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12. 欲望の淵
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唇を塞ぎ、舌を歯の間に差し入れる。相手のものを舐めると、ぺちゃ、と唾液の絡む音がした。安達は呆然としているのか、動かない。
「もしかして、初めてか」
耳元で囁くと、耳朶が瞬時に赤くなる。と、同時に、ぐっと掌で肩を押された。
「ど……して……」
自分を押しのけて立ち上がろうとした身体を、背後から抱き締めて拘束した。明らかに平均より細身の男が、高校、大学と柔道部の主将を務めてきた男にかなうはずもない。
「大丈夫」
逃げていいと言ったのに、逃がす気のない自分がいる。
首筋に唇を押しつけ、更に血管の上を舐めると、安達が息を呑むのが喉の動きでわかった。癖のないフレグランスの香りの下に、何処か甘いような彼自身の匂いを探す。
「大丈夫だから。怖くない」
恐ろしく白々しい台詞だ。それでも本当らしく響くよう優しく言いながら、掌を開いたシャツの隙間から忍び込ませた。予想していた、あるいは夢想していたとおり、皮膚は薄く、滑らかだった。肌を撫でる指に徐々に力がこもる。すると微かな突起が引っかかった。
「樋川さ――」
摘み上げると柔らかだった。感触を味わうようにこね回す。
「や、やめ、……っ」
「安達さんの、小さいな。どんな色をしてるんだ?」
「…………な、に」
「何って、乳首に決まってる。見せてみろ」
背後から抱いているせいで、シャツのボタンは片手で容易く外せた。胸の両側が露出するよう前をはだけさせる。不安になるほどささやかな器官は、無骨な指にいいようにされて、左の方だけ僅かに赤らんでいた。
「やっぱりここも色素が薄いのか」
「い――」
露出したそれを、軽く引っ張る。可哀想なくらい従順に、小さな粒は指の動きに従った。
「…………や……やめてください、樋川さん、痛い、痛いです……」
こんなときでも、やはりすぐにはまとまった文が出てこないらしい。
「じゃあこっちの方がいいか」
「うあっ」
爪と爪の間で挟んで力を入れると、彼は先刻よりも大きな悲鳴を上げた。痛みを訴えるその声に、かつて意識したことのない嗜虐心を自覚する。もっと痛がる声を聴きたい。泣かせたい。そんな残忍な欲望がどろどろと溢れて止まらない。いったい自分はどうしてしまったのだろう。
それでもひどく痛がってもがくので、爪を立てるのはやめた。代わりに機嫌を取るようにそっと先端を撫でる。その途端、彼はびくっと全身の筋肉を引き攣らせた。
「優しい方がいいのか」
指の腹で、触れるか触れないか程度の刺激を小刻みに与えると、安達の息が上がるのがわかった。逃げようとしていた身体は、いつの間にか抵抗をやめている。ぎゅっと腕を掴んでくる細い指も、凌辱者の行為を阻止しようというより、ただ縋りついているだけになっていた。やがて我慢できなくなったのか、吐息に快楽の色が混じり始める。
「……ぁ、あ、……はぁ……」
溶けそうに甘いその響きに、自らの下腹部が急激に熱くなるのを感じた。衝動的に首筋を吸い上げる。
「っあ」
「素質があるんだな」
つけたばかりの赤い印を舐めて言った。
「感じてるんだろう? 随分気持ちよさそうだ」
すると安達は慌てて首を横に振る。柔らかな髪が頬に当たる感触にさえ煽られると告げたら、彼はどんな顔をするだろうか。
「…………感じて、な……」
「だったらもっと強くするか」
やっと出てきた言葉を遮って、乳輪ごと摘みきつく抓る。手加減はしなかった。
「いっ、……嫌、痛い、いたいっ」
「痛いのは嫌か?」
こくこくと首が動く。だがそれでも力を緩めずに、更に問いを重ねる。
「優しいのがいいだろう? 優しくされると気持ちいいだろう? もっとしてほしくなるだろう?」
胸に密着した彼の背は、あの夜触れたときよりもずっと熱い。
最後の問いに彼が肯くのを待って指を離してやると、さんざん虐められたそこは、血が滲みそうなほど赤く充血していた。触れていない右側と比べるまでもなく、腫れ上がっている。
「あとで舐めてやるから、もう少し我慢な」
言ってから、舐めたあとに噛むだろうなと思った。ひどい男だ。
