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第2章:多次元市場編
第33話 星葬商会の解体、暴利を貪る者の末路
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巨大な重力鎖が、一つの惑星を無慈悲に締め上げていた。
多次元市場の外縁部。そこでは『星葬商会』による惑星解体が、工場のライン作業のごとき手慣れた手つきで、淡々と繰り返されていた。
地殻を剥ぎ取り、核に眠る因果結晶を抽出する。生命の悲鳴など、演算機が弾き出す「作業効率」のノイズに過ぎない。
「……本日も順調だな。利回りは予定通りだ」
商会の会頭マルドゥークは、肥大化した肉体を機械の椅子に預け、ワインを傾けていた。
彼にとって、この虐殺は「日常」であり、何者にも邪魔されない絶対的な権利であるはずだった。
だが、その静寂な作業域に、一隻の黄金の監査艦が音もなく割り込んだ。
『――不当な商圏侵犯を確認。即座に賠償金の支払いプロトコルを開始しろ』
マルドゥークは不愉快そうに、割り込んできた通信に吠えた。
だが、スクリーンに映るソラの瞳は、彼を「敵」としてすら見ていなかった。
「マルドゥーク。あんたが独占しているその採掘権、根拠となる『多次元市場標準管理規約』の第802条第4項……その但し書きを読んだことはあるか?」
『……あ? そんな細かいもん、いちいち読んでられるかよ』
「だろうな。……そこにはこう記されている。『全債務の継承者が現れた場合、占有権は遡及的に無効化される』と。あんたが今、解体しているその惑星の前所有者――原始神の全負債は、今この瞬間、俺がすべて継承(マージ)した」
『……は?』
マルドゥークの手元にある権利書が、突如として真っ黒な警告色に染まった。
彼が「全知全能の権利」だと信じていた紙切れが、ソラの指摘一つで、ただの『不法占拠の証拠』へと変質していく。
マルドゥークの顔から、急速に血の気が引いていく。
「あんたは今、俺の資産を不当に損壊している。……ミィナ。執行しろ。遅延損害金は、奴らの存在価値で清算させる」
「――了解、ソラ様。……全機、突入!」
ミィナの叫びと共に、ゴールディングから百条の漆黒の光が放たれた。
*
星葬商会の防衛艦隊が一斉に迎撃する。
先頭を走るガイウスは、降り注ぐ光条の雨を『負債の毒』で相殺しながら、真っ直ぐに旗艦を目指した。
「……存在の重みが足りぬ。消えよ」
ガイウスが漆黒の剣を振り抜くと、防衛艦の装甲が塵のように崩れ落ちる。
物理破壊ではなく、存在そのものを「デッド・ストック」へと強制置換する一撃。
だが、敵の集中砲火を浴びたガイウスの甲冑が一瞬、軋んだ。
毒による価値破壊は万能ではない。上位市場の「強固な防衛予算」を注ぎ込まれた装甲は、まだわずかに彼の刃を撥ね返していた。
「……これ以上、好きにはさせない!」
ミィナの聖剣が、惑星を縛る重力鎖を切り裂く。
一瞬、かつての甘い感傷が胸を掠めるが、彼女はそれを即座に振り払った。
自分の声が、一度も震えていないことに驚きながら、彼女は命じる。
「残存職員を拘束。抵抗は、資産の完全償却と見なします……!」
その冷徹な指示は、自分を「執行官」として律する決意の証だった。
*
旗艦のブリッジ。マルドゥークは、狂ったように端末を叩いていた。
『嘘だ……! 市場の信用スコアが……俺を見捨てたっていうのか!?』
スクリーンに流れるのは、星葬商会の評価が「ゴミ以下」に暴落していく冷酷なグラフ。
上位市場にとって、負債を抱えた管理者に逆らう「不法占拠者」に貸す肩など、どこにもなかった。
「……監査、終了だ」
ソラの声が響く。
マルドゥークが何かを叫ぼうとした瞬間、彼の肉体はデータの一部として、ゴールディングの帳簿へと吸い込まれていった。
彼が最後まで理解できなかったのは、自分が救世主に倒されたのではなく、ただ市場の「論理」によって切り捨てられたという事実だけだった。
