならなんだってするし、何でも出来るよ。汰嗚を傷つけるような人間は僕達の世界にいらないから排除する」
にこっと笑って夕凪は僕の腕を優しくとる。
「これ、なに?」
低い声で尋ねられた言葉で、僕はいつの間にか腕に痣を作っていたことに気がついた。
指摘されるまで気が付かなかったけど、少し考えて思い当たることがあった。
僕が夕凪に会いに来る前の道で人とぶつかってしまったのだ。
僕も夕凪に連絡をしようか迷ってスマホを見ていたし、向こうは急いでたみたいで急には止まれなかった。
「だから大丈夫だよ。痛くもない」
「歩きながらスマホ見てちゃ駄目。見るなら端で止まりなさい」
「うん。今度からそうする」
本当に相手に申し訳なかったし、危険さも分かった。
それにあんまり怒らない夕凪がこうして叱ることだから、もう二度としない。
強く頷くと、夕凪は笑っていいこいいこって頭を撫でてくれる。
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