言葉がチートスキルになった世界で、僕だけが黙示録を書き換える破神構文。創造者と被造者の黙示録

みにぶた🐽

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墜落と再臨

第10章  追放される神々

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 投票が始まった。

 マルクス・ヴェリタスが中央に立ち、選択肢を読み上げた。

「第一案:修復。現状を維持したまま世界の亀裂を塞ぐ」

 群衆の一部が頷いた。

「第二案:再構築。世界を一度破壊し、完全に作り直す」

 ざわめきが起こった。記憶を失うことへの恐怖が見て取れる。

「第三案:放棄。世界を自然に崩壊させる」

 これには誰も反応しなかった。

「第四案:新体制。住民主導で世界を運営する」

 若い世代から支持の声が上がった。

「そして最後に……」

 マルクスが一瞬躊躇した。

「第五案:創造者追放。三人の創造者をこの世界から追放し、我々だけで世界を維持する」

 広場が静まり返った。

 僕の心臓が激しく鼓動した。まさか、そんな選択肢が出るとは思わなかった。

 エリシアが僕の手を握った。

「そんな……」

 カイルも愕然としていた。

「追放って、どういうことだ?」

 マルクスが説明した。

「創造者たちを元の世界に送り返し、二度とこの世界に干渉できないようにするということだ」

 群衆の中から声が上がった。

「それは……あまりにも酷いのではないか?」

 老婆が首を振った。

「確かに彼らは我々を創造してくれた。恩人じゃ」

 しかし、あの青年が再び前に出た。

「恩人? 冗談じゃない」

 彼の瞳には、まだ怒りが燃えている。

「俺たちを苦しめたのも、混乱させたのも、全部こいつらのせいだ」

 別の男性が同調した。

「そうだ。創造者がいる限り、俺たちは永遠に『作り物』扱いされ続ける」

 若い女性も頷いた。

「自立するためには、親から離れなければならない」

 僕は彼らの気持ちが痛いほど分かった。確かに、創造者がいる限り、彼らは完全に独立した存在にはなれないのかもしれない。

 エターナル・ヴォイドが前に出た。

「待て」

 彼女の声に、群衆が注目した。

「お前たちは、我々を追放した後、本当に一人でやっていけるのか?」

 青年が鼻で笑った。

「上等だ。やってやろうじゃないか」

「世界の維持は、そう簡単ではない」

 リュウジが警告した。

「構文魔法の根幹、文字の精霊との調和、全て創造者の力に依存している部分がある」

 マルクスが冷静に答えた。

「それは学習すればよい。我々には知恵がある」

 グランベル先生が杖を突いた。

「皆の衆、よく考えるのじゃ。創造者たちを追放すれば、確かに独立は得られるかもしれん。しかし、同時に多くのものを失うことにもなる」

「何を失うというのですか?」

 老婆が尋ねた。

 僕は答えた。

「僕たちとの関係です。エリシア、カイル……僕は君たちと離れたくない」

 エリシアの目に涙が浮かんだ。

「私も……私もアルカディア君と離れるなんて……」

 カイルも拳を握りしめた。

「俺たちは仲間じゃないのか?」

 しかし、群衆の中から厳しい声が上がった。

「感情に流されてはいけない」

 それは先ほどとは別の学者風の男性だった。

「確かに彼らは良い人々かもしれない。しかし、問題は彼らの存在そのものにある」

 男性は論理的に説明した。

「創造者がいる限り、我々は永遠に『被造者』の立場から抜け出せない。真の独立のためには、痛みを伴う別れが必要だ」

 群衆の中で議論が激しくなった。

 追放に賛成する声、反対する声、様々な意見が飛び交う。

 その時、一人の少女が前に出てきた。十歳ほどの可愛らしい子供だった。

「お姉ちゃんたち」

 少女がエリシアを見上げた。

「お姉ちゃんたちがいなくなったら、寂しい」

 エリシアがしゃがんで少女と目線を合わせた。

「私も寂しいわ。でも……」

 エリシアは涙を拭いながら微笑んだ。

「でも、あなたたちが自分の足で歩けるようになるためには、必要なことかもしれないの」

 僕は驚いた。エリシアが追放を受け入れようとしている。

「エリシア……」

「アルカディア君」

