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墜落と再臨
第8章 第一創造者の真意
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エターナル・ヴォイドが現れた瞬間、空気が氷点下まで冷え込んだような錯覚に陥った。彼女の放つ威圧感は、リュウジとは比較にならないほど強烈だった。
しかし、僕は性急に行動することを避けた。相手が何を考えているのか、まずはその真意を探る必要がある。
「待ってください」
僕は仲間たちを制して、エターナル・ヴォイドに向かって声をかけた。
「いきなり戦いを始める前に、話をしませんか」
エターナル・ヴォイドが僕を見下ろした。その瞳には深い軽蔑が宿っている。
「話? 虫けらが神に向かって何を話すというのだ」
「あなたが第一創造者、エターナル・ヴォイドさんですね」
僕は敬意を込めて言った。
「この世界の基盤を作り上げた、偉大な創造者として敬意を表します」
エターナル・ヴォイドの表情が微かに変わった。驚きが一瞬よぎったが、すぐに元の冷たい表情に戻る。
「敬意だと? 口先だけの言葉など聞き飽きた」
「いえ、本心です」
僕は一歩前に出た。
「あなたがいなければ、この美しい世界は存在しませんでした。リテラ王国も、構文魔法も、全てあなたの功績です」
リュウジが僕の意図を理解して頷いた。
「その通りだ。俺がこの世界に魅力を感じたのも、お前が作り上げた素晴らしい基盤があったからだ」
エターナル・ヴォイドは二人を見比べた。
「美辞麗句で私を騙そうとでも?」
「騙すつもりはありません」
僕は率直に答えた。
「ただ、あなたがなぜこの世界を破壊しようとするのか、その理由を知りたいのです」
エリシアも勇気を出して前に進んだ。
「私たちには、あなたに対して何か悪いことをしたでしょうか?」
エターナル・ヴォイドの視線がエリシアに向けられた。その瞬間、彼女の表情に複雑な感情が浮かんだ。
「お前は……」
彼女は手を伸ばしかけて、慌てて引っ込めた。
「いや、違う。お前は私の知っているエリシアではない」
「私の知っている?」
エリシアが困惑した。
「あなたは私を知っているのですか?」
エターナル・ヴォイドの目に、一瞬だけ悲しみがよぎった。
「知っている。お前の原型を作ったのは、この私だからな」
僕は驚愕した。エリシアの原型は第一創造者が作ったキャラクターだったのか。
「でも、今のお前は違う」
エターナル・ヴォイドの声に苦々しさが混じった。
「私が作ったエリシアは、もっと純粋で、もっと無垢だった。今のお前は……汚れている」
「汚れている?」
エリシアが傷ついた表情を浮かべた。
「私の何が汚れているというのですか?」
「感情だ」
エターナル・ヴォイドが冷たく言い放った。
「私が作った時のお前は、完璧な人形だった。美しく、従順で、創造者への絶対的な愛情を持っていた。だが今のお前は、自分の意志を持ち、創造者に逆らうことさえする」
僕は理解し始めた。エターナル・ヴォイドは、キャラクターたちが自立することを嫌悪しているのだ。
「それは汚れではありません」
カイルが怒りを込めて言った。
「それは成長だ。俺たちが人間らしくなったということだ」
「人間らしく?」
エターナル・ヴォイドが嘲笑した。
「お前たちは人間ではない。私が作った作品の一部に過ぎん」
グランベル先生が杖を地面に突いた。
「エターナル・ヴォイド、あなたは根本的に間違っている」
「何だと、老いぼれめ」
「創作物が創作者の手を離れ、独立した存在になることは、創作の究極の成功ではないか」
先生の言葉に、エターナル・ヴォイドの表情が動揺した。
「成功? ばかを言うな。私の作品が勝手に変化することなど、許されるものか」
「なぜ許されないのですか?」
僕は問いかけた。
「あなたの創造した世界で、住民たちが幸せに生きている。それは創作者として最も誇らしいことではないでしょうか?」
エターナル・ヴォイドの拳が震えた。
「幸せ……? それが幸せだというのか?」
彼女の声に、今まで聞いたことのない感情が込められていた。
「私が心血を注いで作り上げた完璧な世界を、後から来た者たちが勝手に改変し、私の意図とは違う方向に発展させることが?」
僕は彼女の本音を聞いたような気がした。
「あなたは、自分の作品を愛しているのですね」
「愛している?」
エターナル・ヴォイドが僕を睨んだ。
「当然だ。私はこの世界の全てを愛している。だからこそ、汚されることを許せないのだ」
「汚されているのではありません」
