オルタナティブバース

曇天

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第五話

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 次の日、宿からでて、二人で店へと向かう。

 そこは骨董品屋のように、鎧や剣などがところ狭しと並べられている。

「アイもおれも初期装備の鉄のナイフしかもってないから、なにしよう」

「私は近接の剣や槍なんか武器をもっても上手く扱えないから、サナが武器をかって」

「運動苦手? ゲームだから多少苦手でも動けるよ」

「......うん。 でもあまりうまくはないんだ。 それに私には回復魔法があるからね」

「なら、アイは強めの防具を買おう。 回復役だから、倒れたら終わりだ。 おれたちは死ぬわけにいかない」

「......確かに、それにPK《プレイヤーキラー》も気を付けないといかない」

 不安げにアイはいう。

「でも自分も相手も、死ぬかもしれないとわかった上でPKなんてするかな?」

「......わからない。 でももし帰りたくないなら」

(そうか、現実がいやな人もいるのかも...... ならクリアを阻止するためにPKもありうるか......)

 そう考えながら、おれは鉄の剣、アイには魔力の上がる杖、軽いローブと帽子をかった。

「見た目ほどではないけど、剣に重さを感じる」

「エンカンブランスの概念がないけど、体感で重く感じる仕様なのかも......」

(まあ、食事の味や匂いすら再現するんだから、重さを感じさせるのも可能か......)

「さあ、薬草をとろうか」

「うん、ついでにモンスターを倒してレベルもあげましょ」

 おれたちは一週間ほど、戦いかたになれるためやレベル、お金、名声をえるため、薬草とりの依頼をうけ続けた。


(やはり、運営からなんの連絡もないな......)

 一週間たっても運営から連絡もこず、ログアウトできない状況も変わらなかった。 アイはこの話題をしないから、おれも触れなかった。 不安にさせるだけだからだ。

「レベルもおれが5、アイが7まで上がったし、お金も1500ゴールドになった。 名声は45か」

「そうだね。 これでここでの最強装備は揃うよ」
 
 嬉しそうにアイはこたえる。

(笑顔だけど、不安だろうな。 やっぱり無理してるんだろうか?)

 おれたちは毎日少しずつ買い揃えて、ついに最後のアクセサリーの指輪も手にいれる。

「やはりおれは魔法は覚えられないみたいだな」

「みたいね。 どうも個人差があるみたい。 私は炎の攻撃魔法も覚えられたから」

「そうなのかも...... クリアに頼るしかないな」

「それよりレキさんからのメールみた?」

 そう不安そうな顔でアイはいった。

(ついにこの話しか......)

 おれたちはレキさんと情報のやり取りをしていた。 といってもこちらは進んでないので、特に伝えることはなかった。

「......ああ、死んだプレイヤーがリスポーンしなかったって話だね」

「そう。 ということは現実に戻ったか......」

「......本当に死んだかだね」

 少し沈黙が場を包んだ。

「でも、現実に戻れたなら、警察とかに連絡してくれるはずだよ......」

 そういうアイは不安を隠すように明るく話しているようだ。

「そうだね、それを待つか。 でもさすがにシナリオをもう進めた方がいいな」

「うん。 死んだプレイヤーはなんで死んだかわからないらしいし......」

「モンスター、トラップ、盗賊や犯罪者などのNPC《ノンプレイヤーキャラクター》、そしてPK《プレイヤーキル》か...... 早く強くならないとまずいな。 それでこれなんだけど」

 ウィンドウのシナリオをアイに見せた。

「私たちが見つけたレアシナリオ【天樹のいざない】ね」

 依頼で薬草を採取していると、ひとつだけ変わった【聖草】をみつけた。 それを渡すと依頼主の道具屋からこのシナリオを聞いた。

「【聖草】をみつけると、フラグがたって発生するシナリオだったのか」

「ええ、レキさんの話からもこの話しは聞いてないから、見つかってないシナリオだね。 いやこっちに伝えなかっただけかも......」

「......まあ、普通だったら試して見つかるのかもしれないけど、今の状況で、【聖草】が見つかるまで、この薬草とりはしないだろうしね。 だからおれたちしか見つけられなかったんじゃない。 とりあえずこれにいってみよう」

 おれたちはレアシナリオ【聖なる導き】に向かうことにした。


 指定された森奥へと向かう。

「でもこのレアシナリオ推奨がレベル10なんだよね」

「私が7、サナが5ちょっと厳しいね」

 アイが不安げだ。

「ただこのままモタモタしてると、プレイヤーだけじゃなく盗賊などのNPC《ノンプレイヤーキャラクター》に襲われる可能性もある。 レアシナリオをクリアすれば、レアアイテムや特典が手に入る。 それでかなり強くなれるはずだ」

「そうだね。 それで連絡はどうする?」

「レキさんへか......」

「うん、 もし強力なものなら正直、黙っておいた方がいいとおもうんだけど」

「どうして?」

「あの人のことよく知らないし、もし最悪、悪意のあるプレイヤーだったら困るから......」

「......そうだね。 確かに不安だ。 まあ向こうも当たり障りのない情報を送ってきてるみたいだし、手に入るもの次第にしようか」

「そうだね」

 おれたちは相談しながら森の奥へと足を踏み入れた。 とても静かで鳥のさえずりがきこえる。 そして草花の香りも現実のようだった。 しばらくあるくとそこに洞窟があり【マッシアの洞窟】と表示された。

「よし、入ろう」

 洞窟内は今までより強めのモンスターが襲ってくる。

「くっ! かなり強い」

「ええ、でもなんとか進める!」

 ポーションとMPを回復する魔法薬を買い込んでいたのと、アイの感知による索敵での奇襲などで、上のレベルのモンスターを退けていく。

「おお! 宝箱に剣がはいってた! 【ウィンドスラスター】!」

「ここらじゃ買えないものだね。 レキさんのアイテム表だと、かなり先に手に入る剣。 MPで風を放てるらしいよ」

「おれの無駄になってたMPもやっと使えるか!」

 そのまま奥へと進む。 そしていくつかの装備品とアイテムを手に入れた。

「さすがレアシナリオ、いいアイテムが手にはいった。 しかもレベルが二つずつ上がった」

「最悪、ここでレベル上げして隠れてるのもアリかも」

「そうだね。 先行してる人たちとはかなりレベル差もあるし、ただもし悪い奴らが先に強くなってしまうとな」

「......うんそうだね。 私たちに対抗策がなくなる。 やっぱり進んだ方がいいか」

 おれたちは互いにうなづき、先へと進んだ。
 
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