そんな暗い感情が伝わったのだろうか。身体を捩った安達が、怯えた目でこちらを見上げる。
「ひかわ、さん。なんで」
泣きだす一歩手前といった表情だった。羞恥のせいか普段より血色のよい唇が、彼のものとも自分のものとも知れない唾液で光っている。乱れた髪は汗ばんだ額やこめかみの辺りに貼りつき、下睫が濡れて、目の縁が滲んだように赤くなっていた。迷子になった子供のような眼差しの、その恐ろしく倒錯的なセンシュアリティ――。
「可愛いな、かすみ」
一瞬、誰の声かわからなかった。
それは幼児をあやすような、甘い口調だった。
けれど同時に、タールのような欲望で粘ついてもいた。
耳を塞ぎたくなるほどおぞましい声が、言葉が、自身の口から発されたものだとはとても思えなかった。しかしそれは、紛れもなく、自分の声だった。
初めて名字ではなく名前を呼ばれたことに驚いたのか、安達は目を見開いていた。ただでさえ目を惹く大粒の眼球が、そのせいでひどく露わになる。
絶望的に、愛しかった。
先刻乳首を追いつめた指で、乱れた髪をそっと梳く。
「かすみ」
耳に届く自身の声は、吐き気を催すほど不快な響きを立てる。それなのに彼を呼び続けてしまうのは、初めて口にするその名が、あまりにも舌に甘く溶けるせいだろうか。
「かすみ……」
頭を撫でれば、細い喉の密やかな小石が、こくりと動いた。
硝子の瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめている。
淡い色の虹彩に囲まれ、常人のそれより濃く際立って見える漆黒の瞳孔。その暗い洞が、じわじわと拡張していく。
「――可澄」
自分の中で、何かが壊れていく。
そして恐らくは、彼の中でも。
「可澄。……かわいい」
頬に、額に、瞼に、顎に、口づける。
「……可澄……可澄」
唇を甘噛みしてから、頭を抱え込むようにして舌を深く絡ませた。すると無抵抗だった指先に、かりかりと手首を引っ掻かれる。どうやら身体を捻じったままの体勢が苦しいらしい。向かい合わせになるように抱き直してやれば、もう彼は拒まなかった。両手をぺたりと床につけ、顎を上げ、こちらの動きに合わせて一心に舌を動かしている。まるで猫か何かのように。
貪るだけ貪って、漸く唇を解放したとき、彼の目許は先程よりも濡れていた。
沈黙の中、視線だけが絡む。濃厚な官能を湛えた彼の視線と、肉欲にぎらついた自分の視線と。
安達は何も言わなかった。彼の眼差しはもう、水底の硝子片を探してはいなかった。瞬き一つせず、ただ己の目に映るものを射抜いている。
しかし、それも当然のことといえた。獣に言語は不要なのだ。快と不快の区別さえつけられればいい。
そして自分もまた、彼と同じ、獣だった。
下睫に溜まった涙をそっと指の背で拭い、そのまま相手の口へ運ぶ。
僅かに開いていた唇に、人差し指と中指を入れた。二本の指の間で舌を挟み、頬の裏を撫で、上顎を軽く引っ掻く。
「……んぅ、ん……っ」
唇の端から零れた唾液が、顎を伝い落ちる。
「舌を使うんだ。できるだろう、可澄」
彼は放心したような顔で、指への奉仕を始めた。こちらにぼんやりと視線を留めたまま、挿入された二本の肉に舌を絡め、音を立てて吸い、軽く歯を立てる。赤子が乳を求めるような拙い舌技は、しかしだからこそ、発狂と紙一重の高揚を生んだ。
こちらに向けられた虹彩が、熱で蕩けたように光っている。
確信のもとに、空いた片手を彼の股間へと滑らせた。ジッパーを引き下げ、彼のものを探る。それは既に硬くなり、彼らしいチャコールグレーの下着に濃い染みを浮き上がらせていた。
「んっ……ん、ん、……んく」
「濡れてる」
染みをなぞりつつ、甘くくぐもった呻き声を漏らす場所に、三本目を突っ込んだ。
「可澄は口の中を犯されるのが好きなんだ」
耳殻を舐めて、唇を押しつけたまま囁く。
「可澄は男に口をいっぱいにされて、中を好きなように弄られて、それで恥ずかしいところがぐしょぐしょになる、いやらしい子だ」
指を引き抜くふりをすると、嫌がるように吸いつかれた。
胸の空洞に小さな痛みが走る。
我々は、いったい何処へ向かっているのだろう。この暗い欲望の淵に転落することで、いったい何を得、何を失うのだろう。
わからない。
「……可澄」
今は、何も、考えられない。
「もっと気持ちいいことをしようか、可澄」
名前を囁くたびに、彼の舌は熱を増した。
「もしかして、初めてか」
耳元で囁くと、耳朶が瞬時に赤くなる。と、同時に、ぐっと掌で肩を押された。
「ど……して……」
自分を押しのけて立ち上がろうとした身体を、背後から抱き締めて拘束した。明らかに平均より細身の男が、高校、大学と柔道部の主将を務めてきた男にかなうはずもない。
「大丈夫」
逃げていいと言ったのに、逃がす気のない自分がいる。
首筋に唇を押しつけ、更に血管の上を舐めると、安達が息を呑むのが喉の動きでわかった。癖のないフレグランスの香りの下に、何処か甘いような彼自身の匂いを探す。
「大丈夫だから。怖くない」
恐ろしく白々しい台詞だ。それでも本当らしく響くよう優しく言いながら、掌を開いたシャツの隙間から忍び込ませた。予想していた、あるいは夢想していたとおり、皮膚は薄く、滑らかだった。肌を撫でる指に徐々に力がこもる。すると微かな突起が引っかかった。
「樋川さ――」
摘み上げると柔らかだった。感触を味わうようにこね回す。
「や、やめ、……っ」
「安達さんの、小さいな。どんな色をしてるんだ?」
「…………な、に」
「何って、乳首に決まってる。見せてみろ」
背後から抱いているせいで、シャツのボタンは片手で容易く外せた。胸の両側が露出するよう前をはだけさせる。不安になるほどささやかな器官は、無骨な指にいいようにされて、左の方だけ僅かに赤らんでいた。
「やっぱりここも色素が薄いのか」
「い――」
露出したそれを、軽く引っ張る。可哀想なくらい従順に、小さな粒は指の動きに従った。
「…………や……やめてください、樋川さん、痛い、痛いです……」
こんなときでも、やはりすぐにはまとまった文が出てこないらしい。
「じゃあこっちの方がいいか」
「うあっ」
爪と爪の間で挟んで力を入れると、彼は先刻よりも大きな悲鳴を上げた。痛みを訴えるその声に、かつて意識したことのない嗜虐心を自覚する。もっと痛がる声を聴きたい。泣かせたい。そんな残忍な欲望がどろどろと溢れて止まらない。いったい自分はどうしてしまったのだろう。
それでもひどく痛がってもがくので、爪を立てるのはやめた。代わりに機嫌を取るようにそっと先端を撫でる。その途端、彼はびくっと全身の筋肉を引き攣らせた。
「優しい方がいいのか」
指の腹で、触れるか触れないか程度の刺激を小刻みに与えると、安達の息が上がるのがわかった。逃げようとしていた身体は、いつの間にか抵抗をやめている。ぎゅっと腕を掴んでくる細い指も、凌辱者の行為を阻止しようというより、ただ縋りついているだけになっていた。やがて我慢できなくなったのか、吐息に快楽の色が混じり始める。
「……ぁ、あ、……はぁ……」
溶けそうに甘いその響きに、自らの下腹部が急激に熱くなるのを感じた。衝動的に首筋を吸い上げる。
「っあ」
「素質があるんだな」
つけたばかりの赤い印を舐めて言った。
「感じてるんだろう? 随分気持ちよさそうだ」
すると安達は慌てて首を横に振る。柔らかな髪が頬に当たる感触にさえ煽られると告げたら、彼はどんな顔をするだろうか。
「…………感じて、な……」
「だったらもっと強くするか」
やっと出てきた言葉を遮って、乳輪ごと摘みきつく抓る。手加減はしなかった。
「いっ、……嫌、痛い、いたいっ」
「痛いのは嫌か?」
こくこくと首が動く。だがそれでも力を緩めずに、更に問いを重ねる。
「優しいのがいいだろう? 優しくされると気持ちいいだろう? もっとしてほしくなるだろう?」
胸に密着した彼の背は、あの夜触れたときよりもずっと熱い。
最後の問いに彼が肯くのを待って指を離してやると、さんざん虐められたそこは、血が滲みそうなほど赤く充血していた。触れていない右側と比べるまでもなく、腫れ上がっている。
「あとで舐めてやるから、もう少し我慢な」
言ってから、舐めたあとに噛むだろうなと思った。ひどい男だ。
そんな暗い感情が伝わったのだろうか。身体を捩った安達が、怯えた目でこちらを見上げる。
「ひかわ、さん。なんで」
泣きだす一歩手前といった表情だった。羞恥のせいか普段より血色のよい唇が、彼のものとも自分のものとも知れない唾液で光っている。乱れた髪は汗ばんだ額やこめかみの辺りに貼りつき、下睫が濡れて、目の縁が滲んだように赤くなっていた。迷子になった子供のような眼差しの、その恐ろしく倒錯的なセンシュアリティ――。
「可愛いな、かすみ」
一瞬、誰の声かわからなかった。
それは幼児をあやすような、甘い口調だった。
けれど同時に、タールのような欲望で粘ついてもいた。
耳を塞ぎたくなるほどおぞましい声が、言葉が、自身の口から発されたものだとはとても思えなかった。しかしそれは、紛れもなく、自分の声だった。
初めて名字ではなく名前を呼ばれたことに驚いたのか、安達は目を見開いていた。ただでさえ目を惹く大粒の眼球が、そのせいでひどく露わになる。
絶望的に、愛しかった。
先刻乳首を追いつめた指で、乱れた髪をそっと梳く。
「かすみ」
耳に届く自身の声は、吐き気を催すほど不快な響きを立てる。それなのに彼を呼び続けてしまうのは、初めて口にするその名が、あまりにも舌に甘く溶けるせいだろうか。
「かすみ……」
頭を撫でれば、細い喉の密やかな小石が、こくりと動いた。
硝子の瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめている。
淡い色の虹彩に囲まれ、常人のそれより濃く際立って見える漆黒の瞳孔。その暗い洞が、じわじわと拡張していく。
「――可澄」
自分の中で、何かが壊れていく。
そして恐らくは、彼の中でも。
「可澄。……かわいい」
頬に、額に、瞼に、顎に、口づける。
「……可澄……可澄」
唇を甘噛みしてから、頭を抱え込むようにして舌を深く絡ませた。すると無抵抗だった指先に、かりかりと手首を引っ掻かれる。どうやら身体を捻じったままの体勢が苦しいらしい。向かい合わせになるように抱き直してやれば、もう彼は拒まなかった。両手をぺたりと床につけ、顎を上げ、こちらの動きに合わせて一心に舌を動かしている。まるで猫か何かのように。
貪るだけ貪って、漸く唇を解放したとき、彼の目許は先程よりも濡れていた。
沈黙の中、視線だけが絡む。濃厚な官能を湛えた彼の視線と、肉欲にぎらついた自分の視線と。
安達は何も言わなかった。彼の眼差しはもう、水底の硝子片を探してはいなかった。瞬き一つせず、ただ己の目に映るものを射抜いている。
しかし、それも当然のことといえた。獣に言語は不要なのだ。快と不快の区別さえつけられればいい。
そして自分もまた、彼と同じ、獣だった。
下睫に溜まった涙をそっと指の背で拭い、そのまま相手の口へ運ぶ。
僅かに開いていた唇に、人差し指と中指を入れた。二本の指の間で舌を挟み、頬の裏を撫で、上顎を軽く引っ掻く。
「……んぅ、ん……っ」
唇の端から零れた唾液が、顎を伝い落ちる。
「舌を使うんだ。できるだろう、可澄」
彼は放心したような顔で、指への奉仕を始めた。こちらにぼんやりと視線を留めたまま、挿入された二本の肉に舌を絡め、音を立てて吸い、軽く歯を立てる。赤子が乳を求めるような拙い舌技は、しかしだからこそ、発狂と紙一重の高揚を生んだ。
こちらに向けられた虹彩が、熱で蕩けたように光っている。
確信のもとに、空いた片手を彼の股間へと滑らせた。ジッパーを引き下げ、彼のものを探る。それは既に硬くなり、彼らしいチャコールグレーの下着に濃い染みを浮き上がらせていた。
「んっ……ん、ん、……んく」
「濡れてる」
染みをなぞりつつ、甘くくぐもった呻き声を漏らす場所に、三本目を突っ込んだ。
「可澄は口の中を犯されるのが好きなんだ」
耳殻を舐めて、唇を押しつけたまま囁く。
「可澄は男に口をいっぱいにされて、中を好きなように弄られて、それで恥ずかしいところがぐしょぐしょになる、いやらしい子だ」
指を引き抜くふりをすると、嫌がるように吸いつかれた。
胸の空洞に小さな痛みが走る。
我々は、いったい何処へ向かっているのだろう。この暗い欲望の淵に転落することで、いったい何を得、何を失うのだろう。
わからない。
「……可澄」
今は、何も、考えられない。
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名前を囁くたびに、彼の舌は熱を増した。
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