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反乱する物語
第6章 改変する構文
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僕たちは泣いている女子学生に詳しく話を聞いた。
「私の名前は早川ユイです」
彼女は制服の袖で涙を拭いながら説明した。
「最初は素敵だと思っていたんです。恋愛魔法のおかげで、誰もが理想の相手と結ばれるって……」
「最初は?」
エリシアが優しく尋ねた。
「でも、最近おかしくなってきたんです」
ユイの声が震えた。
「恋愛感情が異常に強くなって、みんなが狂ったように恋愛にのめり込むようになりました」
僕は眉をひそめた。
「具体的にはどのような症状ですか?」
「一目惚れが異常に激しくなって、ストーカー行為に発展したり……」
ユイが青ざめて続けた。
「逆に失恋の痛みも尋常じゃなくて、自傷行為をする生徒も出てきています」
これは深刻な問題だった。恋愛魔法が学生たちの感情制御能力を破綻させているのだ。
「恋愛魔法とは、具体的にどのようなシステムなのですか?」
グランベル先生が技術的な観点から質問した。
「各生徒に『恋愛適性値』が設定されていて、相性の良い相手同士を魔法的にマッチングするシステムです」
ユイが説明した。
「でも最近、その数値がどんどん高くなっていって……」
「数値が高くなる?」
黒田さんが興味深そうに身を乗り出した。
「はい。最初は穏やかな好意程度だったのが、今では『運命の人』レベルの強烈な恋愛感情になってしまうんです」
僕は理解し始めた。これは構文魔法の流入により、この世界の恋愛魔法システムが暴走しているのだ。
「システムの中核部分を見せてもらえませんか?」
僕は立ち上がった。
「魔法の構文を解析すれば、修正できるかもしれません」
「でも、それは学園の最重要機密で……」
ユイが戸惑った。
「生徒会長の許可が必要です」
「では、生徒会長に会わせてください」
カイルが剣の柄を握った。
「一刻も早く解決しなければ、被害が拡大する」
ユイは僕たちを学園の中央棟に案内してくれた。
廊下を歩いていると、異様な光景が目に入った。
ある教室では、男子学生が一人の女子学生を囲んで争っている。
別の教室では、女子学生が机に突っ伏して激しく泣いている。
保健室からは、看護師の慌てた声が聞こえてくる。
「これは予想以上に深刻ですね」
エリシアが心配そうに呟いた。
「ええ。早急に対処しなければ」
僕も焦りを感じていた。
生徒会室に到着すると、そこには一人の美しい女子学生が座っていた。
長い黒髪を後ろで束ね、知的な眼鏡をかけている。制服も完璧に着こなし、まさに理想的な生徒会長という印象だった。
「お疲れ様です、石川会長」
ユイが丁寧に挨拶した。
「こちらの方々が、学園の問題を解決してくださるという……」
「石川麗奈です」
生徒会長が僕たちを見回した。
「お話は伺っています。リテラ王国からの調停団の皆様ですね」
「はい。恋愛魔法システムの暴走を止めるために来ました」
僕は率直に説明した。
「システムの中核部分を調査させていただけませんか?」
石川会長の表情が曇った。
「それは……困難です」
「なぜですか?」
黒田さんが問い詰めた。
「システムの管理者であるサクラ・ブロッサム先生が、現在行方不明なのです」
サクラ・ブロッサム。山本凛さんの異世界での名前だった。
「行方不明?」
僕は驚いた。
「いつから?」
「一週間前からです」
石川会長が心配そうに答えた。
「恋愛魔法の暴走が始まったのと同じ時期に、先生が姿を消されました」
これは偶然ではないだろう。山本凛さんは、自分の世界で起こっている問題を把握して、何らかの対策を講じようとしているのかもしれない。
「サクラ先生の研究室を見せてもらえませんか?」
僕は提案した。
「手がかりがあるかもしれません」