エリシアが涙を浮かべながら言った。
「私たちは、あなたの作品を大切にしています。あなたが作ってくださった世界で、精一杯生きています」
「精一杯?」
エターナル・ヴォイドの声が震えた。
「お前たちは私の設定を無視し、勝手な行動を取っている。それが大切にしているということか?」
リュウジが口を開いた。
「エターナル・ヴォイド、お前も創作者なら分かるはずだ」
「何を?」
「作品は、作者の手を離れた瞬間から独立した生命を持つということを」
リュウジの言葉に、エターナル・ヴォイドの表情が複雑に変わった。
「お前も裏切るのか、リュウジ」
「裏切りではない」
リュウジは首を振った。
「これは成長だ。俺たちの作品が、俺たちの想像を超えて発展しているということだ」
エターナル・ヴォイドは一人一人の顔を見回した。その瞳に、迷いが生まれているのが見て取れた。
「私は……私は間違っているというのか?」
「間違っているとは言いません」
僕は慎重に言葉を選んだ。
「ただ、見方を変えてみてはいかがでしょうか」
「見方を?」
「あなたの作品が、あなたの期待を超えて成長したと考えてみてください」
僕は広場を見回した。
「この世界で生きる人々は、確かにあなたの設定から逸脱しているかもしれません。でも、それは彼らがあなたの創造した基盤の上で、自分なりの人生を築いているということです」
エターナル・ヴォイドが口を開きかけて、閉じた。
「それに」
エリシアが続けた。
「私たちがどれだけ変わったとしても、あなたが私たちの根源であることに変わりはありません。私たちの中には、確実にあなたの愛情が宿っています」
エターナル・ヴォイドの目から、一粒の涙が流れ落ちた。
「愛情……そうだ、私は愛していた。この世界も、キャラクターたちも、全てを」
彼女は手で顔を覆った。
「だからこそ、変化することが恐ろしかった。私の知らない方向に発展することが、許せなかった」
カイルが優しく言った。
「変化を恐れる必要はない。俺たちは、あんたの子供みたいなものだろう? 子供が親の期待を超えて成長するのは、喜ばしいことじゃないか」
エターナル・ヴォイドが顔を上げた。その表情には、もう冷たさはなかった。
「子供……そうかもしれない」
彼女は深いため息をついた。
「私は愚かだった。自分の所有物だと思い込み、コントロールしようとしていた」
グランベル先生が頷いた。
「気づくのに遅すぎるということはありません」
「しかし……」
エターナル・ヴォイドが躊躇した。
「私はもう、この世界の創造者として必要な存在ではないのではないか?」
「そんなことはありません」
僕は強く否定した。
「あなたは永遠に、この世界の母なる存在です。誰もその地位を奪うことはできません」
「母なる存在……」
エターナル・ヴォイドが呟いた。
「私は母親になったことがない。母親とは、どのようなものなのだろうか」
エリシアが彼女に近づいた。
「母親は、子供を無条件で愛し、見守り、支えてくれる存在です」
「無条件で……」
「はい。たとえ子供が期待と違う道を歩んでも、その選択を尊重し、応援してくれる存在です」
エターナル・ヴォイドがエリシアの手を取った。
「お前は……私の娘のようなものか」
「もしあなたがそう思ってくださるなら」
エリシアが微笑んだ。
「私はあなたを母のように慕いたいと思います」
エターナル・ヴォイドの目から、今度は喜びの涙が流れた。
「ありがとう……ありがとう、エリシア」
彼女は他の皆も見回した。
「みんな……私を許してくれるか?」
「許すも何も」
カイルが笑った。
「家族に許すも許さないもないだろう」
リュウジも頷いた。
「俺たちは皆、同じ世界を愛する仲間だ」
グランベル先生が杖を振ると、空に『和解』『家族』『愛』という文字が光った。
エターナル・ヴォイドは破壊の魔法を解除し、代わりに修復の魔法を発動させた。街に散らばっていた歪みが元に戻り、人々の姿が戻ってくる。
「これで終わりですね」
僕がほっとして言った。
しかし、エターナル・ヴォイドが首を振った。
「いや、まだ終わりではない」
「え?」
「私とリュウジが和解しても、根本的な問題は解決していない」
彼女は空を見上げた。
「この世界は依然として不安定だ。三人の創造者が関わったことで、設定に矛盾が生じている」
僕は精霊の警告を思い出した。三つの選択肢。修復、再構築、放棄。
「どうすればいいのでしょうか?」
「それを決めるのは、お前たちだ」
エターナル・ヴォイドが僕たちを見回した。
「創造者だけでなく、住民の意見も聞かせてもらいたい。この世界の未来を、みんなで決めよう」
