追放置き去り婚約破棄されたので拾われ溺愛狙います

つるぎ

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第三章

20.心優しくも強大な古代の神獣③

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「毛色だけで末裔と呼べるなら、お前の先祖は恐れられてなどいない。お前には力も備わっているから、僕は末裔だと言っている」

 奥歯に物が挟まったような言い方に聞こえた。
 メイベルは慎重に相手を見る。

「陛下は魔王に、私は末裔に違いなく、しかし私にかけられている魔王の嫌疑は、心当たりはあるけれど確証がないと、そういうことでよろしいですか?」

「その通りだ。お前には興味深いところがある。だが、お前が魔王であれ、それだけならお前の面倒を見ようとは思わない。お前は僕が放っておいても、一人で生きていけただろう」

「では、なぜ」
「僕がお前を拾ってしまったからだ」

 永い眠りから目が覚めて、その原因を興味本位で拾い上げた。聞きたいことがあったから、弱っている姿に、そうなった。

 だからこちらが世話をするのは、魔王が本物でも、メイベルが魔王の臣下である魔女だからではなかった。

「では、心当たりというのは。……教えていただけないものでしょうか」

 疑問が増えれば、とうぜん投げかけられる問い。しかし。

「今は無理だ」

 魔王は教えなかった。

「失礼をしました」

 承知してはいたが、メイベルはそっと目を伏せる。


「僕も聞きたいことがあるんだが」
「なんでしょう」

「ヨルノスレルムは、お前の家の領地と目と鼻の先だぞ。追手がかかるなら間違いなく、この地に侵入してくる。逃げているのなら避けるべきだったのではないか?」

 メイベルは少し笑った。

「少々油断をして余所見をしていたら、追いつかれてしまいましたから。なので、目的のためには最短コースで行くと決めました」

 その答えには一応の納得はしたが、魔王はそのほかに気になることがあったので口にした。

「なぜ復讐をしない」
「そう仰るところが、陛下が神君竜王でない証左と受け止めております」

 澄まして答える顔。

「それは構わない。だがお前たち・・のそれは理解不能だ。お前の母は、お前を生んだことで殺されたのだぞ。お前の父に」

 お前たち、という言葉を片隅に引っ掛けながら、メイベルは以前にも魔王に言われたことを思い出した。

 メイベルの実の母親が、メイベルの実の父親に殺されたことを。

 お前も気づいていただろう、とさらに言われていた。

 確かに、メイベルはうっすらとそのことを察していた。

 父が再婚してすぐ義母が軟禁され、そのような中で子供がなかなか生まれないせいで、父がどんどん見るも堪えない姿になっていくのを見れば否応もなく。

 そして父の弟が不摂生で病死し、父は喜んでその息子を引き取ったことで、疑念は確証に変わった。

 侯爵家のきらびやかな栄光に反して、コルートの家は陰惨だった。

 長年の軟禁で、義母の雰囲気は健康と言い難かった。

 軟禁から解放してくれたも同然の、義理の息子を猫可愛がりしている。

 そんな義母に対し、義弟となったメイベルの従弟は、困惑と心配を綯い交ぜにしつつも受け入れているようだった。
 言葉の綾だが。

 そのうち新しい弟妹が増えても、もはやメイベルには知らない話だ。

 それくらい、父の魔女への嫌悪は大きかった。

 女王陛下が自分の息子の婚約者に、まだ赤ん坊だというのにメイベルを指名してくれなければ、メイベルの命はどうなっていたことか。想像に難くない。
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