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第四十六回 碧玉《へきぎょく》と未麗仙《みれいせん》

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 僕たちは戦いのあと、佳信《かいしん》さんの家に来ていた。

「大丈夫......桃理《とうり》」

「......ええ、なんとか」

 桃理《とうり》はあのあと倒れ、
 佳信《かいしん》さんの家で休ませてもらっていた。
 
「俺が返した気を全て使ってあの術を使ったんだな。
 無茶をする......たが助かったぞ」

 冴氷仙《ごひょうせん》は半ば、あきれたようにいった。

「わたしはなんたって、
 命炎仙《みょうえんせん》さまの弟子だから、
 このぐらいできて当たり前なの」

 そう桃理《とうり》はいった。

「それで冴氷仙《ごひょうせん》......
 これで玄陽仙《げんようせん》の封印を阻止できたのですか」

「いや、沙像仙《さぞうせん》一人では、ここまでできないだろう。
 他にも協力した仙人がいる......その者が封印を解こうとするはず。
 玄陽仙《げんようせん》を封印している封宝具《ふうほうぐ》
 封戒玉《ふうかいぎょく》は、
 龍漿仙《りゅうしょうせん》のものだ」

「協力しているのは、十二大仙か......
 玄陽仙《げんようせん》についた六黒仙《ろくこくせん》は、
 残り宝創仙《ほうそうせん》冥影仙《めいえいせん》
 空姿仙《くうしせん》だが大乱で、宝創仙《ほうそうせん》
 空姿仙《くうしせん》は死んでいる。
 残りは冥影仙《めいえいせん》だが.....」

 紅《こう》はそう言ったが、冴氷仙《ごひょうせん》は首をふる。

「それだけとは限らない......
 十二大仙がどんな理由で白陰仙《はくいんせん》と、
 玄陽仙《げんようせん》についたのかはわからない......」

「じゃあ、白陰仙《はくいんせん》の側の、
 残り霊棺仙《れいかんせん》と、龍漿仙《りゅうしょうせん》
 もわからないな......いや他の仙人もいるか......

 紅《こう》そういうと、冴氷仙《ごひょうせん》はうなづいた。 

(未麗仙《みれいせん》先生と、
 命炎仙《みょうえんせん》は違うだろうが、
 金白仙《こんびゃくせん》はどこかにいってしまっている......)

「もし龍漿仙《りゅうしょうせん》が、
 玄陽仙《げんようせん》につけば話しは変わるな。
 その方はどこにいるのですか?」

 僕が聞くと、冴氷仙《ごひょうせん》は首を降った。

「わからんな......あやつは同じ場所にはいないだろう......
 つかみどころのない男だ......うっ」

 冴氷仙《ごひょうせん》は膝をつく。

「大丈夫ですか!」  

「ああ、まだ力が戻らない......すまぬな」

 沙像仙《さぞうせん》との戦いと今までの疲労で、
 冴氷仙《ごひょうせん》が、弱ってるのはみてとれた。

「あんたはここで寝てまっててくれ、
 俺たちで何とか龍漿仙《りゅうしょうせん》を探しにいくぜ!」

「......だめだ紅《こう》もし龍漿仙《りゅうしょうせん》が、
 敵だった場合、お前たちではまだまともに戦えん」

「......それなら、皆に協力してもらおう。
 紅《こう》は蒼花仙《そうかせん》を頼む。
 僕は他の仙人たちにあってくる」
 
「わかった」

 僕と紅《こう》は分かれそれぞれ、仙人を集めるために動いた。

(まず、碧玉《へきぎょく》と未麗仙《みれいせん》先生、
 金白仙《こんびゃくせん》協力してくれるかわからないけど)

 僕は未麗仙《みれいせん》先生の仙島に向かう。

 仙島に降りると、黒いなにかがモゾモゾ動いていた。

「この大きな気、魔獣!?」

「み、三咲《みさき》さま......」

「あっ!碧玉《へきぎょく》!?」

 その黒いものはボロボロの碧玉《へきぎょく》だった。

「そ、その姿はまさか何かに襲われて!?」

「い、いえ、しゅ、修行で......」

「おや、三咲《みさき》見違えましたよ」

 そうおっとりした声で、
 未麗仙《みれいせん》先生が羊にのって現れた。

「未麗仙《みれいせん》先生!?これは」

「ええ、修行です。あなたにも課したでしょう」

(容赦なしだな......先生は、いやそれより)

「未麗仙《みれいせん》先生!実は大変なことが!」

「ええ、遠くで何度も高い気を感じました......
 あれは十二大仙人の戦う気、良く生き延びられましたね」

「十二大仙人が戦う!?
 ええ!!そんなの全く感じませんでした!」

 碧玉《へきぎょく》はなんとか立ち上がり驚いている。

「ええ、その事でお話が......」

 僕は二人に今までの話をかいつまんで話した。

「そうですか、そんなことに......
 やはり玄陽仙《げんようせん》が関わるのですね......」

 僕が今の状況を全て話すと、
 未麗仙《みれいせん》先生は静かに聞いていた。

「そこで先生に力を貸して欲しいのです」

「龍漿仙《りゅうしょうせん》......封戒玉《ふうかいぎょく》
 彼が敵対すれば危険でしょうね......ですが、
 今すぐには手に入れても使えません」

「どういうことですか!?陰の気を集める陰湖盃《おんこはい》が、 
 何者かに奪われているのでしょう?」

 そう碧玉《へきぎょく》が言った。

「ええ、おそらく町ひとつを滅ぼせるのだから十二大仙でしょう。
 ですが、曇斑疫《どんはんえき》は、そこまで拡がらず、
 凱朋《がいほう》の企みも、あなたたちに阻止された......
 今まで集めた陰の気では、
 万象刀《ばんしょうとう》の力を解放するには足りないはず」
 
 そう先生が静かに告げる。

「そうですか......ならば何か別の策を考えているのか......
 だったら、やはり仙人の数が足りない」

「そうですね......それには強い仙人も必要です。
 私も知りうる仙人に声をかけましょう。
 それと......碧玉《へきぎょく》」
 
「は、はひ!!」

 変な声で碧玉《へきぎょく》が答える。

「あなたは三咲《みさき》について行きなさい。
 一応の修行はつけましたから」

「は、はひ!わかりまひた!!」

 そういって直立不動で答えた。

(大分しぼられたな......気持ちはわかる)

「じゃあ行こう!」

「はい!」

 僕と碧玉《へきぎょく》たちは凱朋に向かった。
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