僕は仲間たちと顔を見合わせた。ついに、運命の選択の時が来たのだ。
この世界をどうするか。その答えは、僕たち全員で見つけなければならない。
しかし、僕は性急に行動することを避けた。相手が何を考えているのか、まずはその真意を探る必要がある。
「待ってください」
僕は仲間たちを制して、エターナル・ヴォイドに向かって声をかけた。
「いきなり戦いを始める前に、話をしませんか」
エターナル・ヴォイドが僕を見下ろした。その瞳には深い軽蔑が宿っている。
「話? 虫けらが神に向かって何を話すというのだ」
「あなたが第一創造者、エターナル・ヴォイドさんですね」
僕は敬意を込めて言った。
「この世界の基盤を作り上げた、偉大な創造者として敬意を表します」
エターナル・ヴォイドの表情が微かに変わった。驚きが一瞬よぎったが、すぐに元の冷たい表情に戻る。
「敬意だと? 口先だけの言葉など聞き飽きた」
「いえ、本心です」
僕は一歩前に出た。
「あなたがいなければ、この美しい世界は存在しませんでした。リテラ王国も、構文魔法も、全てあなたの功績です」
リュウジが僕の意図を理解して頷いた。
「その通りだ。俺がこの世界に魅力を感じたのも、お前が作り上げた素晴らしい基盤があったからだ」
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僕は率直に答えた。
「ただ、あなたがなぜこの世界を破壊しようとするのか、その理由を知りたいのです」
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「私たちには、あなたに対して何か悪いことをしたでしょうか?」
エターナル・ヴォイドの視線がエリシアに向けられた。その瞬間、彼女の表情に複雑な感情が浮かんだ。
「お前は……」
彼女は手を伸ばしかけて、慌てて引っ込めた。
「いや、違う。お前は私の知っているエリシアではない」
「私の知っている?」
エリシアが困惑した。
「あなたは私を知っているのですか?」
エターナル・ヴォイドの目に、一瞬だけ悲しみがよぎった。
「知っている。お前の原型を作ったのは、この私だからな」
僕は驚愕した。エリシアの原型は第一創造者が作ったキャラクターだったのか。
「でも、今のお前は違う」
エターナル・ヴォイドの声に苦々しさが混じった。
「私が作ったエリシアは、もっと純粋で、もっと無垢だった。今のお前は……汚れている」
「汚れている?」
エリシアが傷ついた表情を浮かべた。
「私の何が汚れているというのですか?」
「感情だ」
エターナル・ヴォイドが冷たく言い放った。
「私が作った時のお前は、完璧な人形だった。美しく、従順で、創造者への絶対的な愛情を持っていた。だが今のお前は、自分の意志を持ち、創造者に逆らうことさえする」
僕は理解し始めた。エターナル・ヴォイドは、キャラクターたちが自立することを嫌悪しているのだ。
「それは汚れではありません」
カイルが怒りを込めて言った。
「それは成長だ。俺たちが人間らしくなったということだ」
「人間らしく?」
エターナル・ヴォイドが嘲笑した。
「お前たちは人間ではない。私が作った作品の一部に過ぎん」
グランベル先生が杖を地面に突いた。
「エターナル・ヴォイド、あなたは根本的に間違っている」
「何だと、老いぼれめ」
「創作物が創作者の手を離れ、独立した存在になることは、創作の究極の成功ではないか」
先生の言葉に、エターナル・ヴォイドの表情が動揺した。
「成功? ばかを言うな。私の作品が勝手に変化することなど、許されるものか」
「なぜ許されないのですか?」
僕は問いかけた。
「あなたの創造した世界で、住民たちが幸せに生きている。それは創作者として最も誇らしいことではないでしょうか?」
エターナル・ヴォイドの拳が震えた。
「幸せ……? それが幸せだというのか?」
彼女の声に、今まで聞いたことのない感情が込められていた。
「私が心血を注いで作り上げた完璧な世界を、後から来た者たちが勝手に改変し、私の意図とは違う方向に発展させることが?」
僕は彼女の本音を聞いたような気がした。
「あなたは、自分の作品を愛しているのですね」
「愛している?」
エターナル・ヴォイドが僕を睨んだ。
「当然だ。私はこの世界の全てを愛している。だからこそ、汚されることを許せないのだ」
「汚されているのではありません」
エリシアが涙を浮かべながら言った。
「私たちは、あなたの作品を大切にしています。あなたが作ってくださった世界で、精一杯生きています」
「精一杯?」
エターナル・ヴォイドの声が震えた。
