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第1章:銀河創生編
第17話 外貨の介入
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世界が俺の「私有財産」となって一週間。
管理都市『ゴールディング』の朝は、かつてのどの時代よりも静かで、機能的だった。
民衆の頭上には、不可視のログとして『信用スコア』が明滅している。彼らの労働、消費、そして呼吸の一つ一つが、世界の帳簿にリアルタイムで刻まれる。
「……ソラ様。本日の債務不履行(未払い)発生率は、0.003%。前日比でさらに改善されました」
白亜の官邸。合理性の極致とも言える執務室で、エリーゼが監査報告書を読み上げる。
彼女の背後には、大陸全土の魔力流動、食料備蓄、そして「感情指数」までを数式化した黄金のホログラムが浮かんでいた。
「いい傾向だ。……だが、完璧すぎる秩序は、外側にいる連中には『商機』に見えるらしい」
俺は窓の外、遥か水平線の彼方を見据える。
俺が管理権限を握ったことで、他者の信仰や絶望を食い扶持にしてきた「外部資本」にとって、この大陸は魅力的な未開拓市場となった。
「……ソラ様。正門に、招かれざる『外貨』が到着。排除しますか?」
バルコニーの影から、ミィナが音もなく現れる。
彼女の瞳は今や、黄金の回路が走る「秩序の観測器」そのものだった。
「いや、通せ。……新しい市場を開拓しに来た営業マンを、門前払いするのは失礼だ」
*
正門。 そこに接舷したのは、白銀の装飾が施された巨大な魔導船舶。
中央大陸の最大宗教国家『聖教国セレスティア』の特使たちだ。彼らは「神」の直系を自称する、因果の元締めである。
「おお……なんと嘆かわしい。魂を数字で縛り、管理という名の鎖で繋ぐとは。愚かなる管理者よ、貴様が犯しているのは、神の全財産である『信仰』への重大な背任行為だ」
特使の長である枢機卿が、大仰に十字を切る。
彼の周囲からは、受給者の不安を煽り、依存させるための「無償の奇跡」が、甘い香りの霧となって漂い始めた。
「迷える子らよ、案ずるな。我がセレスティアの神は、代価など求めぬ。さあ、その不当な帳簿を捨て、無償の愛に跪きなさい」
枢機卿が手を広げる。
その瞬間、近くにいた市民の一人が、甘美な救済にフラリと引き寄せられそうになった。
「――ストップだ。その奇跡、関税を払っていないぞ」
俺の声が、空間そのものから響き渡る。
同時に、特使たちの周囲を『再建の盾』の縮小版が檻のように囲んだ。
「な、何者だ!? 神聖なる救済を邪魔するとは!」
「救済? いいえ、それは『超高利貸しの感情債務』です」
エリーゼが、俺の横で冷徹に告げる。 彼女の瞳には、枢機卿が放つ光の正体が、薄汚い契約書の束として見えていた。
「セレスティアの奇跡。それは、その場しのぎの治癒と引き換えに、受給者の未来の『信仰心』を数十年分、自動で引き落とす悪質なサブスクリプション。……違いますか?」
「き、貴様ら……神の慈悲をビジネスのように語るとは……!」
「ビジネスだ。この世界は俺の管理下にある。……ミィナ、徴収しろ」
「……了解」
ミィナが一歩踏み出す。 枢機卿が防御壁を張ろうとしたが、遅すぎた。
ミィナの指先が空間を弾くと、特使たちがまとっていた豪華な法衣や、船舶に積まれていた魔導触媒が、一瞬で「ただの布」と「ただの石」に分解された。
吸い上げられたエネルギーが、俺の手元の帳簿へと流れ込む。
『外貨介入を確認:聖教国セレスティア』
『不当融資(無償の奇跡)の試行を検知。全額を「過払い金」として没収しました』
『徴収完了:聖魔力 500,000ユニット、聖銀 200kg』
『警告。セレスティア本国より、大規模な「軍事的督促(十字軍)」の予兆を確認』
「……フン。案の定、不渡りを出した途端に暴力装置を動かすか」
俺は、腰を抜かした枢機卿を見下ろす。
「帰って教皇に伝えろ。この大陸に『無担保の救済』を持ち込むなら、その国ごと抵当に入れると」
「お、覚えておれ……! 神の怒りに、利息がつくと思えよ!」
捨て台詞を残し、特使たちは裸同然でボロ船へと逃げ帰っていった。
「……ソラ様。これで外海とも、本格的な取引(戦争)が始まりますね」
「ああ。内政は片付いた。これからは、世界規模の『企業買収(M&A)』の時間だ」
窓の外、水平線を見据える。