 エリシアが僕を振り返った。

「私たちは、いつまでも甘えていてはいけないのかもしれません」

 カイルも苦しそうに頷いた。

「俺も……俺も分かってきた。いつまでも保護者に頼っていては、本当の意味で大人になれない」

 グランベル先生が深いため息をついた。

「そうか……お前たちもそう考えるのか」

 僕は混乱していた。大切な仲間たちが、僕たちとの別れを受け入れようとしている。

 エターナル・ヴォイドが僕の肩に手を置いた。

「アルカディア、これが親というものなのかもしれないな」

「親?」

「子供が自立するために、自分から距離を置く。それが親の愛情だ」

 リュウジも頷いた。

「俺たちがいなくなれば、確かに彼らは完全に自由になれる」

 僕の心は引き裂かれそうだった。理性では理解できるが、感情が受け入れられない。

 その時、マルクスが声を上げた。

「それでは、投票を行う」

 広場に緊張が走った。

「修復案に賛成の方」

 数十人が手を上げた。

「再構築案に賛成の方」

 さらに少ない人数が手を上げた。

「放棄案に賛成の方」

 誰も手を上げなかった。

「新体制案に賛成の方」

 かなりの人数が手を上げた。

「そして……創造者追放案に賛成の方」

 僕は息を止めて見守った。

 ゆっくりと、一人、また一人と手が上がっていく。

 あの青年、学者風の男性、そして意外なことに、老婆も手を上げた。

「なぜ……」

 僕が老婆に尋ねると、彼女は悲しそうに微笑んだ。

「愛しているからこそじゃよ。鳥は、いつかは巣立たねばならん」

 最終的に、追放案が僅差で最多となった。

 マルクスが結果を発表した。

「創造者追放案、可決」

 広場に重い沈黙が流れた。

 僕は膝をついた。本当に、僕たちは追放されるのだ。

 エリシアが僕に駆け寄った。

「アルカディア君……」

 彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。

「本当にこれでよかったのでしょうか……」

 カイルも僕の隣にしゃがんだ。

「俺は……俺は後悔している」

 しかし、群衆の決定は覆らなかった。

 マルクスが厳粛に宣言した。

「三人の創造者に告ぐ。あなたたちは、今日をもってこの世界から追放される」

 エターナル・ヴォイドが魔法陣を描き始めた。

「世界間移動の魔法だ。元の世界への扉を開く」

 空中に光る門が現れた。その向こうには、現代世界の景色が見えている。

 僕は立ち上がって、仲間たちを見回した。

「みんな……」

 エリシアが僕に抱きついた。

「忘れません。絶対に忘れません」

 カイルも僕の手を握った。

「お前は俺の親友だ。永遠にな」

 グランベル先生が杖を差し出した。

「これを持って行きなさい。あなたたちの思い出として」

 僕は先生の杖を受け取った。

「ありがとうございました……全てに」

 リュウジが門に向かって歩いた。

「じゃあな、みんな。幸せに生きろよ」

 エターナル・ヴォイドも続いた。

「私の子供たちよ、立派に育ちなさい」

 僕が最後に振り返ると、広場の全員が僕たちを見送っていた。

 涙を流す者、手を振る者、申し訳なさそうに俯く者。

 様々な表情があったが、全員に共通していたのは、後ろめたさと決意だった。

 僕は最後にエリシアを見つめた。

「君のことを、永遠に愛している」

「私も……私もです」

 僕は門をくぐった。

 光に包まれ、意識が遠のいていく。

 最後に聞こえたのは、エリシアの泣き声だった。

 そして、僕は現代世界の自分のアパートで目を覚ました。

 パソコンの前に座った僕は、画面を見つめた。

 そこには、『破神戦記』と書かれたファイルがあった。

 しかし、もうそのファイルを開くことはできなかった。

 世界への扉は、完全に閉ざされていたのだ。

 僕は窓の外を見た。現代の街並みが広がっている。

 魔法も、構文術も、二つの月もない世界。

 でも、心の中には確かに残っていた。

 あの美しい世界での記憶と、大切な仲間たちとの思い出が。

 そして僕は誓った。

 いつか、必ず彼らのもとに帰ると。

 たとえどんな手段を使ってでも。
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