「……ソラ様。商会の資産、すべて計上完了」
エリーゼの報告を聞きながら、ソラは手に入れた『星葬商会のライセンス』を眺めた。
救われた生命に一度も目を向けず、彼は次なる闇を見据える。
「……悪くない。次は、この不条理を支える『信用の源泉』……金を生まない金を支配する者たちを、監査してやる」
ソラの瞳には、多次元の深淵に潜む、巨大な『銀行』のシルエットが冷たく映り込んでいた。
多次元市場の外縁部。そこでは『星葬商会』による惑星解体が、工場のライン作業のごとき手慣れた手つきで、淡々と繰り返されていた。
地殻を剥ぎ取り、核に眠る因果結晶を抽出する。生命の悲鳴など、演算機が弾き出す「作業効率」のノイズに過ぎない。
「……本日も順調だな。利回りは予定通りだ」
商会の会頭マルドゥークは、肥大化した肉体を機械の椅子に預け、ワインを傾けていた。
彼にとって、この虐殺は「日常」であり、何者にも邪魔されない絶対的な権利であるはずだった。
だが、その静寂な作業域に、一隻の黄金の監査艦が音もなく割り込んだ。
『――不当な商圏侵犯を確認。即座に賠償金の支払いプロトコルを開始しろ』
マルドゥークは不愉快そうに、割り込んできた通信に吠えた。
だが、スクリーンに映るソラの瞳は、彼を「敵」としてすら見ていなかった。
「マルドゥーク。あんたが独占しているその採掘権、根拠となる『多次元市場標準管理規約』の第802条第4項……その但し書きを読んだことはあるか?」
『……あ? そんな細かいもん、いちいち読んでられるかよ』
「だろうな。……そこにはこう記されている。『全債務の継承者が現れた場合、占有権は遡及的に無効化される』と。あんたが今、解体しているその惑星の前所有者――原始神の全負債は、今この瞬間、俺がすべて継承(マージ)した」
『……は?』
マルドゥークの手元にある権利書が、突如として真っ黒な警告色に染まった。
彼が「全知全能の権利」だと信じていた紙切れが、ソラの指摘一つで、ただの『不法占拠の証拠』へと変質していく。
マルドゥークの顔から、急速に血の気が引いていく。
「あんたは今、俺の資産を不当に損壊している。……ミィナ。執行しろ。遅延損害金は、奴らの存在価値で清算させる」
「――了解、ソラ様。……全機、突入!」
ミィナの叫びと共に、ゴールディングから百条の漆黒の光が放たれた。
*
星葬商会の防衛艦隊が一斉に迎撃する。
先頭を走るガイウスは、降り注ぐ光条の雨を『負債の毒』で相殺しながら、真っ直ぐに旗艦を目指した。
「……存在の重みが足りぬ。消えよ」
ガイウスが漆黒の剣を振り抜くと、防衛艦の装甲が塵のように崩れ落ちる。
物理破壊ではなく、存在そのものを「デッド・ストック」へと強制置換する一撃。
だが、敵の集中砲火を浴びたガイウスの甲冑が一瞬、軋んだ。
毒による価値破壊は万能ではない。上位市場の「強固な防衛予算」を注ぎ込まれた装甲は、まだわずかに彼の刃を撥ね返していた。
「……これ以上、好きにはさせない!」
ミィナの聖剣が、惑星を縛る重力鎖を切り裂く。
一瞬、かつての甘い感傷が胸を掠めるが、彼女はそれを即座に振り払った。
自分の声が、一度も震えていないことに驚きながら、彼女は命じる。
「残存職員を拘束。抵抗は、資産の完全償却と見なします……!」
その冷徹な指示は、自分を「執行官」として律する決意の証だった。
*
旗艦のブリッジ。マルドゥークは、狂ったように端末を叩いていた。
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スクリーンに流れるのは、星葬商会の評価が「ゴミ以下」に暴落していく冷酷なグラフ。
上位市場にとって、負債を抱えた管理者に逆らう「不法占拠者」に貸す肩など、どこにもなかった。
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