3 / 4
Ⅰ巻
次話 総会に向けて動き出す生徒会
しおりを挟む
○
………しかし、見れば見るほど、不思議に思えてきますなぁ。
櫻井は目の前で榊原が箱を持ってきたのを見届けていた。
因みに、櫻井が座っているのは元々榊原が座っていたもので「委員がいくら増えようと、机と椅子は一つしか置かないらしい」のだ。
「さて、お前が来るまで見ていたのだが―――五分前登校に関してだ」
「あぁ、それですかぁ」
勿論知っている。
………遅れてきたら反省文欠かされる奴やなぁ。確かに本来遅刻じゃない時刻をまるで遅刻扱いする上に反省文とくればなぁ。
不満は募っていく一方だ。
「では、任務を与える」
彼女は櫻井に紙とペンを渡した。それを机に有るクリップボードで挟めと言って、
「今から『生活委員会』に乗り込んで来い。ああ、スパイとか隠密的な意味じゃなく、ただ「五分前登校の件とその他お前が気になったこと」を聞いてくればいいんだ。別に委員長じゃなくてもいい。聞ければ。ああ、教師でもいいぞ?からかうのも悪くないからなあ」
………一回に話す量おおいなぁ。
そんなことを思っていても、櫻井は紙をクリップボードに挟んでから席を立ち、
「わかったぁ。行ってくるよぉ」
そう言って、彼は校改室から出て行った。
「さて、」
榊原は今度は自分の番だ、と気持ちを切り替え、箱からアンケートを取る。
ええと、と思って、すぐに気付いた。
………一回全部紙にアンケート結果を書き出してから、質問しに行けばらくじゃあないか。
何故わからなかったのだろう。普通そうすべきではないか。
「ああっ、もう、また図書委員会と生活委員会へと行かなくてはならないではないか!」
イライラしてくる。しかし、そんな感情的になっている暇はない。とりあえず彼女は箱から全てアンケートを取り出して、集計を始めた。
〇
榊原が吠えている時、櫻井は生活委員会が活動している、一年一組の教室へと来ていた。
………どうするんだぁ、この場合。
彼は教室には入っていない。扉の前で、小さい窓から見える中の様子を見ていたのだ。視線の先には、教卓に、生活委員長「間宮 劉輝」が立ち、その脇では生活委員会の監視を務める、教師「佐倉 茂」が椅子に腰かけていた。
彼ら二人の生活委員会代表格の視線の先は、十一人がそれぞれ席に腰掛けて、間宮の話を聞いていた。
………なんか入りずらすぎやしませんかねぇ。
そう、この空気をどう押し切ってゆけばいいのかタイミングがつかめない櫻井に、教師佐倉が気付いた。
彼と目が合う櫻井。
………やばいぃ、ピンチぃ、ピンチですよぉ。へるぷみーぃ!
すると視界にいた佐倉が消えた。
「ふぅ………」
とりあえず目の前にいた恐怖が過ぎ去ったことに安堵した櫻井。しかし、
「どこ行ったんだ?」
すると不意に後ろから、力強い力に肩を掴まれた
「ひぃぃっ!」
今の声で教室内にいた生活委員が疑問を抱いたが、続いている間宮の話に、呼び戻される。
それはともかく、今は己の肩だ。
掴まれた方を、振り向くと、
「おい、何やってんだ?お前」
「さっ、佐倉先生ぃ!」
おう、佐倉だぞ~。と答える教師佐倉。で、彼はもう一度櫻井に問うた。
「で、お前何やってんだ」
いや、あの。と会話を濁す。だが、榊原の言っていたことが櫻井の脳裏をよぎる、
『ああ、教師でもいいぞ?からかうのも悪くないからなあ』
つまり、今、この状況がチャンスかもしれない。
………ええと、一応生徒手帳には生活委員会の仕事は「学校内外の生活起立及び安全に関する任務を行う」となっているなぁ。何か、五分前登校以外に、突っ込めそうなところは……。
意外とない。そりゃ急に来ていきなり突っ込む場所はない。
目の前で首をかしげ、なんだあ?何もないなら俺戻るぞ?と先ほど同様に教室の奥の扉から戻ろうと(会話中の生活委員会の邪魔をしないように)する彼に、とりあえず榊原と話題をふった。
「じ、実は『五分前登校』の件で質問がいくつかぁ」
「ほう……」
で、
「何故だ?お前がそれをどうこう聞いたところで、意味のある話はできないと思うが?」
それに対し、櫻井は作り笑いで
「僕、校則改定委員会なんですわぁ」
「っ」
校則改定委員会、と聞いた教師佐倉の顔は一瞬だけ、苦に揺らいだ気がした。
………そうだろぅなぁ。僕たちは一般生徒よりも生徒総会などで「強い力」を持って相対できるんだぁ、それに万が一生徒総会で校則改定委員会が勝利して『多重役職者』が出現すれば教師である佐倉の給料は減給になるぅ。
だから、今度は自信を持って、
「佐倉先生ぃ。ここは一つ、ぜひ話をしたいんですぅ」
「………」
教師佐倉は黙り込む。しかし、教師とて、黙っているわけにはいかないのだ。
………教師側は生徒総会当日は権限をもてない。つまり、権限を持つ今、動いておかねば、あとは特になんとも思っていない生活委員の方へ話がいく。そうなれば、ただなにもせずに減給になりかねない!
