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第1章:銀河創生編
第28話 根源市場の全権強制委譲
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白銀の柱が砕け散った後の、耐え難いほどの静寂。
一柱を失った『原始の七神』の残像が、激しくノイズを走らせる。
それは、この宇宙で最も不変であるはずの存在が、「欠損」したことへの悲鳴だった。
俺は、砕けた破片を一度も振り返らない。
視線は、残る六本の柱だけを捉えていた。
「……次だ。名乗り出る必要はない。どのみち、あんたたち全員の『監査報告書』は、既に書き終えている」
俺の声に、六本の柱が同時に共鳴し、空間を激しく歪ませた。
宇宙の全存在を停止させ、白紙に戻そうとする「強制終了」の試み。
『――不遜なり、貸与者。我らが退けば、全霊の歴史は等しく無へと還る! 我らは……我らは、上位市場(マルチバース)の過酷な取り立てから、この宇宙を守るための『防波堤』だったのだぞ!』
神々の合唱(コーラス)が、俺の脳を直接引き裂こうと響く。彼らの言葉には、これまでのような傲慢さだけではなく、隠しきれない「恐怖」が混じっていた。
「防波堤? 笑わせるな。あんたたちがやっていたのは、自分たちが生き延びるための『延滞利息の転嫁』だ」
俺は、淡々と言い放った。
「上位市場への『地代』を払うために、この宇宙の生命から因果を絞り取る。あんたたちは守護者じゃない。ただの、悪質な多重債務者だ」
俺は、重厚な【マスター・アカウント】のページを、力強くめくった。
「今のこの世界は、あんたたちの創世記の続きじゃない。俺という装置が、あんたたちの負債を暴き、整理するために維持している、一時的な『清算期間』の幻だ」
ページから溢れ出した漆黒の因果が、神々の放つ白銀の光を、圧倒的な質量で押し潰していく。
「あんたたちがいないと宇宙が消える? いいえ。あんたたちが私物化し、上位へ横流ししていたエネルギーを、あるべき場所へ戻す。それだけで、この宇宙は自律して動き始める」
俺は一歩、六本の柱の中央へ歩み寄る。
「……ソラ、様……」
背後から届く、ミィナの震える声。彼女が知っている「ソラ」という人間の輪郭は、もうそこには残っていない。
「エリーゼ。……全権委譲の最終処理を」
「了解、ソラ様。……宇宙創設時の全優先権を――強制徴収(フォース・マージ)」
エリーゼの瞳から、一筋の光が零れ落ちた。
彼女の手は迷うことなく、空間に展開された無数のキーを叩いた。
『――創世の法が、吸い出されていく……っ! 狂っているぞ、ソラ! 我らの全権を奪えば……貴様が、この宇宙の『負債』のすべてを直接背負うことになるのだぞ!』
六本の柱が、狂ったように発光し――急速にその輝きを失い、濁った灰色へと変わっていく。
神々が「神であるための権利」を奪われた瞬間。
そして、ソラが「宇宙という負債の塊」を丸ごと買い取った瞬間だった。
代償として、俺の指先から「痛み」が消えた。
風の「匂い」が、ただの空気成分のログに変わった。
足元の「重さ」という実感が削除され、ただの座標データへと置き換わった。
それでもいい。
帳簿が、合うなら。
「……終わったぞ」
最後の一文を書き終えた瞬間。
根源の座に立っていた六本の柱は、形を保てなくなり、砂のように崩れ落ちた。
後に残されたのは、かつて神と呼ばれた者たちの「抜け殻」。
ただの巨大な石柱と化したそれらが、虚無の中に漂っている。
『――最終決算、完了』
『判定:宇宙運営権の全委譲を、正式に承認します』
宇宙の理(システム)が、俺を唯一の支配者として指名した。
俺が、法そのものになったのだ。
だが、その瞬間。
マスター・アカウントの最奥に、これまで見えなかった「漆黒の請求書」が浮かび上がった。
『――警告。新・管理者ソラへ。前・管理者たちの未払い金、および銀河占有権料を継承しました。……上位市場(マルチバース)への支払い期限まで、あと一期』
俺は、冷徹な瞳でそのログを見つめた。
神々ですら支払えなかった、宇宙そのものの地代。
「……ソラ様。終わった、のですね」
ミィナが、おずおずと俺の傍らに歩み寄る。
彼女は俺の服の裾を掴もうとして、その手を止めた。
今の俺は、彼女自身の存在すらも計算の一部として回収してしまいそうな、底知れない「虚無」を漂わせていたからだ。
「……ああ。この宇宙の中(・・)での戦いは、終わったよ」
彼女を見ずに言った。
彼女の体温も、声の震えも、今の俺には「不規則なノイズ」にしか感じられない。
「だが、まだ帳簿の不一致が残っている。……俺たちの『存在の代価』を、勝手に決めている奴らが、外側にいる」
俺は、重厚なマスター・アカウントを閉じた。
かつて俺を追放した勇者パーティ。俺を罵った者たち。
そのすべてが、これからは俺の帳簿の上で、正しく「機能」していくだけの存在になる。
そして、その「平穏」を守るためには、俺がさらに上の奴らから、支配権を奪い取る必要がある。
「……さあ、帰ろうか。次の市場(マーケット)へ向かう準備が必要だ」
俺は、虚空へと歩き出した。
振り返ることは、一度もなかった。
宇宙は、救われた。
その代償として、一人の「貸与者」が、さらに巨大な『負債の連鎖』へとその身を投じることになったとしても。
