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第一章
7.逃げるしかない!
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断罪者曰く、メイベルはつねづね、王子の婚約者であることを笠に着て、同じ立場にある聖女候補を尊大に指図していたらしい。
しかしそれを見咎められると、今度はメイベルを諫めたその男性神官を誑かしたらしい。
あげくに、彼を利用して大神官に近づき聖女に選ばれようとしたと。大神官に気に入られれば、大聖女も決して届かない栄光ではないから。
だが、男性神官は見事そのたくらみを打ち破り、メイベルは彼の慈悲によって救済の機会を与えられていた、らしい。その理由は、王子の婚約者にしてコルート家の御令嬢だから。
ある時は、侍女フィリッパの本来の髪色を知っているメイベルは、嫉妬から彼女の髪色を隠し、聖女候補に入れさせなかったらしい。
あまつさえ侍女がすることではない仕事を与え、痛みつけていたという。
フィリッパにある怪我はそのせいだと。彼女が、パーティーメンバーの代役をしていた時の怪我を指して。
なんともまあ、荒唐無稽な話である。
影武者が侍女に与える仕事じゃないことには頷くしかないが、それ以外は言いがかりも甚だしかった。
メイベルは自分に、メッシュがあることを気に入らないと思ったことはないし、フィリッパの見事な単色の赤毛を妬ましく思ったこともなかった。
第一、コルート家の令嬢として礼儀を尽くされ魔女の外見だと影で囁かれていたメイベルには、メッシュがなかったとて大聖女の道のりは最初から遠いものだった。
親から愛されない原因として悲しく思うことはあっても、それでもメイベルは己の容姿を嫌いになり切れなかったのに。
聖女候補になっていたのだって、お家の兼ね合いがあってのことなのに。
赤毛だけなら、夕日の美しさとともに誉めそやされただろう。
緑の瞳だけなら、瞳の色に相応しい湖畔の宿があると誘われていただろう。
だが、メイベルは赤毛と緑目を揃えて生まれてきた。
いまさらなのだ。すべてが。
「そうだ。神君竜王にお会いしよう」
メイベルは、いきおいよく顔を上げた。
王子が去ってから、どれだけ時間が経ったかは分からないが、嵐は過ぎ去っていなかった。
満月はすっかり暗雲に隠され、部屋はランプの明かりだけがほのかにあった。王子らの気配も雨風に紛れて拾えない。
とはいえ、さほど時間は経っていないはずだ。無防備でいることはダンジョンだと命取りになるので。
「かつてこの地を統べ、あまたの種族を救った神君竜王なら、たとえ私が本当に魔王だろうと関係ないはず」
メイベルの血に流れる古き一族はとっくの昔に滅んだ。
コルート家がその生き残りなわけだが、見ての通り由緒正しき立派な侯爵家となっている。
つまり、同じ髪、同じ目の色は世界のどこかに居ても、国家や一族のように同じ集団意識を持つ同胞はこの世に居ないのだ。
それと比べて神君竜王なら、神代の存在ではあるが、まだ会える可能性がある。
古代遺跡に行けばいいのだ。国外もいいが禁足地なら人の目がなく、歴史から消えたとしても不思議ではない。
行き方は二通りあった。
ダンジョンから入るか、直接、禁足地へ向かうか。
地上は人の目が厄介だった。足が付きやすい。
一方で、地下はトラップが厄介である。ダンジョンが遺跡の一つと言われる所以だ。地下モンスターは、地上と比べて逃げる手段が限られているのが問題だった。
人の目は、メイベルが屋敷を出たところで探そうとする貴族はいないだろうに、魔王疑惑が気にかかった。
何を根拠に言われているのかは分からないが、このまま軟禁されるのは絶対に嫌だ。
オズワルドとは、決められた結婚であれ良好な関係を築けていると思っていたのに。
王子には国を守る義務があるのだから彼だけはこの落胆が筋違いとは分かっていても、今ばかりは思ってしまう。
しかしそれを見咎められると、今度はメイベルを諫めたその男性神官を誑かしたらしい。
あげくに、彼を利用して大神官に近づき聖女に選ばれようとしたと。大神官に気に入られれば、大聖女も決して届かない栄光ではないから。
だが、男性神官は見事そのたくらみを打ち破り、メイベルは彼の慈悲によって救済の機会を与えられていた、らしい。その理由は、王子の婚約者にしてコルート家の御令嬢だから。
ある時は、侍女フィリッパの本来の髪色を知っているメイベルは、嫉妬から彼女の髪色を隠し、聖女候補に入れさせなかったらしい。
あまつさえ侍女がすることではない仕事を与え、痛みつけていたという。
フィリッパにある怪我はそのせいだと。彼女が、パーティーメンバーの代役をしていた時の怪我を指して。
なんともまあ、荒唐無稽な話である。
影武者が侍女に与える仕事じゃないことには頷くしかないが、それ以外は言いがかりも甚だしかった。
メイベルは自分に、メッシュがあることを気に入らないと思ったことはないし、フィリッパの見事な単色の赤毛を妬ましく思ったこともなかった。
第一、コルート家の令嬢として礼儀を尽くされ魔女の外見だと影で囁かれていたメイベルには、メッシュがなかったとて大聖女の道のりは最初から遠いものだった。
親から愛されない原因として悲しく思うことはあっても、それでもメイベルは己の容姿を嫌いになり切れなかったのに。
聖女候補になっていたのだって、お家の兼ね合いがあってのことなのに。
赤毛だけなら、夕日の美しさとともに誉めそやされただろう。
緑の瞳だけなら、瞳の色に相応しい湖畔の宿があると誘われていただろう。
だが、メイベルは赤毛と緑目を揃えて生まれてきた。
いまさらなのだ。すべてが。
「そうだ。神君竜王にお会いしよう」
メイベルは、いきおいよく顔を上げた。
王子が去ってから、どれだけ時間が経ったかは分からないが、嵐は過ぎ去っていなかった。
満月はすっかり暗雲に隠され、部屋はランプの明かりだけがほのかにあった。王子らの気配も雨風に紛れて拾えない。
とはいえ、さほど時間は経っていないはずだ。無防備でいることはダンジョンだと命取りになるので。
「かつてこの地を統べ、あまたの種族を救った神君竜王なら、たとえ私が本当に魔王だろうと関係ないはず」
メイベルの血に流れる古き一族はとっくの昔に滅んだ。
コルート家がその生き残りなわけだが、見ての通り由緒正しき立派な侯爵家となっている。
つまり、同じ髪、同じ目の色は世界のどこかに居ても、国家や一族のように同じ集団意識を持つ同胞はこの世に居ないのだ。
それと比べて神君竜王なら、神代の存在ではあるが、まだ会える可能性がある。
古代遺跡に行けばいいのだ。国外もいいが禁足地なら人の目がなく、歴史から消えたとしても不思議ではない。
行き方は二通りあった。
ダンジョンから入るか、直接、禁足地へ向かうか。
地上は人の目が厄介だった。足が付きやすい。
一方で、地下はトラップが厄介である。ダンジョンが遺跡の一つと言われる所以だ。地下モンスターは、地上と比べて逃げる手段が限られているのが問題だった。
人の目は、メイベルが屋敷を出たところで探そうとする貴族はいないだろうに、魔王疑惑が気にかかった。
何を根拠に言われているのかは分からないが、このまま軟禁されるのは絶対に嫌だ。
オズワルドとは、決められた結婚であれ良好な関係を築けていると思っていたのに。
王子には国を守る義務があるのだから彼だけはこの落胆が筋違いとは分かっていても、今ばかりは思ってしまう。
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