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引き裂き、覆う
しおりを挟む司が帰ってきたと連絡を受けた劉はすぐさま慎と彗を連れて司の元へ駆けつけてた
そして驚愕する
つ、司様⁉︎そのお怪我は一体⁉︎
司はことの経緯を説明する
交渉は決裂し戦うことが決定してしまったこと、話し合いの場から出た瞬間に愛国心が強い男が斬りつけてきたこと
その話を聞いて彗は憤慨する
な、なんという事を⁉︎
鎖国派は何を考えているのか‼︎
彗の怒りは収まらない
彗、落ち着くんだ。司様の前だぞ?
慎が嗜める
落ち着いてなどいられるわけがない‼︎
皇家の若人が感情のまま戦いの火蓋を切り、子の州で開国派の代表の一人である司様に怪我を負わせるなど‼︎あってはならないことだ‼︎
彗は顔を真っ赤にしている
彗殿、どうか落ち着いて。私は大丈夫です。
司の言葉で彗は渋々ながら落ち着きを取り戻し、座った
…司様、そうなれば早急に…
劉が口を開く
ええ。
司は立ち上がる
今こそ、「この国の未来」を掴み取るときです‼︎早急に戦いの準備を‼︎……抜かりは許しません。
彼の鋭い目が三人を射抜く
御意‼︎
三人は強く返事をした
―――――
初めに戦いの火種が燻り出したのは「午」と「戌」であった
二つの州を繋ぐ関所を午側が勝手に閉じてしまったのだ
そして閉じられた関所を不審に思った戌側の関所を管轄している役人が見に行ったところ、狙撃され殺されてしまった
そのことに対して戌側は午側に対して「そちらからの宣戦布告とみなす」と伝え、戦いの火蓋が切って落とされようとしている
―戌の州―
(まさか、こんなにも早く戦いが始まってしまうとは…)
樹は暗い表情をする
戌の州と午の州は樹が当主になってから比較的良好な関係を築いてきただけに樹も落胆を隠せない
(しかし、やるしかない。このまま引き下がっては無意味に殺されてしまった役人にも申し訳ない。そして、この戦いの勝敗が今後の戦いの行末を左右すると言っても過言では無い‼︎)
樹は覚悟を決めた
(早めに決着を付けた方がいい。子の州の準備が整う前に。そうすれば午の州は地理的に孤立する)
樹は外界から手に入れた近代武器「ガトリング砲」を使うことを決めた
(寅や亥と比べれば午は兵の練度は落ちる。この武器の懐へ入ることはできないだろう。人海戦術もこちらのすぐ後ろに開国派の州が連なっている為に避けてくるはずだ)
樹は考えを巡らせる
―午の州―
なんてことを‼︎
響の怒声がこだまする
だれが「殺せ」などと命じた‼︎
近寄られた場合は威嚇射撃のみだと言ったはずだ‼︎
(午の州だけでは…開国派の州は戌の州の後ろに全て連なっている。子の州からの援軍はまだ期待できない。燿様はまだこんな戦いを経験などされていない‼︎自分の州の準備で手一杯だろう。そうなれば我らは孤立無縁も同じ‼︎だから最初の火蓋を切るようなことは避けたかったのに‼︎)
響は苦悶の表情になる
そんな二人の当主の思いを受けたように戦いが始まり、心の余裕の違いからか、戦いは瞬く間に戌の州が主導権を握っていく
(さあ、後は…響殿を捕らえるのみ。…早まらなければいいが…‼︎)
どうしても陣へと行く為には午の州の市街地を通る必要がある
その為に要らぬ争いごとが起こることが予想されるが、できるだけ民への被害を抑えるよう戌の軍には言い聞かせてある
そして樹は響の立てこもる陣へと向かう部隊の帰りを待った
そして―――
樹様‼︎捕縛部隊が戻ってきました‼︎
その知らせを受け樹は走った
部隊長‼︎
い、樹様‼︎
部隊の全員が頭を下げる
そんなことはいい‼︎響殿は⁉︎
………我らが到着した時には…申し訳ございません‼︎
…そ、そんな…
樹は驚愕する
彼の…周りの者達は…?
皆、響様と運命を共にしたものと思われます…
部隊長の声も苦しげだ
(なんてことだ…‼︎一番避けたかった…あなたが命を断つ必要など…どこにも‼︎ただやり方が…信じた道が違っただけ、この国を思っていた気持ちは一緒のはずだったのに‼︎)
樹はこれ以上ないほと悔しそうな顔をする
樹様。響様のご遺体の側にこちらが。
部隊長は手紙を二通差し出した
一通は樹宛、もう一通は…
豊殿宛………ですか。
(彼を…弟のように思っていたのなら…何故⁉︎)
そんな気持ちを抱えたまま樹は響からの手紙を開いた
――樹殿――
私が命を断つことの責任をあなたが感じることはない。
これは私なりの責任の取り方なのだ。
私の当主として選んだ道の誤りが無関係な命を奪い、午の州の民を戦火の恐怖に陥れ、結果として「国を守る」という責務さえ果たすことができない。そんな私を私自身が許すことなどできないのだ。私の命で何かが変わるとは思わない。このやり方しか知らぬ私はやはり「時代遅れ」なのだろう。
樹殿、もしあなた方が未来を掴んだとしたら、どうかこの国を今まで以上に強く美しい国へと導いてほしい。
外界にも負けない、しかし美しさは失わないそんな国を。
例え魂となってもこの国を思っている。―響―
(何故…何故‼︎)
樹は手紙を握り締め膝をついてしまった
――――
そして戌と午との戦いは戌の大勝利で幕を閉じた
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