「分かりました」
石川会長が立ち上がった。
「ただし、研究室は最重要機密区域です。部外者の立ち入りは本来禁止されています」
「緊急事態です」
グランベル先生が説得した。
「生徒たちの安全が最優先でしょう」
研究室は学園の地下にあった。扉には複雑な魔法的錠前が施されている。
「これは……」
僕は錠前を調べた。
「構文魔法と恋愛魔法の混合システムですね」
僕は慎重に錠前の構文を解析した。
「『愛する者のみに道を開け』……なるほど、純粋な愛情を持つ者でなければ開かない仕組みです」
エリシアが僕の隣に立った。
「一緒に開けてみましょう」
僕たちは手を繋いで、扉に向かって呪文を唱えた。
「『真実の愛、我らを導け』」
扉がゆっくりと開いた。
研究室の中は、まさに魔法工学の最先端といった雰囲気だった。
壁一面に魔法陣が描かれ、中央には巨大な水晶球が浮かんでいる。その周りを無数の数式と構文が飛び交っている。
「これが恋愛魔法システムの中核ですね」
黒田さんが水晶球を調べた。
「予想以上に複雑です」
僕は壁の魔法陣を解読し始めた。
「基本的な恋愛適性マッチングから……感情増幅機能……相性度計算……」
しかし、途中で異常な構文を発見した。
「これは何でしょうか?」
僕が指差した部分には、他の構文とは明らかに異質な文字列が刻まれていた。
「『永遠の愛、決して失われることなく』『理想の恋人、常に完璧であれ』『恋愛の痛み、存在してはならず』」
グランベル先生が読み上げた。
「これらの構文が、システムの暴走を引き起こしているようですね」
「でも、これらの構文は後から追加されたもののようです」
エリシアが気づいた。
「文字の色や魔力の波長が、他の部分と違います」
僕は理解した。
「サクラ先生が、システムを改良しようとして追加した構文が、逆に暴走の原因になったのです」
「なぜそんなことを?」
カイルが首をひそめた。
「恐らく、生徒たちをより幸せにしようとしたのでしょう」
僕は推測した。
「『恋愛の痛みをなくしたい』『理想的な恋愛を実現させたい』という善意から」
しかし、その善意が裏目に出てしまった。感情の自然な起伏を奪い、人工的な恋愛感情を強制することで、学生たちの心を歪めてしまったのだ。
「修正は可能でしょうか?」
石川会長が不安そうに尋ねた。
「はい」
僕は自信を持って答えた。
「問題のある構文を除去すれば、システムは正常に戻るはずです」
僕は水晶球に手をかざした。
「まず、『永遠の愛』の構文を修正します」
「『永遠の愛、決して失われることなく』を『自然な愛、時と共に育まれん』に変更」
水晶球が青く光った。システムが修正を受け入れたようだ。
「次に、『理想の恋人』の構文です」
「『理想の恋人、常に完璧であれ』を『真実の恋人、欠点も含めて愛されん』に変更」
今度は緑色の光が放たれた。
「最後に、『恋愛の痛み』の構文を」
「『恋愛の痛み、存在してはならず』を『恋愛の痛み、成長の糧となれ』に変更」
水晶球が金色に輝いた。システムの修正が完了したのだ。
その瞬間、学園全体に柔らかい光が広がった。
「成功したようですね」
グランベル先生が安堵した。
僕たちは急いで学園の各所を確認して回った。
先ほどまで争っていた男子学生たちは、冷静さを取り戻して話し合いをしている。
泣いていた女子学生も、友人たちに慰められながら笑顔を見せていた。
保健室も静かになり、看護師が安心したような表情を浮かべていた。
「本当にありがとうございました」
石川会長が深くお辞儀をした。
「学園の皆が救われました」
「いえ、僕たちにとっても勉強になりました」
僕は正直な気持ちを述べた。
「善意であっても、自然な感情を操作することの危険性を学びました」
その時、研究室の奥から足音が聞こえてきた。
現れたのは、美しい女性だった。桜のような淡いピンクの髪に、優しい眼差しを持っている。
「サクラ先生!」
石川会長が驚いた。
「どこにいらしたのですか?」
