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第三章
21.心優しくも強大な古代の神獣④
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だから復讐心の代わりに、女王陛下にはひそかに恩を感じている。
「そうは申しましても……」
そもそも思い出したくない感情とあれば。
メイベルが小さくため息をついて俯くと、魔王は話を変えた。
「そうか。なら、お前に不快な思いをさせた詫びだ。アヴァルから離れるつもりなのだろう? 餞別に受け取れ」
「そんな。もう十分に頂いています」
「早く言わなければ僕が勝手に加護するが」
魔王がそういうと、メイベルは何故かぞわっとした。
「嫌な予感がするのはなぜでしょう。分かりました有難く頂戴いたします」
しかし準備は今日、持ってきてもらった種で整っている。すぐには、良さそうなものが思いつかない。
「……そうですね。撥水の受動効果でお願いします」
メイベルはふと、この前げんなりしたことを思い出した。
この世界において受動効果は、永続的な効果が望めない。
先天的に有しているものならいざ知らず、体内で魔力を生成するのが基本の人間には魔力の分配が難しいのだ。
いかに効率よく、魔力量を節約していられるかが鍵になる。
だが、神クラスの存在から賦与されたなら話は別だ。生来的なスキルなら多くあるように、自分の魔力を使う必要がなくなる。
メイベルは良い案だと思ったのだが、魔王は真顔で言った。
「撥水はやめておけ。事故になったら水を飲めなくなるぞ」
「え゛ッ」
ぎょっと肩がはねた。
水があるのに水不足で死んでしまったら、とんでもない地獄だ。
あとよく考えたら、事故にならず水は飲めても、顔を洗うことが出来なくなるかもしれない。撥水だから。
「じゃ、じゃあ、どうしましょう……。あ、石です! 転移石をお願いします! 私が持っていた物と同じ物を!」
「いいだろう」
魔王はうなずくと、あっという間に転移石を複数個も作った。
メイベルは慌てる。
「一個だけで十分です! 一個だけで!」
「一個か。これを受け取るか、必ず僕の元に転移する石を一つか、どちらが良い」
予想していたのか、魔王はしれっと言う。
「たくさん作ってくださり、ありがとうございます」
またも嫌な予感がしたので、メイベルは数のある転移石の方を即答した。
「貴様の欠点は短絡的で目先のことしか考えられないところだが、今の判断は悪くなかった」
「うっ……。痛み入ります……」
メイベルは身を縮めた。
王都で駆使していた悪知恵も、たいていはその場の思いつきで回っていた。要はセコいことしかできないのだ。短い付き合いで魔王に諭されるくらいには。
メイベルはこれで痛い目を見たばかりのはずだが、長年の癖とあれば、なかなか抜けきらないものらしい。だが多少は学習していて、嫌な予感はおそらく痛い目から来た警戒である。
「久し振りに目を覚ました分には、貴様は興味深く飽きなかった。今後も期待している」
「ありがとう存じます。陛下が見守ってくださっているのだと、解釈させて頂きます。魔王陛下より賜った数々の御厚意を、決して無駄にはいたしません」
魔王はすっと身を寄せた。
「日取りの日までお前を眺めていたかったが、僕の気配はそう簡単に隠せるものではない。残念だが、今日で最後とする」
囮になろうというのだ。
一瞬、最敬礼と迷ったが、メイベルは深く気持ちを込めて礼を言った。少しの寂しさをおし隠して。
「どれほどの感謝をお伝えすればいいか……。魔王陛下に拾っていただいた私は、誠に幸せ者にございます」
すると竜は、最後にやさしく笑った。
「達者であれ、メイベル」
「そうは申しましても……」
そもそも思い出したくない感情とあれば。
メイベルが小さくため息をついて俯くと、魔王は話を変えた。
「そうか。なら、お前に不快な思いをさせた詫びだ。アヴァルから離れるつもりなのだろう? 餞別に受け取れ」
「そんな。もう十分に頂いています」
「早く言わなければ僕が勝手に加護するが」
魔王がそういうと、メイベルは何故かぞわっとした。
「嫌な予感がするのはなぜでしょう。分かりました有難く頂戴いたします」
しかし準備は今日、持ってきてもらった種で整っている。すぐには、良さそうなものが思いつかない。
「……そうですね。撥水の受動効果でお願いします」
メイベルはふと、この前げんなりしたことを思い出した。
この世界において受動効果は、永続的な効果が望めない。
先天的に有しているものならいざ知らず、体内で魔力を生成するのが基本の人間には魔力の分配が難しいのだ。
いかに効率よく、魔力量を節約していられるかが鍵になる。
だが、神クラスの存在から賦与されたなら話は別だ。生来的なスキルなら多くあるように、自分の魔力を使う必要がなくなる。
メイベルは良い案だと思ったのだが、魔王は真顔で言った。
「撥水はやめておけ。事故になったら水を飲めなくなるぞ」
「え゛ッ」
ぎょっと肩がはねた。
水があるのに水不足で死んでしまったら、とんでもない地獄だ。
あとよく考えたら、事故にならず水は飲めても、顔を洗うことが出来なくなるかもしれない。撥水だから。
「じゃ、じゃあ、どうしましょう……。あ、石です! 転移石をお願いします! 私が持っていた物と同じ物を!」
「いいだろう」
魔王はうなずくと、あっという間に転移石を複数個も作った。
メイベルは慌てる。
「一個だけで十分です! 一個だけで!」
「一個か。これを受け取るか、必ず僕の元に転移する石を一つか、どちらが良い」
予想していたのか、魔王はしれっと言う。
「たくさん作ってくださり、ありがとうございます」
またも嫌な予感がしたので、メイベルは数のある転移石の方を即答した。
「貴様の欠点は短絡的で目先のことしか考えられないところだが、今の判断は悪くなかった」
「うっ……。痛み入ります……」
メイベルは身を縮めた。
王都で駆使していた悪知恵も、たいていはその場の思いつきで回っていた。要はセコいことしかできないのだ。短い付き合いで魔王に諭されるくらいには。
メイベルはこれで痛い目を見たばかりのはずだが、長年の癖とあれば、なかなか抜けきらないものらしい。だが多少は学習していて、嫌な予感はおそらく痛い目から来た警戒である。
「久し振りに目を覚ました分には、貴様は興味深く飽きなかった。今後も期待している」
「ありがとう存じます。陛下が見守ってくださっているのだと、解釈させて頂きます。魔王陛下より賜った数々の御厚意を、決して無駄にはいたしません」
魔王はすっと身を寄せた。
「日取りの日までお前を眺めていたかったが、僕の気配はそう簡単に隠せるものではない。残念だが、今日で最後とする」
囮になろうというのだ。
一瞬、最敬礼と迷ったが、メイベルは深く気持ちを込めて礼を言った。少しの寂しさをおし隠して。
「どれほどの感謝をお伝えすればいいか……。魔王陛下に拾っていただいた私は、誠に幸せ者にございます」
すると竜は、最後にやさしく笑った。
「達者であれ、メイベル」
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