レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ

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第1章:銀河創生編

第27話 創世権能の強制徴収執行

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静寂が、ひび割れた。

根源の座にそびえ立つ七本の結晶柱。そのうちの一本が、太陽すらも冷たく感じるほどの白銀の光を放ち、膨れ上がる。  結晶から溢れ出した光が収束し、一つの形を成した。

『――図に乗るな、末端の計算機(プログラム)風情が』

原始の七神が一柱――『因果の調停者』。彼が指先を微かに動かしただけで、根源の空間そのものが「定義」を失い、崩壊し始める。それは、「この場に存在する者は、死を定義される」という、宇宙そのものの絶対的な命令だった。

本来なら、一瞬で俺たちの存在は抹消されていたはずだ。
だが――。

「……遅いな」

俺は、無造作にマスター・アカウントを掲げた。

白銀の光が俺に触れる直前、目に見えない透明な障壁に遮られ、情報の残骸となって霧散する。

「あんたの放った『命令』には、重大な欠陥がある。それを発動するための因果エネルギー……。それは本来、第十七銀河の未来へ還元されるべき余剰資産だ」

俺は、マスター・アカウントのページを指で弾く。

「私的流用だ。……それも、自分のためじゃないな。上位市場(マルチバース)への『上納金』を捻出するための、無理な帳尻合わせの結果だ」

『……何だと?』

神の瞳が、驚愕に揺れる。

俺は、彼という存在の裏側を透かし見ていた。
肉体も、神気も、権能も。
すべては、宇宙の帳簿から不正に引き出し、さらに外部へと「横流し」された負債の上に成り立っている。

「エリーゼ。監査を開始しろ」

「了解、ソラ様。……対象、原始神『因果の調停者』。その権能の『真の所有権』を逆監査(リバース・オービット)します」

エリーゼの瞳が青白く発光し、根源の座に幾兆もの計算数式が展開された。

神域の重圧に耐えかね、ミィナが膝をつく。
だが俺は、もはや重圧すら感じていなかった。
ただ、目の前にある「巨大なバグ」を、どう処理すべきか。
その最適解だけが、脳内を支配していた。

「……見つけたぞ」

俺は一歩、神の懐へと踏み込んだ。

「あんたの核を支えている『権能』……。それは三億年前、アステリア星系を担保に上位市場から『借り受けた』短期的な資本だな?」

『貴様……なぜ、それを……!』

「帳簿を誤魔化せると思うな。あんたが神でいられるのは、宇宙そのものを『レバレッジ』にかけた危険な投資の結果に過ぎない。あんたは創造主じゃない。ただの、借金まみれの代理人だ」

俺は、青白い火花を散らすペンを、虚空に走らせた。

「執行。未払い利息の代物弁済として、その『因果操作権』を没収する」

――ガツッ、と。

何かが「外れる」音が、根源の座に響き渡った。

神の翼が、一枚、また一枚と剥がれ落ちていく。
あるべき持ち主――「未来」へと、その力が強制的に還流されているのだ。

『ぐ、がああああああかっ! やめろ……それを奪えば、あの方々が……上位市場の『取り立て』が、我らを消しに来る!』

「それはあんたたちの問題だ。俺の知ったことじゃない」

俺は冷徹に言い放ち、さらにペンを動かす。

「まだ足りない。あんたの存在確率……これも不当な前借りの上に成り立っている。全額、差し押さえる」

次の一瞬。
神の巨体が、内側から崩壊を始めた。

光り輝く神性が、薄汚れた灰色の粒子へと変質していく。
宇宙の法そのものが、管理者ソラの手によって「無価値な不良債権」と断じられた瞬間。

圧倒的な力を持って俺たちを見下ろしていた創造主は、
今や、ただの「破産した敗北者」へと成り下がっていた。

「……ソラ様……。もう、それ以上は……」

ミィナの声。
彼女の目には、今の俺が、崩壊していく神よりも恐ろしいものに見えているのだろう。

だが、俺の指は止まらない。

「エリーゼ。剥ぎ取った権能を【星団債権・アステリア連結体】へ補填しろ。これで、滅びた世界たちの『再生コスト』が捻出できる」

「……完了しました。ソラ様、原始神の一柱を完全に『清算』しました」

白銀の柱が一本、音を立てて砕け散った。

後に残されたのは、かつて神と呼ばれた存在の残骸。
それを冷徹に計上し続ける、一人の管理者の姿。

残る柱は、六本。

他の神々は、沈黙していた。
いや、彼らは今、必死に計算しているのだ。
自分たちが上位市場に対して負っている「本当の負債」を、この冷酷な監査官にどう隠し通すべきかを。

「……次だ」

俺は、因果の飛沫を拭うこともせず、次の柱を見据えた。

「隠しても無駄だ。あんたたちが上位市場へ『地代』として横流ししてきた隠し資産……。そのすべてのルートは、もう帳簿(ここ)に記録されている」

俺は再び、ペンを構えた。

神を殺すのではない。
神を「解体」し、宇宙の真の持ち主――全生命へとその価値を分配する。

それこそが、新たな理の管理者に与えられた、唯一の職務だ。

意識の深淵。
「ソラ」という名の人間が持っていたわずかな未練が、また一つ、数字の海に溶けて消えていった。

だが、その喪失感と引き換えに、俺は確信していた。
この神々の背後にある、さらに醜悪で巨大な「負債の源流」を叩き潰さない限り、本当の清算は終わらないということを。

「さあ、続きを始めようか。あんたたちの『辞任』が決まるまでな」

俺の不敵な笑みは、もはや神域のどの光よりも、残酷に、そして正しく輝いていた。
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