よし、と教師佐倉は頷き、
「いいだろう。話、聞いてやる」
「どうもぉ」
〇
「ぐっ、あっ。も、う………むりだあっ…」
ばたり、と榊原は床に椅子からずれ落ちて倒れた。
何故倒れたかというと、超本気で百枚を超えるアンケートの集計をとっていたからだ。
しかし、
………意外と皆同じようなことばかりで、各委員会に聞く量も少なくて済みそうだ。
彼女の机には、各委員会とその他で紙に候補が書かれており、
生活委員:五分前登校、登校時間の変更、カップルの風紀乱しの管理、制服の着こなしについて、髪の毛の長さと許容範囲、靴下の丈とラインや絵の許容範囲、スカート丈
図書委員:ラノベの蔵書化、人気な本の複数蔵書計画(人気な本で、借りられないから、複数扱ったらいいのでは)、からだのひみつ等の借りにくさ
保健給食委員:トイレ内のトイレットペーパー補充の管理状況、洗剤補充の管理状況、昼食に出る牛乳の残量
環境福祉委員:朝の環境福祉委員によるモップ掛けが適当ではないか、福祉活動によるボランティアは自由参加だがこれでは参加する人が来ない件、授業後の各場所清掃で掃除用具の交換時期、清掃する場所が今は四月と十月に変えられるがもっとやってもいいのでは
応援団:昼休みでボールは何故蹴ってはならないのか、昼休み卓球やバドミントンを許可してほしい、ボールを蹴ったら一か月体育館及び武道場使用禁止は厳しすぎるのではないか
卓球部:特にない
女子バレー部:特にない
野球部:特にない
サッカー部:サッカー部が武道場渡り廊下に荷物を置いているからか砂が大量に渡り廊下に落ちているうえ、異臭がすごい
女子ソフトテニス部:会費見たけどお前ら何そんなに「砂」に金つかってんねん
剣道部:特にない
美術部:美術室にある絵具用のバケツが汚いぞこれはお前ら美術部が変な使い方してるからじゃないか、またバケツを美術部が磨くべきではないのか
生徒会本部及び学校全体:授業時間が現在五十分であるがトータルの時間が変わらなければ各授業時間はへんこうできるのか、ランチの時間が準備の時間を入れて二十五分は短い、教務室だけクーラーはずるい、教師だけ珈琲やせんべいなどの菓子を食べているのはずるい、教師だけ服装自由なのはずるい、教室には暖房があるのに冷房が無いのはおかしい、今教室の暖房が灯油式だから電気に変えて冷暖房つけられるようにすればいいのでは、トイレの窓の開閉の自由、体育館のトイレが汚い、PC室が有るのだからもっと授業で活用すべきではないか、冬季に行われる大縄跳び大会は必要ないのでは、体育祭めんどい、自転車通学の範囲を増やすべきだ、自転車通学生の駐輪場がかなりぎりぎりだ、夏は気温が高ければ体育の授業ができないのに対して冬も気温が低ければ中止すべきではないか、体育の「器械体操(マット)」「鉄棒」「柔道」はけがをしやすく下手をすれば死人が出るかもしれないのではないか、教室のカーテンが黄色っぽい色のせいで部屋全体が黄色くなって全然役に立っていないから暗幕にしてはどうか、冬季は下校時刻を早めるべきではないだろうか、テスト期間は最低でもその教科の一週間前には授業が終了しており残りはテスト勉強にまわすべきではないだろうか……等々
「本当に、間に合うのだろうか………」
………途中にスゴイどうでもいいこととかあったぞ!
