レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ

文字の大きさ
18 / 51
第1章:銀河創生編

第18話 聖戦のコスト、鉄血の回収

しおりを挟む
水平線を埋め尽くしたのは、聖教国セレスティアが誇る五百隻の艦隊。
神の加護という名の「無敵の保険」を掛けられた五万の兵士たちは、もはや狂信的な戦闘機械と化していた。俺は官邸の最上階から、国家予算の三割を投じたというその「巨大な不良資産」を静かに見下ろす。

「一千万枚もの無理な投資。もはや経営とは言わない、ただの暴走だ」

俺の視界には、兵士一人一人が背負っている『負債』がログとして流れる。彼らが振るう聖剣も、身に纏う奇跡の鎧も、すべては教皇庁から貸与された「期間限定の加護」に過ぎない。

「ミィナ。出撃準備はいいか」

「……いつでも。ソラ様、あの人たち、すごく『燃費』が悪いです」

官邸の縁に立つミィナが、冷徹に告げる。彼女の感覚は、敵がどれほどの因果を浪費しながら進軍しているかを正確に捉えていた。

「ああ。これより、聖戦のコストを支払わせてやる」

                  *

港湾部。

「神の正義を!不信の管理者に裁きを!」

先遣隊の重装歩兵たちが、雄叫びを上げながら上陸を開始した。彼らの身体は聖なる光に包まれ、あらゆる傷は瞬時に塞がる。教皇庁が信徒の祈りを担保に引き出した、大規模な「治癒融資」の結果だ。

だが、彼らが俺の構築した『管理領域』に足を踏み入れた瞬間、空気が凍りついた。

「――監査(オーディット)開始。これより、無許可の加護を差し押さえる」

俺の言葉が空間に響くと同時に、兵士たちの頭上に巨大な『赤い警告灯』が出現した。

『不当融資を確認:聖域十字軍』
『加護の維持コストが支払われていません。強制執行を開始します』

「な、なんだ!?光が……神の加護が消えていく!?」

兵士たちが絶叫する。傷を癒していた光は一瞬で黒い煤へと変わり、聖剣はただの鉄くずへ、防魔の鎧は脆い陶器へと変質した。ミィナが歩を進めるたびに、剥ぎ取られた武装が粒子となって俺の背後に山を築いていく。

「……ミィナ。処理しろ。肉体は労働ユニットとして再利用する」

「……了解」

ミィナから放たれる『秩序の圧』が、兵士たちの戦意と因果を根こそぎ奪い取っていく。

「ば、化け物め!我が国の誇る十字軍を……っ!」

旗艦から飛び出してきた大司教が、黄金の杖を振り上げる。神の報いを叫ぼうとしたその口を、俺は冷徹な事実で封じた。

「神に頼るな。あんたの神は、さっき俺のポートフォリオに組み込んだ」

俺は指を一振りし、空中にある『セレスティアの信仰債権』のグラフをゼロまで引き下げた。大司教の杖から放たれようとした光が、不発の爆竹のように頼りなく弾ける。

『信仰価値:暴落。セレスティア通貨(聖貨)の信用が崩壊しました』
『取得資産:十字軍全五百隻の物理所有権、および五万人分の労働契約』

「そんな、馬鹿な……。わ、我が国の守護は……」

「ないよ、そんなもの。あんたたちが信仰と呼んでいたのは、俺の帳簿の端に書かれた端数に過ぎない」

俺は膝をついた大司教の首筋に、漆黒の「徴収令状」を突きつけた。

「エリーゼ。セレスティアの格付けを『D』に落とせ」

「最下位のデフォルト(債務不履行)ですね。承知いたしました。前借りされていた祈りは、すべてソラ様の元へ逆流しています」

エリーゼが、最高に愉悦に満ちた笑顔で報告する。

「よし。これより敵教皇庁の解体を開始する。残りの財産、すべてを回収(バイアウト)しに行くぞ」

俺の背後で、かつての十字軍の帆が、黄金の「管理主」の紋章へと一斉に書き換えられていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...