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第1章:銀河創生編
第24話 次元筆頭株主を招集した神域会合
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次元の隙間に存在する、無限の光と数式で構築された領域。
そこは、数多の世界の運命を「配当」として享受する存在たちが集う、 査定のためだけに用意された形式上の応接室だった。
歓迎の意など、微塵もない。
ただ絶対的な強者による、冷徹な選別が行われる場所。
「……ソラ様。次元の深層、最上位株主たちの『意識の同期』を確認しました」
エリーゼが、虚空に浮遊する黄金の議事録をめくりながら、声を落とす。
彼女の指先は、極度の緊張からか微かに震えていた。
「彼らはネブラ・アセットの運用成績に不満を抱きつつも、貴方の介入を――」
「市場を乱す『ノイズ』として警戒している。……だろ?」
俺の前には、星々の配置を模した巨大な円卓が広がっていた。
そこには、肉体という殻を捨て、圧倒的な因果の熱量として存在する三柱の「筆頭株主」が鎮座している。
無言で数式を更新し続ける、氷のような冷淡な存在。
宇宙を震わせるほどの、荒々しい威圧を放つ存在。
そして、俺という人間を解剖するように見つめる、好奇に満ちた存在。
「市場の混乱? いいえ。これは、略奪者を排除するという意味での**『ガバナンスの正常化』**だ」
俺は、漆黒の帳簿を円卓の端へ叩きつけた。
――ドンッ、と重厚な音が響く。
神域の空間が、回路のように激しく波打った。
『――物申せ、一時的な生成物(ログ)よ。貴様は我がファンドの執行官を退け、あまつさえ我らとの直接交渉を望んだ』
攻撃的な意思を持つ神――「恒星の眼」が、全宇宙に響くような轟音で問う。
『ネブラ・アセット以上の利益を、貴様のような一個体が提示できるというのか?』
「ネブラ・アセットの手法は、あまりに短絡的だ。奴らは世界を食いつぶし、種の残骸を再販するだけの、ただの『解体屋』に過ぎない」
俺は、円卓の上にホログラムを投影した。
「略奪ゆえに持続性がなく、ファンドは常に次の獲物を探し続けなければならない。それは経営ではない。ただの浪費だ」
俺が断言した瞬間。 冷淡な数式の神の周囲で、計算速度が跳ね上がった。
空間を流れる数字の羅列が、処理しきれぬ熱を持って赤く変色していく。
「奴らは世界の『終わり』を担保にし、俺は『続くこと』を担保にする。俺の新通貨【ゴールデン・クレジット】は、世界の質量ではなく『因果の循環』そのものを価値の源泉としているんだ」
『循環……だと?』
「一度限りの晩餐か、永遠に湧き出る泉か。答えは明白だ。あんたたちが望むのは、食い潰すだけの略奪か。それとも――」
俺は一歩、円卓に踏み込んだ。
「永続的に増殖し続ける、真の資産か」
沈黙。
宇宙の根源が、凍りついたように静まり返る。
俺は間髪入れず、神々の意識へ「新時代の契約書」を送り込んだ。
そこには、ネブラ・アセットによる粉飾決算の証拠。
そして、俺が提供する圧倒的な将来利回りのシミュレーション。
好奇の神の視線が、それまでの「観察」から、獲物を定める「鑑定」へと鋭く変質した。
『……なるほど。だが、ソラ。貴様のモデルは管理者の能力に依存しすぎている。貴様が倒れれば、この循環は止まる』
「だからこそ、俺自身の概念を担保に差し出している」
俺は、感情の動かない瞳で神々を見据えた。
「これは取り消し不能な、存在を懸けた一回限りの契約だ。……後戻りはできない」
威圧の神の放つプレッシャーが、一瞬だけ止まった。
代わりに、銀河の地鳴りのような「躊躇」が神域を揺らす。
「俺が不渡りを出せば、俺という存在のすべてをあんたたちが自由に処分すればいい。名前も、功績も、記憶も。……この宇宙から、俺という『事実』を消し去って構わない」
これ以上の、誠実な担保があるか?