しかし、どれも「生徒の不満」であり「学校への改善点」というわけで、看過することは避けたい。
だから今は、ネガティブになってはならない、と床から這いあがり、自分は櫻井が返ってきたときのため「ここに書いてある委員会か部活かその他の項目、どれか聞きにいって」という置手紙だけ机に残して気晴らしに楽そうな「ソフトテニス部」の活動場所へと向かった。
〇
進路相談室にて、
「さて………、五分前登校に関して、監視役の俺に、どんなことを聞きたいんだ?」
分かりずらい洒落を混ぜて相対する教師佐倉。それに対する櫻井は、そういえば佐倉と櫻井も洒落がかかってんじゃん、と心の中でツッコミ、表面上では真剣に、真顔で相対する。
「ええ、まず五分前登校の必要性を聞きたいんですぅ」
彼はこちらを一瞥し、手で何かを表現しようと動かし、言う。
「そりゃあ『生徒の時間に対する危機感』と『めりはりをつける』ためだ。ほら、この学校チャイムならないだろ?それもその延長で、やはり『時間に対しての危機感』ってのが社会に出てからも必要になるから、今から習慣づけておこう、ってのが表向きの話だ」
では、
「裏がぁ?」
あるんだよなあ、と彼言う。しかし、
「それは言えないあ。だって、そのせいで教師が不利になるのは嫌だからな」
成程ぉ。と
「確かに、このままでは先生方の給料減っちゃいますもんねぇ」
ああ、
「まあそれも有る。だから、考えろ。それだけだ」
「わかりましたぁ。では、個人的に、」
なんだ、と佐倉は言うので、頷き、言った。
「スカートの丈、長すぎません?」
〇
「なな、なんて事を言うんだ!」
そんなの気にすることじゃないだろう!とやや焦り気味に言う佐倉。
………なんでこんなに動揺してんだよぉ。ま、まさかこいつも僕と同じことを考えて?!
そうか、そうなのか。ならばこちらは容赦はしない。
「いいですかぁ?よく聞いてください。これからスカート丈が短くなると起こる利点を語ります」
〇
同時刻。グラウンドの隔離されたスペース、ソフトテニス部の活動場所。
「どうも、朝霧先輩」
「おお、榊原ではないかのう」
なんじゃ、とややジジくさい口調でこちらにラケットを持ちながら彼女はやってきた。
ええと、
「少し、時間が欲しい。いいだろうか」
「わかった」と彼女は言うと、すぐにもともと練習していた位置に走ってゆき「おい、副部長ちょっと用が有るから後頼む」と言って再度こちらに戻ってきた。
では、
「行くかのう」
〇
「――――――で、どこに行くんだ?」
「え、どこかで話すんじゃないのか?」
いや、と榊原は言い、
「ここで十分だ」とテニスコートから少し離れた、木のベンチに座り、隣に座るよう朝霧を促した。
「こんなところで、いいのかのう………で、なにかの?」
ああ、
「ちょっと聞くが、テニス部が会費で買っている「砂」についてだ」
おやおや、と朝霧は茶化すように
「生徒総会かの?」
「そうだ、」
だが、心配しなくていい、と
「仮に貴女を論破して「女子ソフトテニス部部長」の権限など譲渡されても、私はいらない。うけとらないから、安心しろ」
そうかえ、と彼女は何故か悲しそうな顔をして、
「で?砂がなんじゃ?」
「ほら、砂買ってるだろ?ボールとネット代は分かるのだが、砂に金が払われているという事に疑問があってな。ほら、ちょっと離れた海水浴場から取ってくればいいだろうに」
無茶言うのう、と
「確かに普通の砂ならそれで済む、じゃが………」
「普通じゃないのか?」と言うと、ああ、と返ってきて、続けて
「特別な、乾燥している砂なんじゃ」
だから、
「そこらへんの砂じゃ、ダメなんじゃ」
「ああ、そういうことか。わかった。済まない。有難う、では」
と、榊原は適当に手を振り適当に礼を言い、去って行った。
「全く………」
訳の分からぬやつじゃ
〇
完全下校時刻十分前。今日はたくさん歩き回った、と榊原が校改委員の部屋に戻ってくると、三人、そこにいた。
