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第1章:銀河創生編
第26話 創世負債の最終督促
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ネブラ・アセットの『黒い城』が消滅した跡地には、数千もの「世界の種」が、静かな星屑の海のように漂っていた。
俺は艦の甲板に立ち、手にしたマスター・アカウントを開く。
そこにあるすべての「未払い因果」を、一本のラインへと収束させていく。
「……ソラ様。回収した全三千四百二の『種』、連結処理を完了しました」
エリーゼの報告。その声も、今の俺にはただの電子音のようにしか聞こえない。
「人類史が幾度繰り返されても埋まらぬ絶望の総量……。
これを一つの神話として束ね、単一の資産ポートフォリオ――【星団債権・アステリア連結体】として定義します」
光の粒が渦を巻き、一つの巨大な半透明の球体へと姿を変えた。
それは別々の宇宙で魔王に滅ぼされ、あるいは理不尽な破滅を迎えた世界たちの残響。
失われた数千億の命の記憶が、純粋なエネルギーとして重く脈動している。
「これだけの質量があれば、奴らの『座』までの通行料としては十分だろう」
俺は、視線を次元のさらに奥、光すら届かない「無」の領域へと向けた。
「……ソラ様。向こう側、すごく不気味です。呼吸の仕方を忘れてしまいそうな……。剣も、まるで鉛を握っているみたいに動きません」
ミィナが、かつてないほど険しい表情で自らの胸元を押さえていた。
彼女が感じているのは、物理法則そのものがまだ確定前の「変数」として漂っている形而上学的な重圧。
存在の根源から発せられる、生物としての拒絶反応だ。
「……行こう。宇宙の創世記から続く、最古の未払い問題を解決する時だ」
俺の意志に従い、連結された世界の種が光の楔となって、虚空を縦に切り裂いた。
*
たどり着いた場所は、色も音も、時間という概念すらも希薄な「根源の座」だった。
そこには、巨大な結晶体の柱が七本、円を描くようにそびえ立っている。
それこそが宇宙の基本定数を決定したとされる伝説の存在――『原始の七神』の依代(よりしろ)だった。
『――不遜なり、一時的な生成物(ログ)よ。ネブラの座を奪った程度で、我ら創造主の領域にまで足を踏み入れるとは』
空間そのものが震え、複数の意識が同時に脳内へ流れ込んでくる。
『貴様ら人間など、我らが宇宙を最適化する過程で生じた、廃棄予定の実験データに過ぎぬというのに』
一言発せられるたびに俺の存在定義が揺らぎ、消滅させられそうになるほどの絶対的な権能。
だが、俺は一歩も引かず、マスター・アカウントの中から一枚の「紙」を実体化させた。
「挨拶は抜きにしよう。俺はあんたたちを崇拝しに来たわけじゃない」
俺は、七本の柱の中央へと歩み寄り、冷徹な声で告げた。
「あんたたちはこの宇宙を創る際、巨大な『因果の初期投資』を行った。だが、その資本はどこから調達した? ……無から有は生まれない」
柱の一つが、不快なノイズを奏でる。
「あんたたちは宇宙というシステムを起動させるために、まだ見ぬ『未来の全生命』から、膨大な因果を前借りしたはずだ。 だが、俺の帳簿には、さらにおかしな記録がある」
俺は、マスター・アカウントに記された「不透明な資金流出(アウトフロー)」の項目を指先でなぞった。
「あんたたちは、回収した因果をどこかへ『送金』し続けているな。この宇宙を維持するためではない。……さらに上位の、名もなき『市場』へ対して」
七本の柱の輝きが、一瞬だけ、動揺するように明滅した。
神々ですら抗えない、さらに巨大な「支配」の影。
彼らもまた、何者かにこの宇宙を割り当てられた『雇われ経営者』に過ぎないのではないか。
そんな疑念が、数字の羅列から確信へと変わっていく。
「あんたたちが創世コストを本来支払うべき対象に還元せず、外部へ流し続けてきたせいで、どれだけの世界が滅びたと思っている。……俺はその理不尽な請求書を、現場で何度も見てきたんだよ」
俺は、白く輝く因果の羊皮紙を虚空に掲げた。
「これが、俺からの『督促状』だ。原始の七神――あんたたちは、すでに自ら創った世界に対して『債務超過』に陥っている。 ……そして、その『上の奴ら』への支払いを言い訳にすることを、俺は許さない」
恒星が一つ瞬くほどの一瞬。
あるいは、神々が数兆通りの未来をシミュレートし、自らの非を回避するロジックを探すための、永劫にも似た沈黙。
『――ハハハ……! 督促だと? 神に借金を返せと言うのか!』
「存在の恩を売るのは、負債を返してからにしてくれ。俺の帳簿に、感情的な割引(ディスカウント)は存在しない」
俺は背後のミィナに目配せをした。
ミィナが、連結された「三千の種」を解放する構えをとる。
「選べ。このまま全資産を凍結され、創造主としての称号を剥奪されるか。……あるいは、俺の『再建計画』に従い、宇宙の運営権を完全に俺へ譲渡するか」
七本の柱の輝きが、かつてないほど乱れた。
「あんたたちは、もう経営者失格だ」
俺は、次なる『新宇宙運営委託契約』を記すためのペンを強く握った。