「隠れていました」
サクラ・ブロッサム……山本凛さんが恥ずかしそうに答えた。
「自分のシステムが暴走して、学生たちを苦しめてしまったことが恥ずかしくて……」
彼女は僕たちの方を向いた。
「リテラ王国の皆様でしょうか?システムを修正していただき、ありがとうございました」
「山本さん……いえ、サクラ先生」
僕は彼女に近づいた。
「システムの修正は完了しましたが、根本的な問題について話し合いませんか?」
「根本的な問題?」
「はい。なぜあのような構文を追加されたのか、その理由をお聞かせください」
サクラ先生の表情が曇った。
「それは……」
彼女は長い間沈黙していたが、やがて口を開いた。
「私は、現実世界で恋愛に失敗続きでした」
彼女の声が震えた。
「だからせめて、この世界の生徒たちには、純粋で美しい恋愛を体験させてあげたかったのです」
「お気持ちは分かります」
エリシアが優しく言った。
「でも、恋愛の痛みも含めて、それが人間の成長には必要なのではないでしょうか?」
「そうですね」
サクラ先生が涙を浮かべた。
「私は、自分の理想を生徒たちに押し付けていました」
僕は彼女の肩に手を置いた。
「大切なのは、これからです。生徒たちと一緒に、より良い学園を作っていきましょう」
「はい」
サクラ先生が微笑んだ。
「ありがとうございます」
その日の夕方、僕たちは学園の中庭で、生徒たちと一緒に問題の総括を行った。
「恋愛魔法システムは正常に戻りましたが、今後の運用について話し合いましょう」
石川会長が司会を務めた。
「生徒の皆さんの意見も聞かせてください」
一人の男子学生が手を上げた。
「僕は、恋愛魔法に頼りすぎていたと思います」
「確かに」
女子学生も同意した。
「自然な出会いや、時間をかけて育む関係の大切さを忘れていました」
サクラ先生が立ち上がった。
「生徒の皆さん、申し訳ありませんでした」
彼女は深くお辞儀をした。
「私の独りよがりな考えで、皆さんを苦しめてしまいました」
「先生」
早川ユイが前に出た。
「先生も完璧である必要はありません。一緒に学んでいきましょう」
生徒たちから温かい拍手が起こった。
僕は感動していた。この世界の住民たちは、創造者の失敗を責めるのではなく、共に成長していこうとしている。
「新しい恋愛魔法システムの運用方針を決めましょう」
僕が提案した。
「まず、システムの使用は完全に任意とします。使いたくない生徒は、自然な恋愛を選択できます」
「それは良いアイデアですね」
石川会長が賛成した。
「次に、システムを使用する場合でも、感情の強制的な操作は禁止します」
サクラ先生が続けた。
「相性の良い相手を紹介するだけに留め、実際の関係構築は生徒たち自身に委ねます」
「そして最も重要なのは」
エリシアが微笑んだ。
「失恋や恋愛の悩みも、人間にとって大切な経験だということです」
生徒たちが頷いた。
「これらの方針で、新しい桜咲学園を作っていきましょう」
僕は宣言した。
夜、僕たちは学園の屋上で星空を眺めていた。
「今日も良い解決ができましたね」
エリシアが満足そうに言った。
「ええ。でも、技術的な修正だけでは限界があることも分かりました」
僕は正直な感想を述べた。
「サクラ先生の心の問題を根本的に解決するには、もっと時間が必要でしょう」
「それも含めて、成長なのでしょうね」
黒田さんが星を見上げた。
「創造者も住民も、共に学んでいく」
カイルが剣を鞘に収めた。
「次はどこに向かうんだ?」
「星間連邦です」
僕は次の目的地を告げた。
「鈴木さん……ステラ・コスモスの世界で、時空航行システムの修復を行います」
「宇宙の世界ですか」
グランベル先生が興味深そうに言った。
「楽しみですね」
僕たちは再び世界間移動の魔法を準備した。
次の世界では、どんな問題が待っているのだろうか?
そして、僕の技術的な解決アプローチは、より複雑な問題にも通用するのだろうか?
