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第一章
呪われ薬師の本当の姿
しおりを挟む翌朝。
「本当にアレ飲むんだ…。」
「やめてくれ、思い出すだろ。」
ジュアンの言うアレというのは、もちろんプディリンの目玉である。乾燥させ、粉になって、他の薬と混ぜ合わせているが、思い出すのは精神衛生上よくない。
ともあれ解呪は始まった。アイザックが薬を飲み、膝をついてクリスの浄化の祈りに耳を傾ける。この方法で人間化の解呪が成功すれば、ただちに薬がハロとアリシアの魔法によってウィルの町まで届けられる手はずとなっていた。
浄化の祈りはどこの教会でも受けられるありふれたものだ。本当はクリス頼みでなく近場の教会で行う予定だったのだが、解呪は早ければ早いだけいい。
祈りが終わる。
アイザックの体にはじわりじわりと変化が起きていた。
耳の形が伸び、尖り、瞳は熟れたイチゴのように赤く染まる。頬には赤い戦化粧の刺青の美しい模様がうねり、そして………肌が艶めかしい黒に変わる。
勇者が口を開く。
「アイザック、君は……。」
「そう。エルフはエルフでも、」
妖艶にアイザックは微笑む。
「ダークエルフ、だよ?」
クリスは武器をかまえる。アリシアが焦り、止めに入る。
「何をするのクリス!武器を下ろして、彼は、」
「汚らわしいダークエルフが、我々を騙していたことに違いはありません。真偽を確かめなくては。」
マオがアイザックを背に立ち塞がった。その手には杖が握られている。
「人間どもの人種諍いなど知らぬ。だが、アイザックの話を聞くまで、殺させるわけにはいかんな。」
後ろでは予想外のことに驚きながらも、二丁拳銃をクリスに向けるジュアンがいた。
「僕は、誰が相手でもアイザックを守るよ。」
「待って。」「待ちなさい!」
ハロとアリシアが両者を止めにかかる。
「カルロス、クリスを押さえて。」
「押忍。」
「な、何をっ。」
カルロスの羽交い締めで、軽々とクリスの体は持ち上がる。
一方で、ハロはマオを穏やかに諭す。
「いいかい、いくらマオが強くとも相手は全盛期の勇者だ。それも一人じゃないし、アイザックを守りながらとなると、真向対決は分が悪い。」
「むぅ。だが……!」
「アイザック様ああああああ!!!」
全ての混乱を押しのけるように、絶叫にも似た黄色い歓声が上がる。ミッシェル姫だ。
「お会いしとうございました私一日たりともあなたさまの傍を離れたくなかった…また会えてミッシェル、とっても嬉しい!抱きしめてキスをしてください!」
「遠慮する。やっぱり魅了は解けてなかったか…。」
昨日までの様子とは打って変わって、呼吸も挟まずに大声で騒ぎ、ずいずいと迫るミッシェル姫。一方、冷たい瞳のアイザック。姫を相手に、見たことないくらい辟易した顔をしている。
「お目覚めになられておなかがお空きでしょう?どうぞ私を!私を食べて下さい!高魔力で誰よりもおいしいですよ!」
「いや、一番美味しそうなのは勇者。」
「俺!?」
「次いでマオの角」
「角があるんですか!?」
もうなにも隠す気がないアイザック。元に戻った解放感からか、いろいろと面倒になったのか。
「うううそれでも!腕でも足でも瞳でもすべて貴方様の一部に私はぎゃんっ!」
高速でしゃべり続けるミッシェル姫を黙らせたのはマオだった。
「睡眠魔法だ。」
「杖で殴ってなかった??」
キンキンした声が苦手だったのか、ノリが嫌だったのか、かなり強烈な一撃だった。
ジュアンが必死に姫をゆすっている。
「これ起きる!?ねえ!?」
「数日で目覚めるんじゃない?」
動かない姫はカルロスが運ぶことになった。
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