そこには、信仰、魔力、運命を不当に独占する、古い神々の利権構造が横たわっている。
俺の帳簿には、まだ数え切れないほどの白紙が残っている。そのすべてを、敵の破産宣告で埋め尽くしてやる。
管理都市『ゴールディング』の朝は、かつてのどの時代よりも静かで、機能的だった。
民衆の頭上には、不可視のログとして『信用スコア』が明滅している。彼らの労働、消費、そして呼吸の一つ一つが、世界の帳簿にリアルタイムで刻まれる。
「……ソラ様。本日の債務不履行(未払い)発生率は、0.003%。前日比でさらに改善されました」
白亜の官邸。合理性の極致とも言える執務室で、エリーゼが監査報告書を読み上げる。
彼女の背後には、大陸全土の魔力流動、食料備蓄、そして「感情指数」までを数式化した黄金のホログラムが浮かんでいた。
「いい傾向だ。……だが、完璧すぎる秩序は、外側にいる連中には『商機』に見えるらしい」
俺は窓の外、遥か水平線の彼方を見据える。
俺が管理権限を握ったことで、他者の信仰や絶望を食い扶持にしてきた「外部資本」にとって、この大陸は魅力的な未開拓市場となった。
「……ソラ様。正門に、招かれざる『外貨』が到着。排除しますか?」
バルコニーの影から、ミィナが音もなく現れる。
彼女の瞳は今や、黄金の回路が走る「秩序の観測器」そのものだった。
「いや、通せ。……新しい市場を開拓しに来た営業マンを、門前払いするのは失礼だ」
*
正門。 そこに接舷したのは、白銀の装飾が施された巨大な魔導船舶。
中央大陸の最大宗教国家『聖教国セレスティア』の特使たちだ。彼らは「神」の直系を自称する、因果の元締めである。
「おお……なんと嘆かわしい。魂を数字で縛り、管理という名の鎖で繋ぐとは。愚かなる管理者よ、貴様が犯しているのは、神の全財産である『信仰』への重大な背任行為だ」
特使の長である枢機卿が、大仰に十字を切る。
彼の周囲からは、受給者の不安を煽り、依存させるための「無償の奇跡」が、甘い香りの霧となって漂い始めた。
「迷える子らよ、案ずるな。我がセレスティアの神は、代価など求めぬ。さあ、その不当な帳簿を捨て、無償の愛に跪きなさい」
枢機卿が手を広げる。
その瞬間、近くにいた市民の一人が、甘美な救済にフラリと引き寄せられそうになった。
「――ストップだ。その奇跡、関税を払っていないぞ」
俺の声が、空間そのものから響き渡る。
同時に、特使たちの周囲を『再建の盾』の縮小版が檻のように囲んだ。
「な、何者だ!? 神聖なる救済を邪魔するとは!」
「救済? いいえ、それは『超高利貸しの感情債務』です」
エリーゼが、俺の横で冷徹に告げる。 彼女の瞳には、枢機卿が放つ光の正体が、薄汚い契約書の束として見えていた。
「セレスティアの奇跡。それは、その場しのぎの治癒と引き換えに、受給者の未来の『信仰心』を数十年分、自動で引き落とす悪質なサブスクリプション。……違いますか?」
「き、貴様ら……神の慈悲をビジネスのように語るとは……!」
「ビジネスだ。この世界は俺の管理下にある。……ミィナ、徴収しろ」
「……了解」
ミィナが一歩踏み出す。 枢機卿が防御壁を張ろうとしたが、遅すぎた。
ミィナの指先が空間を弾くと、特使たちがまとっていた豪華な法衣や、船舶に積まれていた魔導触媒が、一瞬で「ただの布」と「ただの石」に分解された。
吸い上げられたエネルギーが、俺の手元の帳簿へと流れ込む。
『外貨介入を確認:聖教国セレスティア』
『不当融資(無償の奇跡)の試行を検知。全額を「過払い金」として没収しました』
『徴収完了:聖魔力 500,000ユニット、聖銀 200kg』
『警告。セレスティア本国より、大規模な「軍事的督促(十字軍)」の予兆を確認』
「……フン。案の定、不渡りを出した途端に暴力装置を動かすか」
俺は、腰を抜かした枢機卿を見下ろす。
「帰って教皇に伝えろ。この大陸に『無担保の救済』を持ち込むなら、その国ごと抵当に入れると」
「お、覚えておれ……! 神の怒りに、利息がつくと思えよ!」
捨て台詞を残し、特使たちは裸同然でボロ船へと逃げ帰っていった。
「……ソラ様。これで外海とも、本格的な取引(戦争)が始まりますね」
「ああ。内政は片付いた。これからは、世界規模の『企業買収(M&A)』の時間だ」
窓の外、水平線を見据える。
そこには、信仰、魔力、運命を不当に独占する、古い神々の利権構造が横たわっている。
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