星間連邦という未知の世界への期待と不安を胸に、僕たちは新たな冒険へと向かった。
しかし、僕はまだ気づいていなかった。
技術的な力に頼る解決方法が、やがて大きな代償を要求することになるということを。
そして、その代償が僕自身の存在に関わる問題であることを。
星空の向こうで、運命の歯車が静かに回り始めていた。
「私の名前は早川ユイです」
彼女は制服の袖で涙を拭いながら説明した。
「最初は素敵だと思っていたんです。恋愛魔法のおかげで、誰もが理想の相手と結ばれるって……」
「最初は?」
エリシアが優しく尋ねた。
「でも、最近おかしくなってきたんです」
ユイの声が震えた。
「恋愛感情が異常に強くなって、みんなが狂ったように恋愛にのめり込むようになりました」
僕は眉をひそめた。
「具体的にはどのような症状ですか?」
「一目惚れが異常に激しくなって、ストーカー行為に発展したり……」
ユイが青ざめて続けた。
「逆に失恋の痛みも尋常じゃなくて、自傷行為をする生徒も出てきています」
これは深刻な問題だった。恋愛魔法が学生たちの感情制御能力を破綻させているのだ。
「恋愛魔法とは、具体的にどのようなシステムなのですか?」
グランベル先生が技術的な観点から質問した。
「各生徒に『恋愛適性値』が設定されていて、相性の良い相手同士を魔法的にマッチングするシステムです」
ユイが説明した。
「でも最近、その数値がどんどん高くなっていって……」
「数値が高くなる?」
黒田さんが興味深そうに身を乗り出した。
「はい。最初は穏やかな好意程度だったのが、今では『運命の人』レベルの強烈な恋愛感情になってしまうんです」
僕は理解し始めた。これは構文魔法の流入により、この世界の恋愛魔法システムが暴走しているのだ。
「システムの中核部分を見せてもらえませんか?」
僕は立ち上がった。
「魔法の構文を解析すれば、修正できるかもしれません」
「でも、それは学園の最重要機密で……」
ユイが戸惑った。
「生徒会長の許可が必要です」
「では、生徒会長に会わせてください」
カイルが剣の柄を握った。
「一刻も早く解決しなければ、被害が拡大する」
ユイは僕たちを学園の中央棟に案内してくれた。
廊下を歩いていると、異様な光景が目に入った。
ある教室では、男子学生が一人の女子学生を囲んで争っている。
別の教室では、女子学生が机に突っ伏して激しく泣いている。
保健室からは、看護師の慌てた声が聞こえてくる。
「これは予想以上に深刻ですね」
エリシアが心配そうに呟いた。
「ええ。早急に対処しなければ」
僕も焦りを感じていた。
生徒会室に到着すると、そこには一人の美しい女子学生が座っていた。
長い黒髪を後ろで束ね、知的な眼鏡をかけている。制服も完璧に着こなし、まさに理想的な生徒会長という印象だった。
「お疲れ様です、石川会長」
ユイが丁寧に挨拶した。
「こちらの方々が、学園の問題を解決してくださるという……」
「石川麗奈です」
生徒会長が僕たちを見回した。
「お話は伺っています。リテラ王国からの調停団の皆様ですね」
「はい。恋愛魔法システムの暴走を止めるために来ました」
僕は率直に説明した。
「システムの中核部分を調査させていただけませんか?」
石川会長の表情が曇った。
「それは……困難です」
「なぜですか?」
黒田さんが問い詰めた。
「システムの管理者であるサクラ・ブロッサム先生が、現在行方不明なのです」
サクラ・ブロッサム。山本凛さんの異世界での名前だった。
「行方不明?」
僕は驚いた。
「いつから?」
「一週間前からです」
石川会長が心配そうに答えた。
「恋愛魔法の暴走が始まったのと同じ時期に、先生が姿を消されました」
これは偶然ではないだろう。山本凛さんは、自分の世界で起こっている問題を把握して、何らかの対策を講じようとしているのかもしれない。
「サクラ先生の研究室を見せてもらえませんか?」
僕は提案した。
「手がかりがあるかもしれません」
「分かりました」
石川会長が立ち上がった。
「ただし、研究室は最重要機密区域です。部外者の立ち入りは本来禁止されています」
「緊急事態です」
グランベル先生が説得した。
「生徒たちの安全が最優先でしょう」