一人は、先程生活委員会へと行った、櫻井だ。彼が何枚かのくしゃくしゃになった紙を持っていることから、あの後他の委員会などにも聞きまわったのだろう。
………私とて、テニス部の後、部活は全部行ったし、応援団と環境福祉委員にもいったから、上等な出来だろう。
しかし、
………私の視線の先に、あと二人の、生徒がいるのだ。
すると、櫻井がこちらに気付き、
「あ、榊原ぁ」
とねっとりこちらを呼ぶと同時に、二人の生徒もこちらへ振り向いた。
「どうも」
「こんにちわあ、いや、こんばんわか?はは」
「お前らは………」
一人、どうも、とだけ告げたのは、三年の高桑 鈴だ。
「どうも、高桑先輩」
で、
「貴様は」
名札が黄色だ。つまり一年。すると一年の彼が、
「こんばんわ、僕は加藤 計人です。校則改定委員会に志願しに、」
「ということは、高桑先輩も?」
ええ、
「私も生徒総会でちょっと首突っ込みたくて」
「僕も、生徒総会で今後を考えて、ちょっと」
成程。と榊原は言い、
「歓迎する。二人とも。しかし、今日はもう時間が無い。明日、四人で分担して、とりあえずリストに書いてある項目をすべて潰すぞ」
「はあぃ」「わかった」「わかりました」
「よし、じゃあ、今日は解散だ。明日からは四人で活動か……だんだん面白くなってきたじゃないか」
ははは、と笑う榊原に三人は「不思議な人だ」と感じていた。
………しかし、見れば見るほど、不思議に思えてきますなぁ。
櫻井は目の前で榊原が箱を持ってきたのを見届けていた。
因みに、櫻井が座っているのは元々榊原が座っていたもので「委員がいくら増えようと、机と椅子は一つしか置かないらしい」のだ。
「さて、お前が来るまで見ていたのだが―――五分前登校に関してだ」
「あぁ、それですかぁ」
勿論知っている。
………遅れてきたら反省文欠かされる奴やなぁ。確かに本来遅刻じゃない時刻をまるで遅刻扱いする上に反省文とくればなぁ。
不満は募っていく一方だ。
「では、任務を与える」
彼女は櫻井に紙とペンを渡した。それを机に有るクリップボードで挟めと言って、
「今から『生活委員会』に乗り込んで来い。ああ、スパイとか隠密的な意味じゃなく、ただ「五分前登校の件とその他お前が気になったこと」を聞いてくればいいんだ。別に委員長じゃなくてもいい。聞ければ。ああ、教師でもいいぞ?からかうのも悪くないからなあ」
………一回に話す量おおいなぁ。
そんなことを思っていても、櫻井は紙をクリップボードに挟んでから席を立ち、
「わかったぁ。行ってくるよぉ」
そう言って、彼は校改室から出て行った。
「さて、」
榊原は今度は自分の番だ、と気持ちを切り替え、箱からアンケートを取る。
ええと、と思って、すぐに気付いた。
………一回全部紙にアンケート結果を書き出してから、質問しに行けばらくじゃあないか。
何故わからなかったのだろう。普通そうすべきではないか。
「ああっ、もう、また図書委員会と生活委員会へと行かなくてはならないではないか!」
イライラしてくる。しかし、そんな感情的になっている暇はない。とりあえず彼女は箱から全てアンケートを取り出して、集計を始めた。
〇
榊原が吠えている時、櫻井は生活委員会が活動している、一年一組の教室へと来ていた。
………どうするんだぁ、この場合。
彼は教室には入っていない。扉の前で、小さい窓から見える中の様子を見ていたのだ。視線の先には、教卓に、生活委員長「間宮 劉輝」が立ち、その脇では生活委員会の監視を務める、教師「佐倉 茂」が椅子に腰かけていた。
彼ら二人の生活委員会代表格の視線の先は、十一人がそれぞれ席に腰掛けて、間宮の話を聞いていた。
………なんか入りずらすぎやしませんかねぇ。
そう、この空気をどう押し切ってゆけばいいのかタイミングがつかめない櫻井に、教師佐倉が気付いた。
彼と目が合う櫻井。
………やばいぃ、ピンチぃ、ピンチですよぉ。へるぷみーぃ!
