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第1章
過去の僕の小話
しおりを挟む僕は泣きながらノヴァに抱えられ、そんな体制で昔の僕のことを話した。
_____
僕は他人が自分へ向ける感情に敏感だったと思う。
だから僕は両親が僕を好いていないことも分かっていたし、友人達の中で僕という存在がそんな大きなものでないことも分かっていた。
周りと考え方が合わないことが多くて、「変な子」とよく言われて育った。
実家から離れて一人暮らしをすることになった時、やっと両親から離れられると安堵した。
もう鬱陶しそうな顔で見られたくなかった。
容赦のない言葉に胸を抉られたくなかった。
無視をされて自分が生きているのか疑いたくなかった。
でも、一人暮らしをすると両親に告げた時…出て行ってくれるなら金を出すと言われて悲しんでいる自分がいることに絶望した。
別に引き留めて欲しかった訳じゃない。
分かっていた。
「変な子」な僕を育てることを両親が悩んでいたこと…。
僕と一緒に外を歩くことを恥じていたこと。
だって両親は覚えていなかったけど、両親は僕に言った。
「死んでくれたらいいのに。」
って。
確かに言ったんだ。
両親だけじゃない。
生きていた中でクラスメイトにも言われたことが何度かある。
ふざけて出た言葉じゃない。
まるで汚物を見るような目で僕を見て、心の底から思って出た言葉だった。
僕は僕が死んで悲しむ人は知らないけど…僕が死んで笑う人間は知っている。
悲しいとか、そういうんじゃない。
只々…惨めだった。
僕という人生に疲れ切っていた。
早く終わればいいと思ってた。
あの日…
僕は向かってくる車に「あぁ、やっとか」って思った。
やっと…
やっと愛されない僕が終わることに安堵した。
____________
つまらない僕の話をノヴァは最後まで僕の頭を撫でながら黙って聞いてくれた。
僕が僕の話をしたから、人によっては悲劇のヒロインぶった話だと思う人もいるだろう。
被害妄想が激しいだとか、そんなことでって鼻で笑う人もいるだろう。
自分でも訳の分からない変な期待をノヴァにしてしまっていたことに自嘲した。
「ルナイス。お前に私はどんな人間に見えてる?」
「え?」
ノヴァは苦笑いのような、悲しそうな…なんとも言えない表情をしている。
「私はルナイスを蔑んだ目で見るような人間か?ルナイスの死を笑う人間か?」
「…ううん。」
ノヴァはルナイスの死を笑うような人間じゃない。
ルナイスを汚物を見るような目で見下した事は1度もない。
いつも優しい目で見守ってくれて、魔法を丁寧に教えてくれる。
でも…
でもそれはルナイスだから。
でもルナイスは僕だから。
だから余計な事は言わないでおこう。
ノヴァは僕の事を大切に思ってくれているんだって教えようとしてるんだと思う。
だから…
「昔の君と今の君の違いはなんだ?」
「違い?」
「考え方が大きく違うか?性格が真逆か?」
言われてみて、自分が昔の自分と今のルナイスを切り離して考えていたけれど、根本的な自分は同じものだと気がつく。
別の人生で生きる世界も違うけど、僕は相変わらず他者が自分に向ける感情に敏感だし、面倒臭がりで生きる気力が湧かないでいる。
「ルナイスとしてこの世界に生まれてくる前のお前のことはどう足掻いてもどうすることもできない。だが、今私の前にいる君に私は一緒に生きていて欲しいと思っている。それに外見は違えど昔の君とルナイスが別人には思えん。つまりだ…私は昔の君も好きだということだ。」
ちょっと照れくさそうにしながらも一生懸命僕に伝えてくれるノヴァに瞼と喉がカーッと熱くなる。
ノヴァはそんな僕を頬を赤くしながらもそっと、でも力強く抱きしめてくれて…何だか昔の僕と今の僕がやっとひとつになれた気がした。
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