恒星が一つ瞬くほどの一瞬。
あるいは、彼らが数兆通りの未来をシミュレートする、永劫にも似た沈黙。
「決議の時間だ」
俺は、一拍置いてから、言葉を継いだ。
「ネブラ・アセットという名の腐った経営陣を解任しろ」
間。
「そして――」
「俺に『銀河全域の管理権限』を信託しろ」
沈黙を破ったのは、雷鳴のような承認の響きだった。
『――審議、終了。……判定。[ERROR]……ネブラ・アセットの全権利を[強制剥奪(デリート)]する』
『――暫定執行役:ソラを、第■層・特異監査官に任命。これより……因果の[全権譲渡]を開始する』
歪なノイズ混じりのログ。
理解を拒むような、抽象的な権限名。
次の瞬間、俺の手に、銀河全域を網羅する重厚な本が現れた。
【マスター・アカウント】。
開いた瞬間に、視界が激しく歪む。
意識が銀河の果てまで引きずり込まれるような、凄まじい情報量。
「……っ、が……あ……っ」
五感が焼ける。
これまで俺が保持していた「人間としての感覚」が、宇宙の全負債という濁流に押し流され、別の「何か」に上書きされていく。
もう、以前の俺には戻れない。
この本を握った瞬間、俺は「ソラ」という名の個人ではなく、宇宙の帳簿を維持するための「装置」の一部になったのだ。
「……ソラ、様……?」
ミィナの震える声。
彼女の目に映る俺は、もしかすると、もう人間には見えていないのかもしれない。
「……ああ。大丈夫だ、ミィナ。……少し、景色が変わっただけだ」
俺は、重圧を放つマスター・アカウントを握りしめた。
脳に刻まれた銀河の地図が、一箇所だけ激しく「拒絶」を示している。
「公的な権利を奪われたなら、奴らは必ず『非合法な手段』に打って出る。追い詰められた略奪者は、牙を隠そうとはしないはずだ」
視線の先。
崩壊し始めたネブラ・アセットの本社。
次元の狭間に浮かぶ、漆黒の巨大構造体――『黒い城』。
「これより、ネブラの隠し資産を物理的に強制接収しに行く」
俺は、冷徹な数字が並ぶ次なるページをめくった。
「宇宙から、略奪者たちの居場所を完全に消し去るぞ」
経済戦、そして法による支配。
その次に来るのは、奪い取った正当な権利を行使するための「力の清算」だ。
俺の指先から、人間のものではない、青白い因果の火花が散った。
そこは、数多の世界の運命を「配当」として享受する存在たちが集う、 査定のためだけに用意された形式上の応接室だった。
歓迎の意など、微塵もない。
ただ絶対的な強者による、冷徹な選別が行われる場所。
「……ソラ様。次元の深層、最上位株主たちの『意識の同期』を確認しました」
エリーゼが、虚空に浮遊する黄金の議事録をめくりながら、声を落とす。
彼女の指先は、極度の緊張からか微かに震えていた。
「彼らはネブラ・アセットの運用成績に不満を抱きつつも、貴方の介入を――」
「市場を乱す『ノイズ』として警戒している。……だろ?」
俺の前には、星々の配置を模した巨大な円卓が広がっていた。
そこには、肉体という殻を捨て、圧倒的な因果の熱量として存在する三柱の「筆頭株主」が鎮座している。
無言で数式を更新し続ける、氷のような冷淡な存在。
宇宙を震わせるほどの、荒々しい威圧を放つ存在。
そして、俺という人間を解剖するように見つめる、好奇に満ちた存在。
「市場の混乱? いいえ。これは、略奪者を排除するという意味での**『ガバナンスの正常化』**だ」
俺は、漆黒の帳簿を円卓の端へ叩きつけた。
――ドンッ、と重厚な音が響く。
神域の空間が、回路のように激しく波打った。
『――物申せ、一時的な生成物(ログ)よ。貴様は我がファンドの執行官を退け、あまつさえ我らとの直接交渉を望んだ』
攻撃的な意思を持つ神――「恒星の眼」が、全宇宙に響くような轟音で問う。
『ネブラ・アセット以上の利益を、貴様のような一個体が提示できるというのか?』
「ネブラ・アセットの手法は、あまりに短絡的だ。奴らは世界を食いつぶし、種の残骸を再販するだけの、ただの『解体屋』に過ぎない」
俺は、円卓の上にホログラムを投影した。