すると視界にいた佐倉が消えた。
「ふぅ………」
とりあえず目の前にいた恐怖が過ぎ去ったことに安堵した櫻井。しかし、
「どこ行ったんだ?」
すると不意に後ろから、力強い力に肩を掴まれた
「ひぃぃっ!」
今の声で教室内にいた生活委員が疑問を抱いたが、続いている間宮の話に、呼び戻される。
それはともかく、今は己の肩だ。
掴まれた方を、振り向くと、
「おい、何やってんだ?お前」
「さっ、佐倉先生ぃ!」
おう、佐倉だぞ~。と答える教師佐倉。で、彼はもう一度櫻井に問うた。
「で、お前何やってんだ」
いや、あの。と会話を濁す。だが、榊原の言っていたことが櫻井の脳裏をよぎる、
『ああ、教師でもいいぞ?からかうのも悪くないからなあ』
つまり、今、この状況がチャンスかもしれない。
………ええと、一応生徒手帳には生活委員会の仕事は「学校内外の生活起立及び安全に関する任務を行う」となっているなぁ。何か、五分前登校以外に、突っ込めそうなところは……。
意外とない。そりゃ急に来ていきなり突っ込む場所はない。
目の前で首をかしげ、なんだあ?何もないなら俺戻るぞ?と先ほど同様に教室の奥の扉から戻ろうと(会話中の生活委員会の邪魔をしないように)する彼に、とりあえず榊原と話題をふった。
「じ、実は『五分前登校』の件で質問がいくつかぁ」
「ほう……」
で、
「何故だ?お前がそれをどうこう聞いたところで、意味のある話はできないと思うが?」
それに対し、櫻井は作り笑いで
「僕、校則改定委員会なんですわぁ」
「っ」
校則改定委員会、と聞いた教師佐倉の顔は一瞬だけ、苦に揺らいだ気がした。
………そうだろぅなぁ。僕たちは一般生徒よりも生徒総会などで「強い力」を持って相対できるんだぁ、それに万が一生徒総会で校則改定委員会が勝利して『多重役職者』が出現すれば教師である佐倉の給料は減給になるぅ。
だから、今度は自信を持って、
「佐倉先生ぃ。ここは一つ、ぜひ話をしたいんですぅ」
「………」
教師佐倉は黙り込む。しかし、教師とて、黙っているわけにはいかないのだ。
………教師側は生徒総会当日は権限をもてない。つまり、権限を持つ今、動いておかねば、あとは特になんとも思っていない生活委員の方へ話がいく。そうなれば、ただなにもせずに減給になりかねない!