「これからは、俺がこの宇宙を管理する。……あんたたちが恐れている『上の連中』ごと、俺が清算してやるよ」
青白い火花を散らすそのペン先が、神々の支配の終焉と、一人の「貸与者」による新たな理の始まりを告げようとしていた。
俺は艦の甲板に立ち、手にしたマスター・アカウントを開く。
そこにあるすべての「未払い因果」を、一本のラインへと収束させていく。
「……ソラ様。回収した全三千四百二の『種』、連結処理を完了しました」
エリーゼの報告。その声も、今の俺にはただの電子音のようにしか聞こえない。
「人類史が幾度繰り返されても埋まらぬ絶望の総量……。
これを一つの神話として束ね、単一の資産ポートフォリオ――【星団債権・アステリア連結体】として定義します」
光の粒が渦を巻き、一つの巨大な半透明の球体へと姿を変えた。
それは別々の宇宙で魔王に滅ぼされ、あるいは理不尽な破滅を迎えた世界たちの残響。
失われた数千億の命の記憶が、純粋なエネルギーとして重く脈動している。
「これだけの質量があれば、奴らの『座』までの通行料としては十分だろう」
俺は、視線を次元のさらに奥、光すら届かない「無」の領域へと向けた。
「……ソラ様。向こう側、すごく不気味です。呼吸の仕方を忘れてしまいそうな……。剣も、まるで鉛を握っているみたいに動きません」
ミィナが、かつてないほど険しい表情で自らの胸元を押さえていた。
彼女が感じているのは、物理法則そのものがまだ確定前の「変数」として漂っている形而上学的な重圧。
存在の根源から発せられる、生物としての拒絶反応だ。
「……行こう。宇宙の創世記から続く、最古の未払い問題を解決する時だ」
俺の意志に従い、連結された世界の種が光の楔となって、虚空を縦に切り裂いた。
*
たどり着いた場所は、色も音も、時間という概念すらも希薄な「根源の座」だった。
そこには、巨大な結晶体の柱が七本、円を描くようにそびえ立っている。
それこそが宇宙の基本定数を決定したとされる伝説の存在――『原始の七神』の依代(よりしろ)だった。
『――不遜なり、一時的な生成物(ログ)よ。ネブラの座を奪った程度で、我ら創造主の領域にまで足を踏み入れるとは』
空間そのものが震え、複数の意識が同時に脳内へ流れ込んでくる。
『貴様ら人間など、我らが宇宙を最適化する過程で生じた、廃棄予定の実験データに過ぎぬというのに』
一言発せられるたびに俺の存在定義が揺らぎ、消滅させられそうになるほどの絶対的な権能。
だが、俺は一歩も引かず、マスター・アカウントの中から一枚の「紙」を実体化させた。
「挨拶は抜きにしよう。俺はあんたたちを崇拝しに来たわけじゃない」
俺は、七本の柱の中央へと歩み寄り、冷徹な声で告げた。
「あんたたちはこの宇宙を創る際、巨大な『因果の初期投資』を行った。だが、その資本はどこから調達した? ……無から有は生まれない」
柱の一つが、不快なノイズを奏でる。
「あんたたちは宇宙というシステムを起動させるために、まだ見ぬ『未来の全生命』から、膨大な因果を前借りしたはずだ。 だが、俺の帳簿には、さらにおかしな記録がある」
俺は、マスター・アカウントに記された「不透明な資金流出(アウトフロー)」の項目を指先でなぞった。
「あんたたちは、回収した因果をどこかへ『送金』し続けているな。この宇宙を維持するためではない。……さらに上位の、名もなき『市場』へ対して」
七本の柱の輝きが、一瞬だけ、動揺するように明滅した。
神々ですら抗えない、さらに巨大な「支配」の影。
彼らもまた、何者かにこの宇宙を割り当てられた『雇われ経営者』に過ぎないのではないか。
そんな疑念が、数字の羅列から確信へと変わっていく。
「あんたたちが創世コストを本来支払うべき対象に還元せず、外部へ流し続けてきたせいで、どれだけの世界が滅びたと思っている。……俺はその理不尽な請求書を、現場で何度も見てきたんだよ」
俺は、白く輝く因果の羊皮紙を虚空に掲げた。
「これが、俺からの『督促状』だ。原始の七神――あんたたちは、すでに自ら創った世界に対して『債務超過』に陥っている。 ……そして、その『上の奴ら』への支払いを言い訳にすることを、俺は許さない」
恒星が一つ瞬くほどの一瞬。
あるいは、神々が数兆通りの未来をシミュレートし、自らの非を回避するロジックを探すための、永劫にも似た沈黙。
『――ハハハ……! 督促だと? 神に借金を返せと言うのか!』
「存在の恩を売るのは、負債を返してからにしてくれ。俺の帳簿に、感情的な割引(ディスカウント)は存在しない」
俺は背後のミィナに目配せをした。
ミィナが、連結された「三千の種」を解放する構えをとる。
「選べ。このまま全資産を凍結され、創造主としての称号を剥奪されるか。……あるいは、俺の『再建計画』に従い、宇宙の運営権を完全に俺へ譲渡するか」
七本の柱の輝きが、かつてないほど乱れた。
「あんたたちは、もう経営者失格だ」
俺は、次なる『新宇宙運営委託契約』を記すためのペンを強く握った。
「これからは、俺がこの宇宙を管理する。……あんたたちが恐れている『上の連中』ごと、俺が清算してやるよ」
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