俺の指先から散る火花は、黄金から、多次元を貫く虹色の無機質な光へと変わっていた。
一柱を失った『原始の七神』の残像が、激しくノイズを走らせる。
それは、この宇宙で最も不変であるはずの存在が、「欠損」したことへの悲鳴だった。
俺は、砕けた破片を一度も振り返らない。
視線は、残る六本の柱だけを捉えていた。
「……次だ。名乗り出る必要はない。どのみち、あんたたち全員の『監査報告書』は、既に書き終えている」
俺の声に、六本の柱が同時に共鳴し、空間を激しく歪ませた。
宇宙の全存在を停止させ、白紙に戻そうとする「強制終了」の試み。
『――不遜なり、貸与者。我らが退けば、全霊の歴史は等しく無へと還る! 我らは……我らは、上位市場(マルチバース)の過酷な取り立てから、この宇宙を守るための『防波堤』だったのだぞ!』
神々の合唱(コーラス)が、俺の脳を直接引き裂こうと響く。彼らの言葉には、これまでのような傲慢さだけではなく、隠しきれない「恐怖」が混じっていた。
「防波堤? 笑わせるな。あんたたちがやっていたのは、自分たちが生き延びるための『延滞利息の転嫁』だ」
俺は、淡々と言い放った。
「上位市場への『地代』を払うために、この宇宙の生命から因果を絞り取る。あんたたちは守護者じゃない。ただの、悪質な多重債務者だ」
俺は、重厚な【マスター・アカウント】のページを、力強くめくった。
「今のこの世界は、あんたたちの創世記の続きじゃない。俺という装置が、あんたたちの負債を暴き、整理するために維持している、一時的な『清算期間』の幻だ」
ページから溢れ出した漆黒の因果が、神々の放つ白銀の光を、圧倒的な質量で押し潰していく。
「あんたたちがいないと宇宙が消える? いいえ。あんたたちが私物化し、上位へ横流ししていたエネルギーを、あるべき場所へ戻す。それだけで、この宇宙は自律して動き始める」
俺は一歩、六本の柱の中央へ歩み寄る。
「……ソラ、様……」
背後から届く、ミィナの震える声。彼女が知っている「ソラ」という人間の輪郭は、もうそこには残っていない。
「エリーゼ。……全権委譲の最終処理を」
「了解、ソラ様。……宇宙創設時の全優先権を――強制徴収(フォース・マージ)」
エリーゼの瞳から、一筋の光が零れ落ちた。
彼女の手は迷うことなく、空間に展開された無数のキーを叩いた。
『――創世の法が、吸い出されていく……っ! 狂っているぞ、ソラ! 我らの全権を奪えば……貴様が、この宇宙の『負債』のすべてを直接背負うことになるのだぞ!』
六本の柱が、狂ったように発光し――急速にその輝きを失い、濁った灰色へと変わっていく。
神々が「神であるための権利」を奪われた瞬間。
そして、ソラが「宇宙という負債の塊」を丸ごと買い取った瞬間だった。
代償として、俺の指先から「痛み」が消えた。
風の「匂い」が、ただの空気成分のログに変わった。
足元の「重さ」という実感が削除され、ただの座標データへと置き換わった。
それでもいい。
帳簿が、合うなら。
「……終わったぞ」
最後の一文を書き終えた瞬間。
根源の座に立っていた六本の柱は、形を保てなくなり、砂のように崩れ落ちた。
後に残されたのは、かつて神と呼ばれた者たちの「抜け殻」。
ただの巨大な石柱と化したそれらが、虚無の中に漂っている。
『――最終決算、完了』
『判定:宇宙運営権の全委譲を、正式に承認します』
宇宙の理(システム)が、俺を唯一の支配者として指名した。
俺が、法そのものになったのだ。
だが、その瞬間。
マスター・アカウントの最奥に、これまで見えなかった「漆黒の請求書」が浮かび上がった。
『――警告。新・管理者ソラへ。前・管理者たちの未払い金、および銀河占有権料を継承しました。……上位市場(マルチバース)への支払い期限まで、あと一期』
俺は、冷徹な瞳でそのログを見つめた。
神々ですら支払えなかった、宇宙そのものの地代。
「……ソラ様。終わった、のですね」
ミィナが、おずおずと俺の傍らに歩み寄る。
彼女は俺の服の裾を掴もうとして、その手を止めた。
今の俺は、彼女自身の存在すらも計算の一部として回収してしまいそうな、底知れない「虚無」を漂わせていたからだ。
「……ああ。この宇宙の中(・・)での戦いは、終わったよ」
彼女を見ずに言った。
彼女の体温も、声の震えも、今の俺には「不規則なノイズ」にしか感じられない。
「だが、まだ帳簿の不一致が残っている。……俺たちの『存在の代価』を、勝手に決めている奴らが、外側にいる」
俺は、重厚なマスター・アカウントを閉じた。
かつて俺を追放した勇者パーティ。俺を罵った者たち。
そのすべてが、これからは俺の帳簿の上で、正しく「機能」していくだけの存在になる。
そして、その「平穏」を守るためには、俺がさらに上の奴らから、支配権を奪い取る必要がある。
「……さあ、帰ろうか。次の市場(マーケット)へ向かう準備が必要だ」
俺は、虚空へと歩き出した。
振り返ることは、一度もなかった。
宇宙は、救われた。
その代償として、一人の「貸与者」が、さらに巨大な『負債の連鎖』へとその身を投じることになったとしても。
俺の指先から散る火花は、黄金から、多次元を貫く虹色の無機質な光へと変わっていた。
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