よし、と教師佐倉は頷き、
「いいだろう。話、聞いてやる」
「どうもぉ」
〇
「ぐっ、あっ。も、う………むりだあっ…」
ばたり、と榊原は床に椅子からずれ落ちて倒れた。
何故倒れたかというと、超本気で百枚を超えるアンケートの集計をとっていたからだ。
しかし、
………意外と皆同じようなことばかりで、各委員会に聞く量も少なくて済みそうだ。
彼女の机には、各委員会とその他で紙に候補が書かれており、
生活委員:五分前登校、登校時間の変更、カップルの風紀乱しの管理、制服の着こなしについて、髪の毛の長さと許容範囲、靴下の丈とラインや絵の許容範囲、スカート丈
図書委員:ラノベの蔵書化、人気な本の複数蔵書計画(人気な本で、借りられないから、複数扱ったらいいのでは)、からだのひみつ等の借りにくさ
保健給食委員:トイレ内のトイレットペーパー補充の管理状況、洗剤補充の管理状況、昼食に出る牛乳の残量
環境福祉委員:朝の環境福祉委員によるモップ掛けが適当ではないか、福祉活動によるボランティアは自由参加だがこれでは参加する人が来ない件、授業後の各場所清掃で掃除用具の交換時期、清掃する場所が今は四月と十月に変えられるがもっとやってもいいのでは
応援団:昼休みでボールは何故蹴ってはならないのか、昼休み卓球やバドミントンを許可してほしい、ボールを蹴ったら一か月体育館及び武道場使用禁止は厳しすぎるのではないか
卓球部:特にない
女子バレー部:特にない
野球部:特にない
サッカー部:サッカー部が武道場渡り廊下に荷物を置いているからか砂が大量に渡り廊下に落ちているうえ、異臭がすごい
女子ソフトテニス部:会費見たけどお前ら何そんなに「砂」に金つかってんねん
剣道部:特にない
美術部:美術室にある絵具用のバケツが汚いぞこれはお前ら美術部が変な使い方してるからじゃないか、またバケツを美術部が磨くべきではないのか
生徒会本部及び学校全体:授業時間が現在五十分であるがトータルの時間が変わらなければ各授業時間はへんこうできるのか、ランチの時間が準備の時間を入れて二十五分は短い、教務室だけクーラーはずるい、教師だけ珈琲やせんべいなどの菓子を食べているのはずるい、教師だけ服装自由なのはずるい、教室には暖房があるのに冷房が無いのはおかしい、今教室の暖房が灯油式だから電気に変えて冷暖房つけられるようにすればいいのでは、トイレの窓の開閉の自由、体育館のトイレが汚い、PC室が有るのだからもっと授業で活用すべきではないか、冬季に行われる大縄跳び大会は必要ないのでは、体育祭めんどい、自転車通学の範囲を増やすべきだ、自転車通学生の駐輪場がかなりぎりぎりだ、夏は気温が高ければ体育の授業ができないのに対して冬も気温が低ければ中止すべきではないか、体育の「器械体操(マット)」「鉄棒」「柔道」はけがをしやすく下手をすれば死人が出るかもしれないのではないか、教室のカーテンが黄色っぽい色のせいで部屋全体が黄色くなって全然役に立っていないから暗幕にしてはどうか、冬季は下校時刻を早めるべきではないだろうか、テスト期間は最低でもその教科の一週間前には授業が終了しており残りはテスト勉強にまわすべきではないだろうか……等々
「本当に、間に合うのだろうか………」
………途中にスゴイどうでもいいこととかあったぞ!
しかし、どれも「生徒の不満」であり「学校への改善点」というわけで、看過することは避けたい。
だから今は、ネガティブになってはならない、と床から這いあがり、自分は櫻井が返ってきたときのため「ここに書いてある委員会か部活かその他の項目、どれか聞きにいって」という置手紙だけ机に残して気晴らしに楽そうな「ソフトテニス部」の活動場所へと向かった。
〇
進路相談室にて、
「さて………、五分前登校に関して、監視役の俺に、どんなことを聞きたいんだ?」
分かりずらい洒落を混ぜて相対する教師佐倉。それに対する櫻井は、そういえば佐倉と櫻井も洒落がかかってんじゃん、と心の中でツッコミ、表面上では真剣に、真顔で相対する。
「ええ、まず五分前登校の必要性を聞きたいんですぅ」
彼はこちらを一瞥し、手で何かを表現しようと動かし、言う。
「そりゃあ『生徒の時間に対する危機感』と『めりはりをつける』ためだ。ほら、この学校チャイムならないだろ?それもその延長で、やはり『時間に対しての危機感』ってのが社会に出てからも必要になるから、今から習慣づけておこう、ってのが表向きの話だ」
では、
「裏がぁ?」
あるんだよなあ、と彼言う。しかし、
「それは言えないあ。だって、そのせいで教師が不利になるのは嫌だからな」
成程ぉ。と
「確かに、このままでは先生方の給料減っちゃいますもんねぇ」
ああ、
「まあそれも有る。だから、考えろ。それだけだ」
「わかりましたぁ。では、個人的に、」
なんだ、と佐倉は言うので、頷き、言った。
「スカートの丈、長すぎません?」
〇
「なな、なんて事を言うんだ!」
そんなの気にすることじゃないだろう!とやや焦り気味に言う佐倉。
………なんでこんなに動揺してんだよぉ。ま、まさかこいつも僕と同じことを考えて?!
