追放置き去り婚約破棄されたので拾われ溺愛狙います

つるぎ

文字の大きさ
7 / 55
第一章

7.逃げるしかない!

しおりを挟む
 断罪者曰く、メイベルはつねづね、王子の婚約者であることを笠に着て、同じ立場にある聖女候補を尊大に指図していたらしい。

 しかしそれを見咎められると、今度はメイベルを諫めたその男性神官を誑かしたらしい。
 あげくに、彼を利用して大神官に近づき聖女に選ばれようとしたと。大神官に気に入られれば、大聖女も決して届かない栄光ではないから。

 だが、男性神官は見事そのたくらみを打ち破り、メイベルは彼の慈悲によって救済の機会を与えられていた、らしい。その理由は、王子の婚約者にしてコルート家の御令嬢だから。


 ある時は、侍女フィリッパの本来の髪色を知っているメイベルは、嫉妬から彼女の髪色を隠し、聖女候補に入れさせなかったらしい。

 あまつさえ侍女がすることではない仕事を与え、痛みつけていたという。
 フィリッパにある怪我はそのせいだと。彼女が、パーティーメンバーの代役をしていた時の怪我を指して。


 なんともまあ、荒唐無稽な話である。
 影武者が侍女に与える仕事じゃないことには頷くしかないが、それ以外は言いがかりも甚だしかった。

 メイベルは自分に、メッシュがあることを気に入らないと思ったことはないし、フィリッパの見事な単色の赤毛を妬ましく思ったこともなかった。

 第一、コルート家の令嬢として礼儀を尽くされ魔女の外見だと影で囁かれていたメイベルには、メッシュがなかったとて大聖女の道のりは最初から遠いものだった。

 親から愛されない原因として悲しく思うことはあっても、それでもメイベルは己の容姿を嫌いになり切れなかったのに。

 聖女候補になっていたのだって、お家の兼ね合いがあってのことなのに。

 赤毛だけなら、夕日の美しさとともに誉めそやされただろう。
 緑の瞳だけなら、瞳の色に相応しい湖畔の宿があると誘われていただろう。

 だが、メイベルは赤毛と緑目を揃えて生まれてきた。

 いまさらなのだ。すべてが。

「そうだ。神君竜王にお会いしよう」

 メイベルは、いきおいよく顔を上げた。
 王子が去ってから、どれだけ時間が経ったかは分からないが、嵐は過ぎ去っていなかった。

 満月はすっかり暗雲に隠され、部屋はランプの明かりだけがほのかにあった。王子らの気配も雨風に紛れて拾えない。

 とはいえ、さほど時間は経っていないはずだ。無防備でいることはダンジョンだと命取りになるので。

「かつてこの地を統べ、あまたの種族を救った神君竜王なら、たとえ私が本当に魔王だろうと関係ないはず」

 メイベルの血に流れる古き一族はとっくの昔に滅んだ。
 コルート家がその生き残りなわけだが、見ての通り由緒正しき立派な侯爵家となっている。

 つまり、同じ髪、同じ目の色は世界のどこかに居ても、国家や一族のように同じ集団意識を持つ同胞はこの世に居ないのだ。

 それと比べて神君竜王なら、神代の存在ではあるが、まだ会える可能性がある。

 古代遺跡に行けばいいのだ。国外もいいが禁足地なら人の目がなく、歴史から消えたとしても不思議ではない。

 行き方は二通りあった。
 ダンジョンから入るか、直接、禁足地へ向かうか。

 地上は人の目が厄介だった。足が付きやすい。

 一方で、地下はトラップが厄介である。ダンジョンが遺跡の一つと言われる所以だ。地下モンスターは、地上と比べて逃げる手段が限られているのが問題だった。

 人の目は、メイベルが屋敷を出たところで探そうとする貴族はいないだろうに、魔王疑惑が気にかかった。
 何を根拠に言われているのかは分からないが、このまま軟禁されるのは絶対に嫌だ。

 オズワルドとは、決められた結婚であれ良好な関係を築けていると思っていたのに。

 王子には国を守る義務があるのだから彼だけはこの落胆が筋違いとは分かっていても、今ばかりは思ってしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...