「お前たちは私の設定を無視し、勝手な行動を取っている。それが大切にしているということか?」
リュウジが口を開いた。
「エターナル・ヴォイド、お前も創作者なら分かるはずだ」
「何を?」
「作品は、作者の手を離れた瞬間から独立した生命を持つということを」
リュウジの言葉に、エターナル・ヴォイドの表情が複雑に変わった。
「お前も裏切るのか、リュウジ」
「裏切りではない」
リュウジは首を振った。
「これは成長だ。俺たちの作品が、俺たちの想像を超えて発展しているということだ」
エターナル・ヴォイドは一人一人の顔を見回した。その瞳に、迷いが生まれているのが見て取れた。
「私は……私は間違っているというのか?」
「間違っているとは言いません」
僕は慎重に言葉を選んだ。
「ただ、見方を変えてみてはいかがでしょうか」
「見方を?」
「あなたの作品が、あなたの期待を超えて成長したと考えてみてください」
僕は広場を見回した。
「この世界で生きる人々は、確かにあなたの設定から逸脱しているかもしれません。でも、それは彼らがあなたの創造した基盤の上で、自分なりの人生を築いているということです」
エターナル・ヴォイドが口を開きかけて、閉じた。
「それに」
エリシアが続けた。
「私たちがどれだけ変わったとしても、あなたが私たちの根源であることに変わりはありません。私たちの中には、確実にあなたの愛情が宿っています」
エターナル・ヴォイドの目から、一粒の涙が流れ落ちた。
「愛情……そうだ、私は愛していた。この世界も、キャラクターたちも、全てを」
彼女は手で顔を覆った。
「だからこそ、変化することが恐ろしかった。私の知らない方向に発展することが、許せなかった」
カイルが優しく言った。
「変化を恐れる必要はない。俺たちは、あんたの子供みたいなものだろう? 子供が親の期待を超えて成長するのは、喜ばしいことじゃないか」
エターナル・ヴォイドが顔を上げた。その表情には、もう冷たさはなかった。
「子供……そうかもしれない」
彼女は深いため息をついた。
「私は愚かだった。自分の所有物だと思い込み、コントロールしようとしていた」
グランベル先生が頷いた。
「気づくのに遅すぎるということはありません」
「しかし……」
エターナル・ヴォイドが躊躇した。
「私はもう、この世界の創造者として必要な存在ではないのではないか?」
「そんなことはありません」
僕は強く否定した。
「あなたは永遠に、この世界の母なる存在です。誰もその地位を奪うことはできません」
「母なる存在……」
エターナル・ヴォイドが呟いた。
「私は母親になったことがない。母親とは、どのようなものなのだろうか」
エリシアが彼女に近づいた。
「母親は、子供を無条件で愛し、見守り、支えてくれる存在です」
「無条件で……」
「はい。たとえ子供が期待と違う道を歩んでも、その選択を尊重し、応援してくれる存在です」
エターナル・ヴォイドがエリシアの手を取った。
「お前は……私の娘のようなものか」
「もしあなたがそう思ってくださるなら」
エリシアが微笑んだ。
「私はあなたを母のように慕いたいと思います」
エターナル・ヴォイドの目から、今度は喜びの涙が流れた。
「ありがとう……ありがとう、エリシア」
彼女は他の皆も見回した。
「みんな……私を許してくれるか?」
「許すも何も」
カイルが笑った。
「家族に許すも許さないもないだろう」
リュウジも頷いた。
「俺たちは皆、同じ世界を愛する仲間だ」
グランベル先生が杖を振ると、空に『和解』『家族』『愛』という文字が光った。
エターナル・ヴォイドは破壊の魔法を解除し、代わりに修復の魔法を発動させた。街に散らばっていた歪みが元に戻り、人々の姿が戻ってくる。
「これで終わりですね」
僕がほっとして言った。
しかし、エターナル・ヴォイドが首を振った。
「いや、まだ終わりではない」
「え?」
「私とリュウジが和解しても、根本的な問題は解決していない」
彼女は空を見上げた。
「この世界は依然として不安定だ。三人の創造者が関わったことで、設定に矛盾が生じている」
僕は精霊の警告を思い出した。三つの選択肢。修復、再構築、放棄。
「どうすればいいのでしょうか?」
「それを決めるのは、お前たちだ」
エターナル・ヴォイドが僕たちを見回した。
「創造者だけでなく、住民の意見も聞かせてもらいたい。この世界の未来を、みんなで決めよう」
僕は仲間たちと顔を見合わせた。ついに、運命の選択の時が来たのだ。
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