追放置き去り婚約破棄されたので拾われ溺愛狙います

つるぎ

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第四章

26.邂逅

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 ――待っていた。

 竜はひそかに、そのときを待っていた。
 少女の気配に目を覚ましてから、一日と欠かさず。

 王国の北が、どの国とも隣接しておらず空白地帯なのをいいことに、魔王討伐を名目に騎士の一団がやってくる。

 今まで伝説への畏怖と伝統だけで守られていた神聖なる土地に、王国軍はやってくる。

 竜は牙を研ぎ、そのときを待っている。




 かすかな振動に、メイベルは顔を上げた。

「地震?」

 咄嗟に転移石に触れながら辺りを警戒して、危険がないか見守る。

「――わっ」

 大きな揺れがやってきた。下から恐ろしい音を立て、迫りくる。

「えっ、転移石が使えない!?」

 メイベルは悲鳴を上げた。浮遊魔法も使えない。魔法そのものが見えざるなにかに邪魔立てされていた。

 地面が割れて落下する。

 メイベルはすぐに杖を突き立てたが、突き立てた岩ごと下へと吸い込まれた。

「うわっ、あ?」

 ぼよん、と柔らかいものがメイベルを守った。
 岩盤の崩落に巻き込まれて死んでしまうのかと思っていたメイベルは、クッションのような感触にきょとんとする。

「――大丈夫?」

 全身を包み込むようで、魂に染みこむような、幽かな声がした。

「え?」

 メイベルは顔を上げる。暗がりでも見えるようにしていた魔法は、とっくに効果が切れていて、その姿ははっきりとしなかった。

 さっきから魔法が使えない状況に、身体が思い出したようにこわばる。完全な真っ暗闇というのも拍車をかけた。

「あなたは、誰ですか? 私を助けてくださったのですか?」

「おそらくは。……ごめんね、キミからカレの気配がしたから。魔法が使えないのは、そのせい」

 声は頭上から響いているようだった。
 音を頼りに周囲を探りながら、メイベルは相手の言葉を咀嚼する。

「ここでは彼にまつわる魔法が使えないのですね」

 悲しそうな気配を漂わせて、無言の首肯が届いた。

「彼というのは」

「アルビアン」

 メイベルは、ハッと目を瞠った。否応もなく思考が一つのことに染まる。

「じゃあ、あなたは……!」

 声が震える。

「うん。そうだな。魔王とも、神君竜王とも、呼ばれていたよ」

 失われた魔法ロスト・マジック。嘘を許さない言葉だった。

 真贋を伝える魔法である。昔はこのように、名乗りを上げる際に本物であると証明するのに使われたと聞く。

 ――本当だったのだ。

「神君竜王!」

 メイベルは古代式にひれ伏した。今までかき集めた知識が、役に立つと信じて。

「お会いしとうございました。私はヌーンヒルの血族コルートの子孫、シャーロット・メイベルと申します。いにしえには、神君竜王の庇護下にあった一族にございます」

 そこまで言って、メイベルはもう一つの呼び名に顔を上げた。

「……魔王?」

 それと同時に、パズルのピースがハマる音がする。

 ここに来る前の魔王は言っていたではないか、魔王は二柱居たと。互いの民が、そう罵り合ったと。

 争いがあったことは知られていて、神君竜王と争い、あまつさえ打ち勝ってみせたのは、他ならぬ――。

「魔王は、神君竜王とアルビアン竜王……?!」
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