研究室は学園の地下にあった。扉には複雑な魔法的錠前が施されている。
「これは……」
僕は錠前を調べた。
「構文魔法と恋愛魔法の混合システムですね」
僕は慎重に錠前の構文を解析した。
「『愛する者のみに道を開け』……なるほど、純粋な愛情を持つ者でなければ開かない仕組みです」
エリシアが僕の隣に立った。
「一緒に開けてみましょう」
僕たちは手を繋いで、扉に向かって呪文を唱えた。
「『真実の愛、我らを導け』」
扉がゆっくりと開いた。
研究室の中は、まさに魔法工学の最先端といった雰囲気だった。
壁一面に魔法陣が描かれ、中央には巨大な水晶球が浮かんでいる。その周りを無数の数式と構文が飛び交っている。
「これが恋愛魔法システムの中核ですね」
黒田さんが水晶球を調べた。
「予想以上に複雑です」
僕は壁の魔法陣を解読し始めた。
「基本的な恋愛適性マッチングから……感情増幅機能……相性度計算……」
しかし、途中で異常な構文を発見した。
「これは何でしょうか?」
僕が指差した部分には、他の構文とは明らかに異質な文字列が刻まれていた。
「『永遠の愛、決して失われることなく』『理想の恋人、常に完璧であれ』『恋愛の痛み、存在してはならず』」
グランベル先生が読み上げた。
「これらの構文が、システムの暴走を引き起こしているようですね」
「でも、これらの構文は後から追加されたもののようです」
エリシアが気づいた。
「文字の色や魔力の波長が、他の部分と違います」
僕は理解した。
「サクラ先生が、システムを改良しようとして追加した構文が、逆に暴走の原因になったのです」
「なぜそんなことを?」
カイルが首をひそめた。
「恐らく、生徒たちをより幸せにしようとしたのでしょう」
僕は推測した。
「『恋愛の痛みをなくしたい』『理想的な恋愛を実現させたい』という善意から」
しかし、その善意が裏目に出てしまった。感情の自然な起伏を奪い、人工的な恋愛感情を強制することで、学生たちの心を歪めてしまったのだ。
「修正は可能でしょうか?」
石川会長が不安そうに尋ねた。
「はい」
僕は自信を持って答えた。
「問題のある構文を除去すれば、システムは正常に戻るはずです」
僕は水晶球に手をかざした。
「まず、『永遠の愛』の構文を修正します」
「『永遠の愛、決して失われることなく』を『自然な愛、時と共に育まれん』に変更」
水晶球が青く光った。システムが修正を受け入れたようだ。
「次に、『理想の恋人』の構文です」
「『理想の恋人、常に完璧であれ』を『真実の恋人、欠点も含めて愛されん』に変更」
今度は緑色の光が放たれた。
「最後に、『恋愛の痛み』の構文を」
「『恋愛の痛み、存在してはならず』を『恋愛の痛み、成長の糧となれ』に変更」
水晶球が金色に輝いた。システムの修正が完了したのだ。
その瞬間、学園全体に柔らかい光が広がった。
「成功したようですね」
グランベル先生が安堵した。
僕たちは急いで学園の各所を確認して回った。
先ほどまで争っていた男子学生たちは、冷静さを取り戻して話し合いをしている。
泣いていた女子学生も、友人たちに慰められながら笑顔を見せていた。
保健室も静かになり、看護師が安心したような表情を浮かべていた。
「本当にありがとうございました」
石川会長が深くお辞儀をした。
「学園の皆が救われました」
「いえ、僕たちにとっても勉強になりました」
僕は正直な気持ちを述べた。
「善意であっても、自然な感情を操作することの危険性を学びました」
その時、研究室の奥から足音が聞こえてきた。
現れたのは、美しい女性だった。桜のような淡いピンクの髪に、優しい眼差しを持っている。
「サクラ先生!」
石川会長が驚いた。
「どこにいらしたのですか?」
「隠れていました」
サクラ・ブロッサム……山本凛さんが恥ずかしそうに答えた。
「自分のシステムが暴走して、学生たちを苦しめてしまったことが恥ずかしくて……」
彼女は僕たちの方を向いた。
「リテラ王国の皆様でしょうか?システムを修正していただき、ありがとうございました」
「山本さん……いえ、サクラ先生」
僕は彼女に近づいた。
「システムの修正は完了しましたが、根本的な問題について話し合いませんか?」