「略奪ゆえに持続性がなく、ファンドは常に次の獲物を探し続けなければならない。それは経営ではない。ただの浪費だ」
俺が断言した瞬間。 冷淡な数式の神の周囲で、計算速度が跳ね上がった。
空間を流れる数字の羅列が、処理しきれぬ熱を持って赤く変色していく。
「奴らは世界の『終わり』を担保にし、俺は『続くこと』を担保にする。俺の新通貨【ゴールデン・クレジット】は、世界の質量ではなく『因果の循環』そのものを価値の源泉としているんだ」
『循環……だと?』
「一度限りの晩餐か、永遠に湧き出る泉か。答えは明白だ。あんたたちが望むのは、食い潰すだけの略奪か。それとも――」
俺は一歩、円卓に踏み込んだ。
「永続的に増殖し続ける、真の資産か」
沈黙。
宇宙の根源が、凍りついたように静まり返る。
俺は間髪入れず、神々の意識へ「新時代の契約書」を送り込んだ。
そこには、ネブラ・アセットによる粉飾決算の証拠。
そして、俺が提供する圧倒的な将来利回りのシミュレーション。
好奇の神の視線が、それまでの「観察」から、獲物を定める「鑑定」へと鋭く変質した。
『……なるほど。だが、ソラ。貴様のモデルは管理者の能力に依存しすぎている。貴様が倒れれば、この循環は止まる』
「だからこそ、俺自身の概念を担保に差し出している」
俺は、感情の動かない瞳で神々を見据えた。
「これは取り消し不能な、存在を懸けた一回限りの契約だ。……後戻りはできない」
威圧の神の放つプレッシャーが、一瞬だけ止まった。
代わりに、銀河の地鳴りのような「躊躇」が神域を揺らす。
「俺が不渡りを出せば、俺という存在のすべてをあんたたちが自由に処分すればいい。名前も、功績も、記憶も。……この宇宙から、俺という『事実』を消し去って構わない」
これ以上の、誠実な担保があるか?
恒星が一つ瞬くほどの一瞬。
あるいは、彼らが数兆通りの未来をシミュレートする、永劫にも似た沈黙。
「決議の時間だ」
俺は、一拍置いてから、言葉を継いだ。
「ネブラ・アセットという名の腐った経営陣を解任しろ」
間。
「そして――」
「俺に『銀河全域の管理権限』を信託しろ」
沈黙を破ったのは、雷鳴のような承認の響きだった。
『――審議、終了。……判定。[ERROR]……ネブラ・アセットの全権利を[強制剥奪(デリート)]する』
『――暫定執行役:ソラを、第■層・特異監査官に任命。これより……因果の[全権譲渡]を開始する』
歪なノイズ混じりのログ。
理解を拒むような、抽象的な権限名。
次の瞬間、俺の手に、銀河全域を網羅する重厚な本が現れた。
【マスター・アカウント】。
開いた瞬間に、視界が激しく歪む。
意識が銀河の果てまで引きずり込まれるような、凄まじい情報量。
「……っ、が……あ……っ」
五感が焼ける。
これまで俺が保持していた「人間としての感覚」が、宇宙の全負債という濁流に押し流され、別の「何か」に上書きされていく。
もう、以前の俺には戻れない。
この本を握った瞬間、俺は「ソラ」という名の個人ではなく、宇宙の帳簿を維持するための「装置」の一部になったのだ。
「……ソラ、様……?」
ミィナの震える声。
彼女の目に映る俺は、もしかすると、もう人間には見えていないのかもしれない。
「……ああ。大丈夫だ、ミィナ。……少し、景色が変わっただけだ」
俺は、重圧を放つマスター・アカウントを握りしめた。
脳に刻まれた銀河の地図が、一箇所だけ激しく「拒絶」を示している。
「公的な権利を奪われたなら、奴らは必ず『非合法な手段』に打って出る。追い詰められた略奪者は、牙を隠そうとはしないはずだ」
視線の先。
崩壊し始めたネブラ・アセットの本社。
次元の狭間に浮かぶ、漆黒の巨大構造体――『黒い城』。
「これより、ネブラの隠し資産を物理的に強制接収しに行く」
俺は、冷徹な数字が並ぶ次なるページをめくった。
「宇宙から、略奪者たちの居場所を完全に消し去るぞ」
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