追放置き去り婚約破棄されたので拾われ溺愛狙います

つるぎ

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第四章

27.邂逅②

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 昔々、遥かな昔。
 アヴァルランド王国が生まれるより前。

 二柱の竜が、いた。

 一柱は、名を持たず、その慈悲深さから神君竜王と呼ばれていた。ヨルノスの地に生きる、あまねく生命を庇護していた。

 もう一柱は、アルビアンと呼ばれていた。アヴァルの民にあがめ奉られ、彼らの民族移動とともにヨルノスの地にやってきた。

 彼らは最初、争うことなく暮らしていたけれど、そのうち均衡が偏り始めて人々の戦争が始まった。

 神君竜王の権能は、生存権のみ。

 対するアルビアンの権能は、力の付与。
 アルビアン竜王をあがめていれば、人々はほんの少しだけ強くなれた。

 甘い汁を啜り飽くなき欲望を抱える人間にとって、都合がいい神は後者。

 魔王と呼ばれあった竜の神は、神君竜王が斃れヨルノスレルムが滅び、アルビアンが守護竜として名を遺すようになると、そのうち魔王の存在だけが独り歩きして、アヴァルランド王国の神話に都合よく編纂された。




「眠る前に、アルビアンにそう怒られていたのだけど、どうやら今もそのようだね」

 地上の話を聞いて、神君竜王は小さくため息を吐いた。

「守護竜陛下は復讐されることを望まれているようでした。おそらく、神君竜王陛下が想像するより、ヨルノスの地は……」

 メイベルは痛ましい事実を告げることに、一度唇を結んだ。

「……たとえば、私の、この赤色の髪と、緑の瞳は魔女の証として忌み嫌われておりました。コルート家はその血筋こそ、ヌーンヒルの地に根差したものであれど、神君竜王がお目覚めになった今、あなたの臣下となりうるのは私一人しかおりません」

「……そうなんだね」

 神君竜王は居住まいを正すように、黒い影を揺らした。

「顔をお上げ。ヨルノスの子。つらいことを言うのだけれど、キミの言う魔女の証は、私の臣下の証ではない」

「えっ?」

 言われて顔を上げたメイベルは、また振り出しに戻るのかと青褪めた。
 しかし続く神君竜王の言葉に、固唾を飲む。

「私たちはなにも、魔王と呼ばれあっていたわけではない。私たちは代理にもならない……。僭称と誹られても致し方がない。キミが現れたなら、なおさら……」

 今度こそ、メイベルが望む希望の芽か。

 だが、情報は知り過ぎてしまったら毒となる。本当のことを知ってしまったら、それが特に権力者にとって都合の悪いものだった場合、死を以って消される。

 メイベルは、自分がとっくに国賊として処理されているだろうことを理解していたから、天秤は好奇心にかたむいた。毒を食らわば皿まで、だ。

「どういうことでございましょう?」

「アルビアンが来るよりさらに先、私がヨルノスの地に降臨するより前に居たのだ。この土地の真の主が。カレはヨルノスの化身。すなわち、土地神だ。キミの祖先は正しくヨルノスの原住民であり、それ以外の人間はすべて異邦の民に過ぎない」

 メイベルは頬を紅潮させた。葬り去られた真実が暴かれたことより、遺跡好きの性質が気持ちを上回ったのだ。

 メイベルにとって、神君竜王より前の時代など、編纂されて消えてしまった歴史も同然だった。現存する遺跡も、もっとも古くて神君竜王の時代とされている。

 それが今、さらに古い時代の本当の歴史が語られている。興奮しない方がおかしい。

「魔王とは、ずっと昔に異邦の民が、自分たちを受け入れてくれない土地神を、そう呼んでいたのが始まりだった。それを後の者たちが争いに利用して、私たちを魔王と呼んだのだ」

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