そうか、そうなのか。ならばこちらは容赦はしない。
「いいですかぁ?よく聞いてください。これからスカート丈が短くなると起こる利点を語ります」
〇
同時刻。グラウンドの隔離されたスペース、ソフトテニス部の活動場所。
「どうも、朝霧先輩」
「おお、榊原ではないかのう」
なんじゃ、とややジジくさい口調でこちらにラケットを持ちながら彼女はやってきた。
ええと、
「少し、時間が欲しい。いいだろうか」
「わかった」と彼女は言うと、すぐにもともと練習していた位置に走ってゆき「おい、副部長ちょっと用が有るから後頼む」と言って再度こちらに戻ってきた。
では、
「行くかのう」
〇
「――――――で、どこに行くんだ?」
「え、どこかで話すんじゃないのか?」
いや、と榊原は言い、
「ここで十分だ」とテニスコートから少し離れた、木のベンチに座り、隣に座るよう朝霧を促した。
「こんなところで、いいのかのう………で、なにかの?」
ああ、
「ちょっと聞くが、テニス部が会費で買っている「砂」についてだ」
おやおや、と朝霧は茶化すように
「生徒総会かの?」
「そうだ、」
だが、心配しなくていい、と
「仮に貴女を論破して「女子ソフトテニス部部長」の権限など譲渡されても、私はいらない。うけとらないから、安心しろ」
そうかえ、と彼女は何故か悲しそうな顔をして、
「で?砂がなんじゃ?」
「ほら、砂買ってるだろ?ボールとネット代は分かるのだが、砂に金が払われているという事に疑問があってな。ほら、ちょっと離れた海水浴場から取ってくればいいだろうに」
無茶言うのう、と
「確かに普通の砂ならそれで済む、じゃが………」
「普通じゃないのか?」と言うと、ああ、と返ってきて、続けて
「特別な、乾燥している砂なんじゃ」
だから、
「そこらへんの砂じゃ、ダメなんじゃ」
「ああ、そういうことか。わかった。済まない。有難う、では」
と、榊原は適当に手を振り適当に礼を言い、去って行った。
「全く………」
訳の分からぬやつじゃ
〇
完全下校時刻十分前。今日はたくさん歩き回った、と榊原が校改委員の部屋に戻ってくると、三人、そこにいた。
一人は、先程生活委員会へと行った、櫻井だ。彼が何枚かのくしゃくしゃになった紙を持っていることから、あの後他の委員会などにも聞きまわったのだろう。
………私とて、テニス部の後、部活は全部行ったし、応援団と環境福祉委員にもいったから、上等な出来だろう。
しかし、
………私の視線の先に、あと二人の、生徒がいるのだ。
すると、櫻井がこちらに気付き、
「あ、榊原ぁ」
とねっとりこちらを呼ぶと同時に、二人の生徒もこちらへ振り向いた。
「どうも」
「こんにちわあ、いや、こんばんわか?はは」
「お前らは………」
一人、どうも、とだけ告げたのは、三年の高桑 鈴だ。
「どうも、高桑先輩」
で、
「貴様は」
名札が黄色だ。つまり一年。すると一年の彼が、
「こんばんわ、僕は加藤 計人です。校則改定委員会に志願しに、」
「ということは、高桑先輩も?」
ええ、
「私も生徒総会でちょっと首突っ込みたくて」
「僕も、生徒総会で今後を考えて、ちょっと」
成程。と榊原は言い、
「歓迎する。二人とも。しかし、今日はもう時間が無い。明日、四人で分担して、とりあえずリストに書いてある項目をすべて潰すぞ」
「はあぃ」「わかった」「わかりました」
「よし、じゃあ、今日は解散だ。明日からは四人で活動か……だんだん面白くなってきたじゃないか」
ははは、と笑う榊原に三人は「不思議な人だ」と感じていた。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
『紅茶の香りが消えた午後に』
柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。
けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。
誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる