硝子の魚(glass catfish syndrome)

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続24. 援助交際(3)

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 足蹴にされて、安達は震えながら身を起こした。下半身は靴下だけだが、上半身はまだ一枚も脱いでいないため、援助交際で本番をしたというよりも、変質者に凌辱されたように見える。彼が震えながら言われた体勢を取り、尻をこちらに向けると、自分は差し出された滑らかな肌を打った。
「せっかくザーメンを恵んでやったのに、零してるじゃないか」
 窄まった部分からは、先程注入したばかりの精液が滲み出ている。単純に卑猥だった。両手で尻の肉を揉みながら、もう一度挿入したくなる欲望をどうにか制御しようとする。まだそのタイミングではない。
「だらしない穴だな。まんこからザーメン漏らしてごめんなさいって謝れよ」
 尻肉を左右に押し広げ、無理やり下の口を開かせる。彼の太腿は、まるで生まれたての小鹿の脚のように不安定にぐらついていた。ここまで素直に興奮してもらえると、こちらも誠心誠意奉仕しなければならないという気持ちになってくる。
「……おまんこからおもらしして、ご、ごめんなさ……あぁっ」
 彼が言い終わる前に、ディルドを穴に押し込んだ。ぬるついて綻んだそこに、気味が悪いほどリアルな偽物の亀頭を咥えさせる。
「ザーメンが抜けてる。こんな簡単なことも言われたとおりにできないのか。お前のような駄目な便器には、チンポを嵌めてやる価値すらないな」
「……うぅ……」
 挿入されたのが道具だと気づくと、彼は親とはぐれた子供のように泣き始めた。
「緩みきったお漏らしまんこに栓をしてやったんだ、お礼にその卑しい勃起乳首を扱いてオナニーショーでもしてみせろ」
「い、いやぁ……」
「お前に嫌だという権利はない。本当に学習能力のない便器だ」
 尻を叩いて叱りつけ、ディルドを更に奥へと突き立てる。既に充分すぎるほど蕩けた肉は大喜びで道具を食んだが、生の男性器を挿入されることに拘る彼にはその快感が不愉快なのか、安達は嫌だ嫌だと繰り返して泣き続けた。もちろん買春男としては、相手の機嫌など取る必要はない。が、彼があまりに嫌がるので、自分はここで飴玉を咥えさせることに決めた。つるりとした尻を撫で回しながら、安達が答えやすそうな質問を考える。
「そんなに道具が嫌なのか」
「……っ、……や……」
「だったらこの助平穴に何をぶち込まれたいか言ってみろ」
 玩具によって貫かれぱっくり開いた蕾の縁を指でなぞってやると、貪欲な暴君はひくっとしゃくり上げた。
「…………おちんちん」
「誰の?」
「……おじさんの」
 良い返事だった。褒める代わりに、相手の尻に自身の性器を擦りつける。
「もうザーメンを零さないか」
 安達は何度も肯いた。
「おく、奥にだして、奥なら、おもらししない……」
「やっぱりお前は根っからの便器なんだな」
「んん、うーっ、あ、あああっ」
 吸いついてくる肉を引き剥がすようにして、玩具をゆっくりと引き抜く。安達はまた達したようで、悲鳴を上げたあとぐったりと床に崩れた。自分はカメラを手に取り、もう片方の手で彼の尻を掴んだ。
「お漏らしまんこにもう一度チンポを恵んでほしいなら、カメラに向かって自分のまんこがどうなっているか説明しろ」
 彼はもがくようにして身体を起こし、顔だけをこちらに向けた。肩で呼吸をしているあたり、いくらか消耗しているのかもしれない。だが、こちらを見据える硝子の瞳は、まだ足りないと訴えている。
「……お……おまんこ、ひらいてる……」
「中はどうなってる?」
「…………せ……えきかけられて……とろとろになって、る」
「それじゃあ、その開いてとろとろのまんこに生チンポが入っていく様子を実況してみせろ。少しでも黙ったら乳首をすり潰すから、そのつもりでな」
 繰り返し道具を使われたせいでやや機嫌を損ねていた安達だったが、この提案は気に入ったらしい。嫌がるふりをするのも忘れ、嬉々として仰向けになろうとする。先ほどは少し疲れているように見えたが、本当は全くそんなことはないのかもしれない。もしかしたら『買われた』のは彼ではなく自分の方なのではないか、ふとそんなふうに思った。自分好みのセックスをするために『おじさん』を買って侍らせるポテンシャルを、この『男子高生』は持ち合わせている。
「こっちに来い」
 ずっと床の上でセックスしていたら、身体が痛くなるだろう。そう考えて、横になりつつあった男の腕を掴み、ベッドに上がらせる。それから、こちらの様子が見やすいよう、彼の頭の下に枕を押し込んで寝かせた。いつも寝る前にしているように相手の額に唇を押しつけたくなるのを堪え、努めて冷たい声を出す。
「――股を開け」
 安達は膝を立て、控えめに開脚した。なかなかに恥じらいを感じさせる、趣のある仕種だった。が、これでは挿入できない。自分は彼の太腿に手をかけ、ぐいと押して恥部を開かせた。性器を濡れた穴に当てると、相手が身体を竦めるのがわかる。
「今から嵌め直してやるから、どうなっているか言え」
 亀頭の先端を潜り込ませれば、あとは簡単だった。カメラを片手で構え、わざと時間をかけて柔らかな粘膜をかき分けていく。安達は回らない舌で、懸命に状況を説明しようとした。
「ひっ……い、たい……ぁ、か、かたいのはいってくる……うぅっ……はやくいたいのやめて……いちばんふといところで、いりぐちひろげないで、いたいぃ……」
「なるほど、膣の奥までぶち込んでポルチオを抉ってほしいんだな。このマゾ便器が」
「んんぅ……、それやだ、ごりごりするの、や、……かすみのなかでおちんちんしごかないで……」
「中じゃなくて膣だ。同じところばかり擦られたくなかったら、膣がどうなっているかわかるように言え」
「ち、ちつ……っく……あ、あぁ、お、おじさんのおちんちんはめられてる……」
「そんなこと俺にもわかる」
「ぅー………………やっ、いたい、ちくびいたいっ」
 安達が沈黙したので、彼のシャツとベストをまとめてめくり、左の乳首を親指と人差し指の間に挟んで擦った。そろそろ胸を触らないと、話が違うと抗議されてしまうだろう。
「嫌ならきちんと説明しろ。まったく、薄っぺらい身体をしているくせに乳首だけはぶくぶく肥らせやがって、下品な便器だ。このまま弄り続けたら、勃起乳首の先から白いのが出るんじゃないか。少し搾ってみるか」
「ひうぅ……でないぃ……おっぱいでないから、やめ……う、うぁああん」
「乳首じゃなくて尿道から何か漏らしたな。遂に本当に潮を吹くようになったのか」
「……わ……わかんな……、い、ぁ……う、うごかないでっ、おくだめっ、いま、ちつ、きゅって、し……ん、あ、あぁ、あーっ」
 乳首を嬲ってから奥を突いてやると、彼は全身を引き攣らせて達した。今度は幸いこちらに少し余裕があったので、相手の絶頂に引きずられず、よく締まる蕾の具合やねっとりとまとわりつく襞の柔らかさを味わいながら腰を振り続けた。オーガズムの最中に執拗に中を擦られるのはやはり辛いのか、安達は突かれている間ずっと泣いていた。
「っ、も……やだ、いって……っ、かすみのちつに、しろいのだして……う、ぐ、ぅあ……、ね、むり、やめて、おまんこ、じゅくじゅくしてるから、ねんまく、やぶれちゃうからぁ……っ、ひぃっ」
 自分は最奥に嵌めると彼の顔を覗き込んだ。安達も涙で濡れた目でこちらをじっと見る。数秒、我々は互いの様子を探り合った。どうやら彼については、気持ちよすぎて辛いのでもっと辛くしてほしい、というのが正解らしい。その証拠に、ほっそりした脚はこちらの腰に絡んで離れない。わかったとばかりに軽く肯いてみせると、安達は硝子の瞳を輝かせた。彼も彼で、こちらのスタミナをはかった様子である。本当に恐ろしい男だ。
「だらしないお漏らしまんこが精液を零さないように、奥に中出ししてほしいそうだが、さっきみたいに尿道がお漏らしするようじゃ、何処にザーメンぶちまけても変わらないな」
 言いながら、相手の性器を強く握る。
「最後はまんこによく冷えたビール瓶をぶち込んで、チンポの掃除ついでにおじさんの精子を喉で吸い取ってもらおうか。その助平な尿道からどんな汁が出てくるか、楽しみだな」
「うーっ、やだ、やだっ」
「それなら俺が満足するまで便器らしくまんこを締めて、デカマラで串刺しにされてひぃひぃ泣いてる可愛い顔をカメラに映してもらえ」
「いや、いやぁ……」
 安達は涙を零しながら嫌がったが、カメラに顔を向け、レンズに視線を合わせた。
「まんこが緩い、これじゃいつまでたっても射精できないからもっと締めろ。ザーメンを奥の奥に注がれて、公衆便所らしくボテ腹になりたいんだろう?」
 相変わらず萎えたままの彼の性器を解放し、代わりに白い腹を痴漢じみた手つきで撫で回す。すると肌の下で腹筋が収縮するのが感じ取れた。
「あ……ぁ……、……」
 微かな喘ぎ声が、半開きの口から零れる。思わずカメラを放り出し、その唇に吸いついた。相手の身体の奥に自身の性器を突き立て緩やかに揺さぶりながら、滑らかな舌に自分の舌を擦りつけ、上と下の粘膜を同時に味わう。安達はこちらの背中に手を回し、暫くの間耐えていたが、途中で再び絶頂を迎えた。力を失った腕がシーツの上に崩れるように落ちて、痛々しいほど細い吐息が空気に溶ける。ぐったりした身体の中に精液を注ぐべく、自分は相手の舌を貪るのをやめた。安達の腰を掴み、自らの腰へ数回強く打ちつけるようにぶつけると、彼の性器は再び液体を漏らした。可哀想なほどいやらしい男だ。
「何て言えばいいか、わかるな?」
「……か……かすみのおべんきおまんこに……せいえき……めぐんで……おなかおっきくさせてください……」
「可澄は本当にいい子だな。世界一可愛い」
「……ん」
 最後は買春男らしくない台詞になってしまったが、安達は褒められて悪い気がしなかったのか、こちらに向かって律儀に肯いてみせた。せっかくなので両方の乳首を摘みながら、自分はたっぷりと射精した。 



 シャワーを浴びたあと、二人でソファに座り、コーヒーを飲んだ。安達はテーブルに置かれたカメラを手に取り、軽く首を傾げた。
「消したんですか?」
 先ほど撮影した映像のことを言っているらしい。もしや見てみたかったのだろうか。
「世の中、何が起こるかわからないからな」
 安達は少しの間、考えるような顔をした。
「……それもそうですね。今度は最初のときみたいに鏡を使いましょう。入っているところが見たいです」
 自分は無言で肯いた。もう彼が何を言い出しても驚かない自信があった。恐らくその自信は数日もたたぬうちに予想外の提案によって跡形もなく打ち砕かれる運命にあるのだろうが、少なくとも今日のところはどれほどろくでもない要望を出されても驚かない気がした。
「お前は制服がよく似合う。また着てくれないか」
「…………いいですよ。樋川さんもおじさん役がとても上手でした」
 褒めているのかいないのか、よくわからない発言だった。しかし上手だと言われ、単純な喜びが勝った。
「今夜は何でも可澄の食べたいものを作ろう」
 髪を撫でてそう告げると、安達は微笑した。
「……樋川さんは可愛いですね」
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