「根本的な問題?」
「はい。なぜあのような構文を追加されたのか、その理由をお聞かせください」
サクラ先生の表情が曇った。
「それは……」
彼女は長い間沈黙していたが、やがて口を開いた。
「私は、現実世界で恋愛に失敗続きでした」
彼女の声が震えた。
「だからせめて、この世界の生徒たちには、純粋で美しい恋愛を体験させてあげたかったのです」
「お気持ちは分かります」
エリシアが優しく言った。
「でも、恋愛の痛みも含めて、それが人間の成長には必要なのではないでしょうか?」
「そうですね」
サクラ先生が涙を浮かべた。
「私は、自分の理想を生徒たちに押し付けていました」
僕は彼女の肩に手を置いた。
「大切なのは、これからです。生徒たちと一緒に、より良い学園を作っていきましょう」
「はい」
サクラ先生が微笑んだ。
「ありがとうございます」
その日の夕方、僕たちは学園の中庭で、生徒たちと一緒に問題の総括を行った。
「恋愛魔法システムは正常に戻りましたが、今後の運用について話し合いましょう」
石川会長が司会を務めた。
「生徒の皆さんの意見も聞かせてください」
一人の男子学生が手を上げた。
「僕は、恋愛魔法に頼りすぎていたと思います」
「確かに」
女子学生も同意した。
「自然な出会いや、時間をかけて育む関係の大切さを忘れていました」
サクラ先生が立ち上がった。
「生徒の皆さん、申し訳ありませんでした」
彼女は深くお辞儀をした。
「私の独りよがりな考えで、皆さんを苦しめてしまいました」
「先生」
早川ユイが前に出た。
「先生も完璧である必要はありません。一緒に学んでいきましょう」
生徒たちから温かい拍手が起こった。
僕は感動していた。この世界の住民たちは、創造者の失敗を責めるのではなく、共に成長していこうとしている。
「新しい恋愛魔法システムの運用方針を決めましょう」
僕が提案した。
「まず、システムの使用は完全に任意とします。使いたくない生徒は、自然な恋愛を選択できます」
「それは良いアイデアですね」
石川会長が賛成した。
「次に、システムを使用する場合でも、感情の強制的な操作は禁止します」
サクラ先生が続けた。
「相性の良い相手を紹介するだけに留め、実際の関係構築は生徒たち自身に委ねます」
「そして最も重要なのは」
エリシアが微笑んだ。
「失恋や恋愛の悩みも、人間にとって大切な経験だということです」
生徒たちが頷いた。
「これらの方針で、新しい桜咲学園を作っていきましょう」
僕は宣言した。
夜、僕たちは学園の屋上で星空を眺めていた。
「今日も良い解決ができましたね」
エリシアが満足そうに言った。
「ええ。でも、技術的な修正だけでは限界があることも分かりました」
僕は正直な感想を述べた。
「サクラ先生の心の問題を根本的に解決するには、もっと時間が必要でしょう」
「それも含めて、成長なのでしょうね」
黒田さんが星を見上げた。
「創造者も住民も、共に学んでいく」
カイルが剣を鞘に収めた。
「次はどこに向かうんだ?」
「星間連邦です」
僕は次の目的地を告げた。
「鈴木さん……ステラ・コスモスの世界で、時空航行システムの修復を行います」
「宇宙の世界ですか」
グランベル先生が興味深そうに言った。
「楽しみですね」
僕たちは再び世界間移動の魔法を準備した。
次の世界では、どんな問題が待っているのだろうか?
そして、僕の技術的な解決アプローチは、より複雑な問題にも通用するのだろうか?
星間連邦という未知の世界への期待と不安を胸に、僕たちは新たな冒険へと向かった。
しかし、僕はまだ気づいていなかった。
技術的な力に頼る解決方法が、やがて大きな代償を要求することになるということを。
そして、その代償が僕自身の存在に関わる問題であることを。
星空の向こうで、運命の歯車が静かに回り始めていた。
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枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
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