追放置き去り婚約破棄されたので拾われ溺愛狙います

つるぎ

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第三章

22.王都にて王子は対峙する

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「おはようございます。オズワルド様」
「おはよう」

 王都にて、見事な単色の赤毛を揺らしフィリッパが挨拶するのを、オズワルドは淡々とした表情で返した。

 フィリッパの後ろで、侍女のスーザンがしずしずと控えている。

 主を捨てたフィリッパは、赤金だった髪から本来のワインレッドに戻ったことで、主の悪行を糾弾した勇気を称えられ、また赤毛の差別を乗り越えた象徴として祭り上げられていた。

 フィリッパは本当の顔も隠されていたため、メイベルの批判は止まることを知らない。かつては侍女だった彼女は、変装を解くと驚くほどメイベルに似ていた。

 まったくそっくり、というほどではないが、姉妹と言われれば納得する顔だ。

 実際のところは、メイベルの従姉にあたる。次期当主となった、メイベルの義弟フィリップの実の姉だった。名前が一緒なのは、彼らの父親こそが名前をフィリップとするからである。

 コルート家の当主リチャードは、真実が明かされると喜んでフィリッパを養子入りさせ、侯爵家の正式な聖女候補に据えさせた。

 その結果フィリッパは、メイベルが持っていた物すべてを丸っと手に入れたのだった。

 ちなみにハーフエルフを携えてこの真実を証明し、フィリッパが侯爵家入りする最後の後押しをしたのがオズワルドである。

 挨拶を返したオズワルドは、そのまま退散するつもりだったが、フィリッパが笑みを深くして口を開いた。

「正式なお礼は後ほど致しますが、先日は、わたくしの身分を証明してくださり、誠にありがとうございます。
 これは今しがた大神官様よりお教え頂いたことなのですが、オズワルド様自ら正義がなされた功により、大神官様は正式にオズワルド様とわたくしの婚姻をお認めになられるそうです」

 しかたなく聞く姿勢を取っていたオズワルドは、寝耳に水のそれに面食らった。

「婚姻?」

「はい。婚約の契りは過去を遡り、本来がわたくしとの婚約だったと宣言がなされると同時に、とのことです。わたくし自身の話でしたので、精進の務めのあと、大神官様が、わざわざ」

 オズワルドは呆れて頭を振りたかった。あまりにも突拍子もない。裏があることは明白だった。

「時期は」

 夫になるはずの相手が、自分の望んだ雰囲気でないことに少し目を細めつつ、フィリッパは声をひそめ、そっと囁いた。

「おそらくは可能な限り、はやく」

 そうして言葉を続ける。

「今は王宮内部で分裂している場合ではありませんから。魔王の再臨を阻止するためにも、我々は団結して事に当たらないといけません。ですから殿下は、魔女めの厄を落とし禊ぎ払わなければなりません。これは大神官様の言付けにございます」

 そう言うと、それからフィリッパは瞳を潤ませる。

「かの者のことは残念ながら、コルート家の失態。一族の汚名を雪ぐためにも、どうか、わたくしにお手伝いをさせてくださいし」
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