僕と先生との物語

げんき

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社会人

2年目【補導①】

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3学期も終わりに近づいた頃、またしても事件が起きた。

今年度最後のテストも終わり、終業式までのカウントダウンが始まっていた。
9教科のテストの結果が順番に返却されていた。
テストの点数を見て一喜一憂する生徒。



そんな中、高橋先生のクラスの生徒がいなくなった。
夜19:30頃、学校の電話が鳴った。
電話の相手は高橋先生のクラスの生徒である優樹の母。
優樹はサッカー部に入っていて真面目で勉強もできる。

お母さんの話によるといつもならクラブ終わり18:30には家に戻るが、この日は帰って来ておらず心配して電話してきた。
ただもう学校にはもちろん居ない。

今までにこんな事は一度もなく、お母さんも戸惑っている様子だった。



僕たち教師は手分けをして探し回ったが見つからない。
優樹と仲の良い同級生に連絡をしてもみんな優樹の居場所は知らなかった。



23時半を過ぎた頃、優樹の家に警察から電話が鳴った。
内容は優樹を保護しているとの事だった。
優樹の両親と高橋先生と僕はすぐに警察署に向かった。

到着するとすぐに警官が優樹と会わせてくれた。
優樹は1人で公園のベンチに座っているところを補導されていた。

この日はもう遅かったので詳しい話は聞かず、高橋先生と僕は帰った。



次の日、優樹には登校したら職員室に来るように伝えていたので朝から優樹が職員室に来た。
高橋先生と僕は優樹を連れ、生徒指導に行った。
部屋に入るなり優樹が僕たちに謝って来た。



「昨日はいろいろと心配かけてすみませんでした。先生達、探し回ってくれてたって聞きました。」

高橋先生が優樹に質問した。

「あんな遅い時間まで何してたんや?」

「何もしてなかったです。公園のベンチに座ってました。」

「寒い中、家にも帰らず夜遅くまで何でそんな所に居たんや?」

「ごめんなさい。」

「みんな心配してたんやで。何でそんな事したんや?」

「家に帰りにくかったから。」

「家で何かあったんか?」

「そんなんじゃないけど…。テストの結果が返って来て、今回点数悪かったから帰りにくくて。」



優樹はそう言っていたが、優樹は勉強もできる優等生。
今回は5教科で合計450点を超えていた。
僕からしたらそんな点数を取った事も見た事もない。
それにテストの点数が悪くて帰りにくい意味もわからなかった。

僕は優樹に話しかけた。



「優樹めっちゃ点数いいやん。それやのに帰りにくいの?」

「今までで一番悪かったから。塾も行かしてもらってるのに少しずつ点数が下がっていってるのが申し訳なくて帰りにくかったんです。」

「でも、優樹がんばってるやん。普段の授業中も一生懸命やし、放課後には塾も行ってるんやろ。十分やと思うで。」

「がんばってても結果がついて来なければ意味がないんです。」

「結果も大事やと思う。でも、過程も大事やろ。みんなテストの点数で一喜一憂してるけど、点数だけが全てじゃないと思うで。一生懸命やった結果ならそれでいいやん。」

「でも、良い高校行きたいからちゃんと勉強して結果残さないといけないんです。」

「優樹にとって良い高校って何なん?」

「賢い所です。」

「勉強できるのは素晴らしい事やと思う。僕は勉強できやんかったし、優樹の勉強に対する姿勢とか凄いって思う。でも、勉強できるから何なん?」

「勉強できないと良い仕事に就けないじゃないですか。安定した良い仕事に就きたいんです。」

「優樹のやりたい事とかはないの?勉強もできないよりはできる方が絶対にいい。でも、何のために勉強するん?良い高校に入って、安定した仕事に就く事が優樹の夢なん?」

「夢とかないです。でも、そうしとけば間違いないと思うから。」

「僕は将来優樹がやりたい事やって欲しい。そのための準備をしておく事は大事やと思う。僕は全然勉強できやんかったから、先生になりたいって思った時もやっぱり勉強できへんから自信なかったし今だに勉強では苦労してる。もっとちゃんと学生の時に勉強しといたら良かったって思う事もたくさんある。でも、優樹はやってるやん。結果も大事やけど、がんばれてる優樹自身の事も大事にしてあげて欲しい。自信持ってや。」



それからも優樹と話をした。
高橋先生は優樹に補導された事や心配をかけた事は怒っていたが、別に何も悪い事はしてないので注意で終わっていた。

優樹と話している中で1つ気になることがあった。
それは優樹が話していた良い高校や良い仕事と言うのはお母さんがずっと優樹言っていたとの事だった。
だから今回点数が下がった事で、優樹はお母さんから進路の話や将来の話をずっとされていたと言っていた。

その期待に応えないといけないという優樹の気持ちが優樹を追い込んでいる様子だった。



高橋先生は優樹から聞いた内容をやんわりとお母さんに伝えていたが、お母さんの考えは変わらない。

「今、がんばらないと後悔するのは優樹やから、がんばらせたい。」とお母さんは高橋先生に伝えていた。



僕も高橋先生も優樹のことが心配だったが、どうする事もできないまま時間が過ぎて行った。



ただ、それ以降も母親からのプレッシャーは続いていた。
優樹もしんどくなり、学校終わりに家に真っ直ぐ帰らない事も多くなっていた。
同時に母親との関係も悪くなり、優樹は少しずつ落ち着かなくなっていった。

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